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【特集】国慶節まであと1か月!(3) ~躍進の美容体験と「新中産層」の訪日を思わせる「走りたい」~

国慶節特集(3)では、「コト」にスポットを当ててひも解いていきましょう。

所得の増加に伴い時代は健康志向、「コト」に新しい風が吹き込む

インバウンド消費の牽引に期待のかかる「コト消費」、まずは昨年のアンケートのTOP10をおさらいしておきたいと思います。

2016年国慶節期間に日本で「〇〇したい」ランキング(複数回答可)

順位 ○○したい
1 買い物したい
2 日本料理を食べたい
3 着物を着たい
4 お寺に行きたい
5 温泉に入りたい
6 山登りをしたい
7 和菓子作りをしたい
8 日本の伝統家屋に泊まりたい
9 屋形船に乗りたい
10 ろくろを回して壺を作りたい

昨年の特徴としては、TOP10のほとんどを日本の伝統文化体験が占めていることが挙げられます。伝統文化への関心の高さがうかがえました。では今年はどのような結果になっているでしょうか?

2017年国慶節期間に「日本で一番したいこと」ランキング(単一回答)

 順位 ○○したい 件数
1 買い物 96
2 着物を着る 24
3 民宿に泊まる 23
4 写真撮影 22
5 夜景をみる 14
5 エステに行く 14
5 日本の田舎に行く 14
8 日本料理を食べる 10
9 美容院に行く 8
10 ネイルサロンに行く 7
11 スイーツを食べる 6
12 日本で走る 5
13 コミケ 4
13 屋形船に乗る 4
15 紅葉をみる 3
15 ライブに行く 3
15 山登り 3
15 懐石料理を食べる 3
15 酒蔵に行きたい 3
19 結婚写真を撮る 2
20 工場見学 2
20 美術館に行く 2
20 釣りをしたい 2
20 富士山に登る 2
20 観光 2

1位は「買い物」で変わらずですが、昨年と大きく違う点の1つは、「エステ」「美容院」「ネイルサロン」など美容関連の「コト」がTOP10に3つランクインしている点ではないでしょうか。

また昨年も今年も、日本文化に関連した「コト」は複数ランクインしていますが、比較してみると、昨年のランクイン内容とはあまり重複していないのがわかります。

一方で今年もランクインした体験の一つに、「日本料理を食べる」があります。引き続き8位にランクインしており、初来日の旅行者の存在がうかがえます。(1)でお伝えしたとおり、国慶節に訪日予定と投稿している新浪微博ユーザーの居住地は分散化の傾向にあります。初めて日本を訪れる中国人が増加しつつあることが日本でしたい「コト」のラインナップからもうかがえるようです。

一方で美容関連や「日本で走る」など、リピーターや富裕層の増加を思わせるコトもランクインしています。コトのニーズにも二極化が感じられる結果となりました。中国では日本同様、今ランニング人口が増え、マラソン大会も開催されています。日本でランニングできるコースや景色の良さなど、ランニング需要を念頭に置いた旅行プランも面白いかもしれませんね。

消費の担い手「新中産層」が来日? 喫緊の課題が浮かび上がる

特集(2)の「日本で一番買いたいもの」で、19-24歳は化粧品、日本の服のTOP2に集中が見られるとお伝えしていますが、では美容関連の「コト」も若い層が多いのでしょうか?年齢別に見てみましょう。

「エステ」「美容院」「ネイルサロン」ですが、いずれも一番多かったのが25-34歳となりました。予算に余裕がある年齢層の関心が高いということでしょう。

年齢別のランキングを見てみると、25-34歳の層が全体ランキングと類似、その前後の年代は1位の買い物に半数程度が集中、残りは全体ランキングTOP10あたりに分散しており、その傾向は「日本で一番買いたいものランキング」の年齢別のそれと類似しています。

やはり25-34歳の層の消費意欲が旺盛であるということのようです。また、最近中国で話題となっている「新中産層」が訪日旅行を検討、消費しているという可能性もあります。

新中産層は先日ニューズウィークのインタビューに答えたアリババ越境EC部門の総経理によれば30~39歳と説明されていますが、中国のサイトでは80後、90後を主とした若年層と定義しているところもあり年代については統一の指標はないようです。では、「新中産層」はそのほかどんな条件を備えた人物を指すのか、中国のネットから探ってみました。

「新中産層」は若年層で、一線都市または二線都市に住み四大卒以上年収が10万~15万人民元を超える層を指しており、良質な教育を受け、生活の質が高く、旅行を愛し、健康保持に関心の高い人々とされているようです。

また物理的には、都市に不動産(住居)を所有、自家用車を所持しています。親の財産ではなく、自分の知識と労働によって金銭を稼いでいることも特徴として挙げられています。スポーツを好みますが、ゴルフではなくランニングや水泳を好むような人々としてイメージされているそうです。

今回の調査では「ランニング」が上位に入っていました。国慶節にこの層が訪日旅行に来る可能性は非常に高いと言えそうです。

一方で、やりたいことを予算別・滞在日数別で見ても特に大きな特徴はなく、予算が一番多い層でも、1位が買い物、2位が写真撮影、そのあとネイルサロンや美容院、エステサロンと続いています。訪日時の体験において多様な選択肢が用意されているようにも見えますが、この結果からは集客プロモーションにおいてターゲティングがあまり機能していないこともうかがえます。

「民宿」ならカップルで仲良く過ごせる! 男女別TOP5

では最後に、男女別のTOP5を見てみましょう。

  女性 男性
1 買い物 写真撮影
2 着物を着る 民宿に泊まる
3 エステに行く 買い物
4 夜景を見る 日本の田舎に行く
5 民宿に泊まる 日本で走る

 

女性の上位TOP3は、予想を裏切らない結果となりました。

対して、男性でも訪日旅行といったハレの日には「撮影をしたい」という気持ちがあるようで、男性の1位は写真撮影となっています。訪日中国人の集客には、フォトジェニックであることが重要というのが改めてわかります。

男女のTOP5に共通しているのが「民宿に泊まる」でした。男女とも関心が高いことが見て取れるこの結果からは、カップル双方の訪日ニーズを満たす選択肢の1つとして、集客に活用することができそうです。たとえば女性で特に関心の高い「夜景」は民宿があるような地方ではことさらにフォトジェニックであることも期待できます。民宿に泊まり、美しい星空などを見るツアーをカップル向けに売り出せば、集客できるだけでなく体験後の満足度も高いのではないでしょうか。

まとめ

以上、本編では「コト」を見てきました。訪日客の需要にバリエーションが生まれていること、「新中間層」の来日が見て取れる結果となりましたが、同時に旅行客予算による訪日中の「体験」需要に大きな違いが見られないという、ターゲティングがうまくいっていない事実が浮かび上がってきました。今後のインバウンド「コト消費」の市場で解決が必要な課題でしょう。

特集の(4)では、「今年の国慶節で売れそうな商品」を、トレンドViewerの上昇率ランキングから見ていきたいと思います。

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【特集】国慶節まであと1か月!(4) ~クチコミランキングの変動が予言する、この10月に売れる商品~