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【中国人気商品】日本産ワインに高まる注目。中国市場で根付かせるには?-ECサイト人気日本商品ランキングから

Text/松本果歩

トレンドExpressが毎週行っている中国ソーシャルメディアにおける日本関連書き込み総件数ランキング。そのランキングから、注目の商品、注目のサービスをピックアップ。中国消費者がハマる背景を探ります。

今回は2019年6月12日~6月18日の「ECサイト人気日本商品」ランキングから、日本産ワインの人気の理由について分析してみたいと思います。

今週の中国人気商品:「日本産ワイン」

今回は「ECサイト人気日本商品」ランキングで25位にランクインしている「日本産ワイン」に注目したいと思います。2017年終わりごろから2018年はじめにかけて、口コミ件数が急上昇しています。以降は50位から20位以内に常にランクインする人気です。

中国はワイン消費大国!?

日本ワインの人気上昇を見る前に、少し中国のワイン市場についておさらいしてみましょう。

 

中国でワインブームが巻き起こったのは、2000年代に入ってから。

昔はこの2種類のお酒が中国のアルコール市場のTOP2だったのですが、2009年に至ってワインの消費量が白酒を越えるほどの成長を見せました。

 

中国国内でもワインの製造が増え、特にブドウの産地として知られる山東省でも「張裕」や「長城」などのブランドが注目され、ワインの醸造・販売を拡大させていきました。

 

それにブレーキがかかったのが、中国政府からの「役人の贅沢禁止」令。

汚職を防ぐ目的で出されたこの法律ですが、高級ワインの消費の多くを「公的機関の消費」に頼っていたワイン市場はいったん沈静化していきます。

生産量もそれに沿って減少、2012年の半分程度まで落ちこんでいます。

【グラフ】中国国内のワイン生産量の推移

しかし輸入量を見ると増加が続いており、市場のニーズは依然として存在していることが見て取れます。

【グラフ】中国のワイン輸入量の推移

中国でお酒と言えば、日本人がすぐイメージするのは「紹興酒」。

しかし、紹興酒は上海や浙江省、江蘇省などのいわゆる江南地域のみで飲まれる地域限定のお酒。

一般的な中国消費者が飲んでいるのはビール、そして「白酒(baijiu)」というスピリッツ。後者はお米やコーリャンなどから作られるアルコール度数50%以上の蒸留酒です。

 

昔はこの2種類のお酒が中国のアルコール市場のTOP2だったのですが、2009年に至ってワインの消費量が白酒を越えるほどの成長を見せました。

 

こうしたワイン人気の背景には「健康志向」や「欧米志向」などによるステイタス化が考えられます。つまりワインの良さを分かってというよりは、ワインを飲めば「おしゃれだから」「身体にいいから」という程度ではあります。

 

それでも中国のワイン出荷箱数の消費量は2014年から2018年にかけての4年間で24.8%も伸びています。ワイン消費量は諸外国の中でも常にトップ5で、しかも伸び率はどんどん増えています。

 

基本的に中国の人にとってワインといえば、「赤ワイン」を指します。中国語で「葡萄酒」という言葉はあるのですが、赤いお酒という意味の「紅酒(Hongjiu)」という表現をよく使います。

では白ワインは「白酒?」と思われるかもしれませんが、上記の蒸留酒の「白酒」と区別するために「白葡萄酒」という言い方をします。

 

白より赤が人気の理由は、ずばり「縁起がいいから」。

中国では赤は祝い事の際に使う大事な色。伝統的な結婚式でも新婦が真っ赤な衣裳に身を包む姿が見られます。

そのため赤ワインは結婚式場などで提供されることも多く、それにより一般消費者の口に入る機会が増えていったのです。

インバウンドの「体験」から日本ワインへ

さて、こうした中国のワイン市場の中で、一部の消費者から日本のワインが注目されるのには、インバウンドで「日本のぶどう」を体験していることも背景にあるようです。

 

日本の山梨県などのブドウの産地を訪れる多くの中国人は「日本のぶどうがこれだけ美味しいということは、きっとワインもおいしいに違いない!」と予想、「飲んでみたい」と考える人が増えてきているようです。

 

とはいえ、わざわざワインのためにワイナリーを訪れるというほどではなく、あくまで山梨や長野、北海道などに別の目的で訪れた際に「ついで」でワインを飲むことが多いようです。

奇しくも中国人の中ではスキーブームが巻き起こっており、スキーをしに長野や北海道を訪れる人が増えており、スキーのついでにワインを飲むことができるということで、セットで楽しみにしている中国人観光客が増えてきています。

 

さらに、中国人はフルーツも大好き。

しかし、日本の果物は中国の3~4倍もの値段です。そこで、楽しみながら値段を気にせずフルーツが食べられる!と人気なのがいちご狩りやぶどう狩りなどのエンターテインメント。

 

たとえば山梨県への旅であれば、いちご狩り+SATOYAワイナリー見学が人気のコースです。こういったフルーツ狩りや工場見学は、「好きなだけフルーツやワインを食べたり飲んだりできる!」こと、そしてワインブームによって人気が高まっているのですね。

日本酒の進出から見る今後~「日本ワイン」として根付くか、それとも銘柄まで落とし込めるか

日本のお酒が中国へ進出する際に避けられない問題があります。

それは「銘柄」の知名度を広められるか、という点。その一例を日本のお酒の代表である「日本酒」から見ていきましょう。

トレンドViewerを見ると、「日本酒」というキーワードは「食べた」や「買いたい」に登場しています。しかし、例えば「獺祭」、「十四代」、「而今」といった日本でも知られた日本酒の銘柄は全くと言っていいほど目にしません。

これは中国の消費者が「日本に行ったら日本酒」というイメージはあるものの、その具体的な銘柄や味の違いなどは認識していないため。

それは日本酒を体験するのがあくまでも「日本に行く」や「中国でも日本料理店に行く」時のひとつの必須行動や、ステイタスとしてであって、銘柄ごとの味の違いなどにこだわりを持つまでにはなっていないからです。

 

確かに日本の自治体や国は中国向けに日本酒のPR活動を行っていますが、行政という関係上、特定の銘柄を重点的にPRすることは難しく、あくまで「日本酒PR」となってしまっていること。

また日本の蔵元でも中国に向けて自社の銘柄を定着させようというブランディングを広げるケースが極めて少ないということが上げられます。

 

現在の状況を見る限り、今後日本産のワインも同様の状況が予想されます。

 

日本のお酒でほぼ唯一、銘柄が落とし込まれたものでは「サントリーシングルモルトウイスキー山崎」があります。

同商品も、味というよりは日本国内で品薄になったことで、中国消費者の投資目的の購入が増加し、それによって注目を集めたという背景があります。

ワインもウイスキー同様ビンテージなどの付加価値をつけることができる商品、こうした事例も参考になるかもしれません。

 

とはいうものの、今後、中国市場で日本のワインが根付くためには、やはり各銘柄の努力が必要不可欠となるでしょう。中国で拡大中のワイン市場で、今まさに注目され始めているからこそ、そのチャンスを逃がさないためにも、積極的な情報発信を期待したいと思います。