中国女性のホンネ Vol.1 ~ベンチャー企業勤務・陳さんの場合・前編~
中国で注目が高まる「女性消費」。かつては「天下の半分を支える」と言われた中国の女性ですが、今や世の中の半分以上を支えているとさえ思えるほど、社会で、そして家庭で活躍しています。
中国トレンドExpressではそんな中国の女性にクローズアップ。中国国内の「普通の」中国の女性たちに、その消費動向をインタビューしていきます。
第1回目は、ベンチャー企業に勤める陳奕君さんの前編。お仕事やその考え方を中心にお話しを聞きました。
Text・photo:配島亜希子
Space:Evolution Park(上海市)
今回のお客様
氏名: 陳奕君
年齢: 36歳
婚姻状況: 未婚(離婚歴1回)、子供なし
月収: 月収2.7万元(約45万円)
勤務先: インターネット企業(民間・中小企業)
部署/職位/勤務年数: マーケティング部、主管、半年
学歴: 復旦大学(学士)
家族構成: 父、母、本人
生活状況: 両親の持ち家(静安区)に同居、自身で車(AUDI アウディ)を所有
趣味: ドラマ・映画鑑賞、ドライブ
上海在住の陳さん(36歳)は、生まれも育ちも上海の一人っ子。インターネット系ベンチャー企業に勤めているごく一般的な上海独身女性です。
月収は2.7万元(約45万円)と上海の平均水準よりやや高めで実家暮らし。それなりの収入と自由な時間を持つ彼女は、まさに「女性経済」(女性向けの消費財・サービス消費)を担う中心的存在でしょう。
中国では「転職=キャリアアップ」。企業の人材争奪戦の中で
中国トップ3に入る名門、復旦大学を卒業後、すぐに就職した陳さん。しかし、会社の体質、倒産、キャリアアップなどの理由で、この12年間で10回以上転職しました。
長く勤めた会社で3~4年、最短だと3か月足らずで辞めたことも。
陳さん曰く、「中国では大手企業で働いていても昇進の機会に恵まれません。ステップアップする社内体制が整っていないのです。転職でキャリアアップ、収入アップするほうが近道だと思います」とのこと。
中国企業にとって、「転職」は決して悪いイメージではありません。
むしろ、同業界・同業種でいくつかの会社を渡り歩いて来た中途採用人材は即戦力とされ、人脈やリソース、経験値、多角的な視点などを持つ人材を企業は歓迎します。
彼女はずっとインターネットや広告業界に従事し、前職は大手韓国電気機器企業傘下の広告会社でした。しかし、韓国の親会社から仕事があまり下りて来ず、「このままではキャリアを積めない!」と、現職のネットベンチャーへ転職しました。
入社して半年ちょっとですが、マーケティング部部長の役職に就き、やりがいがあるそうです。
常に上を見て、オンライン受講で「知識」や「スキル」を
スキルアップのための勉強も欠かさない陳さん。
本人は「ものぐさだから、決まった曜日にビジネススクールへ通ったり、テキストで自習したりする勉強法はとてもじゃないけど続かない」と言います。
そんな彼女は現在、オンライン学習アプリ「騰訊課堂(Tencent Classroom)」を利用し、マーケティングの勉強をしています。
時間に融通が利き、かつ低コストなので、就業後や週末の空き時間を使って、スマホで授業を受けているのです。
テンセント社の教育プラットフォーム「騰訊課堂(Tencent Classroom)」は、IT、デザイン、語学、ECマーケティング、資格認定試験対策など、有料から無料まで様々なカリキュラムがあります。
動画やテキストで受講するだけはありません。コミュニティ(陳さんの参加しているコミュニティは30~100名程度)に参加すれば、ライブ配信での受講、講師と受講生達のオンライングループディスカッション、講師とのマンツーマンオンライン受講も可能です。
「中国は社内OJTが充実していない会社がほとんどで、自分で勉強しないとスキルを磨くことができません」と言う彼女は、以前に勤めていた会社で、ある新入社員が業界知識を全く持ち得てなかったので、「騰訊課堂(Tencent Classroom)」を勧めたそうです。
現代中国人のライフスタイルは“店舗で見て、ネットで買う”
「プライベートな時間はどのように過ごしていますか?」と質問したところ、「仕事で疲れて帰宅した日は、動画サイトでドラマや映画を観ることが多いです」とのこと。
「人人視頻」などの動画サイトで日本や欧米のドラマを見るのが楽しみだそう。残業がなくて元気が残っていれば、仕事帰りに友人と外食し、ウィンドーショッピングを楽しむすることも。
週末は、車で友人と杭州あたりへ遠出をするか、同居している両親と食品や日用品の買い出しに行ったりして過ごしています。
ショッピングモールをぶらぶらするけど、衝動的に何かを買うことはないそうです。店内で服や靴を試着したり、電子機器や化粧品を試したり、それでもし気に入ったら、あとからネットで買うのです。
彼女がよく利用のは「天猫(Tモール)」。ネットの方がいくらか安かったり、キャンペーンや特典があったり、ポイントが貯まったり、そして配送をしてくれるからです。
彼女のように、実店舗で商品を確認してECサイトで購入する、つまり “オフラインで見て、オンラインで買う”という購買行動は、若い世代を中心とした現在の中国人のライフスタイルのひとつです。
そんな消費者の新しい行動パターンに合わせ、その消費を取り込むべく、若者に人気のスマホブランド「小米(シャオミ)」、アリババの越境ECサイト「天猫国際(T-mall Global)」、インスタ型ECアプリ「小紅書(RED)」などの大手ブランドは、ネット上のビジネスだけでなく商品を体験できるリアル店舗を次々とオープンさせているのです。
次回、後編では気になる陳さんのお買い物の事情。お化粧品やその情報源、さらには普段持ち歩くカバンの中までもチェックさせてもらいました。