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ウェブコミック・アニメが生み出す新たな世界 ~拡大する中国「動漫」市場をのぞいてみました~

2016年、中国では日本のアニメ映画「君の名は。」が大ヒットし、中国における日本映画の興行収入の最高記録を塗り替えるなど、アニメ・マンガ市場は元気なニュースが見られました。また、近年中国の若者たちが有名な日本のアニメキャラクターに扮したコスプレを楽しむ姿は、数多くのメディアが報じてきている通りです。

少し話はずれますが、休日、都内の公園でバスケットボールをしていると、そこでは多くの中国人と出会います。そして、出会った中国人達のうち30代以上の人々は井上雄彦の人気コミック「灌篮高手(グアンランガオショウ)」の中国における圧倒的影響力を口々に語ります。どの作品だかわかりますか?「スラムダンク」です。「スラムダンクを見てバスケを始めたんだ」と話してくれます。

より若い10〜20代の若者は、藤巻忠俊の「黑子的籃球(ヘイズダランチウ)」の動きの真似をしてみせてくれます。こちらは「黒子のバスケ」です。

このように日本の「動漫」(アニメとマンガ)の中国における影響力は、単なる消費コンテンツの域を超え、彼らのライフスタイルに影響を及ぼすほど、文化的な熱狂を生み出しているのです。

ウェブコミック・アニメ市場の変化と半端ではない成長スピード

こうした中、実際のところ中国におけるアニメ・マンガ市場のデータ推移はどうなっているのでしょうか。見てみましょう。

中国が海賊版天国であることはよく知られていますが、近年は当局の取り締まり強化を背景に、その状況も変わりつつあります。合わせて、スマホの普及に支えられる形でウェブコミック・アニメ市場は急成長しています。こうした市場の健全化とITによる普及スピードそしてユーザーの可視化が、現代の「動漫」市場における一番ホットな現象であると言えるのではないでしょうか。

下の図は2016年の中国のウェブコミック・アニメのアクティブユーザー数の推移です。これによれば、1月の時点で2,000万弱だったアクティブユーザー数が、年末の12月には4,000万人弱にまで増加しています。つまり、市場規模は1年間で約2倍となっているわけです。

グラフ:中国ウェブコミック・アニメアクティブユーザーの推移:2016年:1月1977.3、2月2045、3月2401.5、4月2278.4、5月2584.2、6月3128.6、7月3219.4、8月4019.5、9月3918.9、10月3471.6、11月3513.9、12月3817:単位人数(万人)

参考:中国互联网动漫市场年度综合分析2017(出典:易観) 中国語

ジャンルにも日本の影響! ウェブコミックは「耽美」がTOP3にランクイン。

では中国ウェブコミックを見ているユーザーの間では、どんな作品が流行っているのでしょうか? 以下の表は、中国ウェブコミック・サイトの代表的な存在である「有妖气」の、新規購入作品のランキングです。(2017年6月30日時点)

順位 タイトル ジャンル 概要
1位 复仇游戏
(リベンジ・ゲーム)
少女 振られた女の子による、インターネットでの復讐劇
2位 皇上,我不是女主!
(皇帝陛下、私は女主人じゃないのよ!)
少女 コメディタッチの歴史少女漫画。
3位 心之茧耽美
(心の繭の耽美)
耽美 BLもの
4位 末世之路
(終末の道)
少年 崩壊後の世界のサバイバルもの
5位 百足宠物诊所
(百足動物病院)
少女 動物病院もの

作品の扱うテーマに着目してみると、1位のインターネットを通じた復讐もの、2位のコメディタッチの歴史もの、4位の殺伐としたサバイバルもの、5位の動物病院ものなど、日本の漫画にもありそうなテーマという印象が残ります。

続いてジャンルを見てみます。「少年」、「少女」の間にランクインしている3位の「耽美」に目を引かれるのではないでしょうか。これは日本で言われるところの「BL(ボーイズラブ)」作品、すなわち男性同士の恋愛を耽美的に描いた作品カテゴリを意味します。

日本においては、BLは主に女性を読者対象とし、マニアックと認識されている面もありますが、そのファン層は消費者として軽視できない存在となっています。このように、中国のウェブコミック市場においては、作品のテーマ設定だけでなく、ジャンルの細部に至るまで日本の文化を余すところなく享受していることがうかがえます。

まとめ ~中国独自の進化も。今後の展望は?

「有妖气」で閲覧できる作品は、漫画のコマ内に読者の書き込みができ、これによって読者のダイレクトな反応が見ることができるという、大変興味深い仕様になっています。「ニコニコ動画」の漫画版といったところでしょう。日本の影響を受けて発展してきた中国「動漫」界ですが、このスピードで成長を続けていけば、将来中国製の漫画が日本へ輸入される日が訪れる…ということもあるかもしれません。

コミック・アニメファンがキャラクターや作品へ示す関心の高さや、それらに関連した行動への動機づけの強さは、日本でも多くの方が首肯するところではないでしょうか。今後の中国のウェブコミック・アニメ市場の動向は、インバウンド、アウトバウンドの中国人消費者の需要取り込みを考える際に、無視できない存在となっていくのかもしれません。