越境ECシリーズ(1) 膨張する中国越境EC市場、「消費昇級」がこれからの消費トレンドのキーワード
日本から中国への越境EC市場規模 ~2014年の6,000億円から2016年には1兆円まで拡大!
中国での消費スタイルの一つとしてもはや完全に定着したと言えるEC(電子商取引、ネット通販)ですが、その中でも特に海外の製品を購入できる「越境EC」での購買額の伸び率は、ここ数年すさまじい勢いとなっています。
まず、中国の越境EC市場に関する基本的なデータを確認してみたいと思います。以下は経済産業省が推計した中国による越境EC購入額および伸び率(前年比)の推移です。
2014年の中国からの越境ECによる日本商品の購入額は、前年比55.4%増加(!)という驚異的な伸びとなっていました。増加率は、翌年の2015年には30%台、2016年も同じく30%台となっています。
55.4%から30%に低下したと言っても、30%という数値自体がまだまだ驚異的な伸び率です。越境EC市場自体がまだ成長過程にあることをうかがわせます。こうして2014年には6,000億円程度であった対中越境EC市場規模は2016年に1兆円の大台に乗りました。
2020年にはこの額が2兆近くに到達するという見方をする調査機関もありますが、中国はかつての高度成長期から、近年は「新常態」と言われる中高度成長にソフトランディングしつつあります。これに加えて2017年に入ってからは1〜2月の中国国内市場が11年ぶりに1ケタ成長まで落ち込むなどの先行き懸念が見られるのも事実です。
こうした中、中国EC市場には少し変化がみられるようになりました。以下でその変化のある側面について確認していきましょう。
成長中のEC市場、外せないのは「消費昇級」
ジェトロ海外調査部中国北アジア課の黄海嘉氏は、近年の中国の消費の趨勢を表す「消費昇級」というキーワードに着目しています。「昇級」とは「レベルアップ」、つまりこのキーワードは「消費のレベルアップ」を意味します。
EC市場でも「消費のレベルアップ」が起きています。これにより、中国人消費者の商品の選択には「個性化」「多様化」「高品質」といった新たな傾向が見られてきているといいます。
2015年、インターネット小売市場においてはCtoC(個人間取引)が、後発のBtoC(企業と個人間の取引)にシェアで逆転されました。これも品質保証等において、消費の信頼感、安心感を追求する「消費昇級」が影響した結果のようです。
日本のメディア「ネットショップ担当者フォーラム」の記事においても中国のEC市場においては「品質の高い商品が売れる状況」が報告されています。
消費のレベルアップがもたらす、新たな消費者目線を見逃すな!
「消費昇級」が中国人消費者の消費トレンドに変化をもたらしている中、日本の商品はどう売り出していくべきなのでしょうか?
JETROの黄氏のレポートによれば、日本の製品に関する注目ワードとして挙げられているのが「匠の精神」です。「匠の精神」というコンセプトは、日本で生活しているのならばショッピングをする際には重要な判断軸にならないかもしれません。ですがまさに「今」、消費昇級の真っただ中にいる「中国人消費者」にとっては魅力となる要素なのです。
今後の中国EC市場においては、
- 旧来より日本製品に求められてきた品質と信頼性を保つこと
- 中国人が日本製品に求めるハイエンド感がどこに存在するのかを見極め、かつブランディングしていくこと
この二点が重要だと言えそうです。
参考:
経済産業省 電子商取引実態調査
ジェトロ エリアレポート「消費昇級 EC消費のエンジンに」
中間層の増加で中国EC市場では品質の高い商品が売れる状況に変化(出典:ネットショップ担当者フォーラム)