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【訪日中国人】「春節」ウラ話 ~春節ニュースに見る悩み~

春節シーズンももう終盤。今年も多くの観光客が日本にやってきたようで、国内でも春節をテーマにしたイベントが行われたりと、すっかり定着した感があります。しかし、この春節という季節、中国にとっては非常に特別な日。単なる年越しという意味合いだけではなく、あるものの意味を考える季節でもあります。それは「家族」。今回は視点を少し変えて、中国春節を見てみましょう。

家族の在り方を伝えるニュース報道

家族の在り方を伝えるニュース報道

春節の2日目、鳳凰網にあるニュースがアップされました。2月17日に広西チワン族自治区の小さな町。その公園の池のほとりで1時間にわたって電話をしている老婦人の姿です。

老婦人はおそらく遠方にいる自分の子供と話している様子で、電話でなんども「いつ帰ってこれそう?」と聞いていました。しかし、相手の答えを聞いて「忙しいなら、ひと段落してからでいいよ」と語っていたそうです。

どうやら子供は仕事に追われて帰省ができないようです。記事では「電話をしまった老婦人の背中はやはりさみしげだった」と締めくくっていました。

中国では近年、このような子供が遠方で住まうために1人で暮らす高齢者、「空巣老人(独居老人)」が急増、春節も1人で過ごす人も非常に増えているのです。

こうした独居老人の子供たちの多くは「一人っ子第一世代」。より大きなチャンスを求めて生まれ故郷である地方都市を離れ、北京や上海といった大都市に進学、就職。家庭を築いて定着した人たち。

彼らは大都市の激しい競争や猛スピードの生活サイクルの中で仕事に、子育てに時間を取られ、実家を顧みる余裕がない消費者。ようやく取れた大型連休である春節には、「少しゆっくりしたい」と大混雑を嫌がって帰省しなかったり、春節すら仕事に追われて帰省できなかったりと、以前のような「実家で家族そろって過ごす」スタイルが崩れつつあるのです。

こうしたニュースは今年に限ったことではありません。春節シーズンになると、毎年のように、こうした地方の老人生活の模様などが報道され、「家族」の在り方について問いかけを行っています。

2013年の統計によると、中国都市における独居老人は1億人を突破。2000年から2010年までの10年間で独居老人比率は42%から54%まで上昇。農村でも37.9%から45.6%に上昇しており、2030年には2億人、90%が独居老人となると予想されています。

これはすなわち、中国高齢化、まさにすでに問題になりつつある老人介護に対する警鐘と取ることもできます。

「せめて春節シーズンに家族、特に遠方で1人で暮らす高齢者を紹介することで、介護への意識を高めたい」という狙いもあるのかもしれません。

大都市で働く子供たちの悩み

ただ、現在社会の主力になっている70年代生まれには別の悩みもあります。一人っ子世代ということもあり、夫婦2人で4人の老人を養うという大きな負担が課せられているのです。

同時に相変わらずの学歴社会。自分たちの子供をそのなかで勝たせるためには、教育への投資も欠かせません。2017年の調査では、小中学生の子供を持つ家庭の教育支出は年平均で9,000元以上。北京や成都、南京では10,000元を超えています(北京では13,747.5元)。家庭支出に占める割合も約35%、収入の30%が子供の教育費に消えているとのこと。

「こうした中で、さらに自身の父母4人を養うなんて…」というのが本音。親や子供を養っていくためにも、春節返上で仕事をしないといけないといったつぶやきも、SNS上に散見されます。

春節報道から見えてくる中国社会の深い悩み。華やかさの裏側には、一人過ごす老人たちと、その子供たちのため息が隠れているように思えます。

参考:
白发老人初一独自在湖边打1小时电话:何时回(出典:鳳凰網) 中国語
孩子教育,您算过要花多少钱么(出典:捜狐網) 中国語