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【中国人気】「時は金なり」を支えるフードデリバリー、中国では職場のランチに大活躍

昨年東京でサービスを開始した「UberEats」(ウーバーイーツ)、レストランの食事を自宅まで運んできてもらうサービスです。便利さ、配達員の実際などネットでは情報が上がってきていますが、今月から横浜でのサービス提供を開始するようですが、それまでは東京にとどまっていたとあり、日本全体でのサービスの普及は今のところ限定的と言えそうです。

一方で、10年も前から多種多様なメニューで「食事の宅配」が一般的だった中国ですが、今年の夏には大きな合併がありフードデリバリー業界の存在感は増しています。

今日は「利用者」「配達員」双方の観点から今の中国フードデリバリー事情を紹介します。

参考:UberEATS、横浜でサービス開始!! 〜 HELLO YOKOHAMA! キャンペーン実施〜(UBERニュースルーム)

豊富なラインナップ! フードデリバリー業界の合従連衡

中国の「フードデリバリーサービス」では、昔から弁当の宅配などが日常の光景でした。

中国版のウーバーイーツである「フードデリバリーサービス」のプラットフォームが出現した今でも、豆乳・油条(ヨウティアオ)・ハンバーガーなどの朝ごはんメニューから、オフィスでのランチ、切り分けた果物、お菓子やケーキ、コーヒーやミルクティー、大勢で食べるおでん鍋、夜食で食べるピザやフライドチキンなど何でも届けてもらえます。

ケンタッキーやピザハットなどの大手飲食チェーンはもちろん、個人経営の飲食店もフードデリバリーサービスのプラットフォームを通して商品を配達しています。

業界2位の「美団外買」サプライヤー申し込みページより

▲業界2位の「美団外買」サプライヤー申し込みページより

こういった「フードデリバリー」はここ2年ほどで急成長を遂げ、今非常に注目を集めています。

2017年11月7日の中国新聞網によると、2017年の第三季(7~9月)のインターネットを利用したフードデリバリー業界全体の売上高582.7億円に達しています。

この売り上げを可能にしているのがフードデリバリーサービスのプラットフォームを提供する各社です。飲食店が個別に配達のサービスを行うのではなく、購入者と飲食店、配送員をつなぐシステムを提供しています。

例えば現在業界2番手となっている「美団外買」では、住所を入力するとデリバリー可能な店舗が表示されます。かなりの数の店舗が登録していることがわかります。

北京郊外の地下鉄駅付近でデリバリーサービスを利用可能な店舗(一部)

▲北京郊外のある地下鉄駅付近でデリバリーサービスを利用可能な店舗(一部)

こういったプラットフォームサービスを提供する会社では他の業界と比べて比較的長い期間、大手が統合していませんでした。

2016年4月には餓了麽(ウーラマ)・百度外賣・美団外買の3巨頭がしのぎを削る局面が訪れ、2017年8月ついに餓了麽と百度外賣が合併し、二大巨頭の体制に突入しました。

2017年の第三季が終わった時点で餓了麽48.8%シェアになり、美団外買の43.1%を抑えてトップに躍り出ています。

多忙なサラリーマンの時間節約術

さてこういったフードデリバリーの人気を支える利用者はどこにいるのでしょうか?

正解はオフィスで働くサラリーマンで、以下の調査結果のように利用者全体の約8割を占めています。

自分が出向いて食事をするよりも、仕事場に持ってきてもらえたほうが時間の節約になるので、支持を集めていると考えられます。また、自分で店を開いている人や外仕事で忙しい人でも利用機会は多いそうです。

出典:参考※2

ご紹介した分析では「家庭利用」9.8%、「学生」8.5%となっています。家庭では、年配者はどちらかというと食事は自分で作る傾向にあるので、利用者は若い人のほうが多いと考えられます。

サラリーマンたちのランチのラッシュに備え、午前11時過ぎにもなると飲食店街の回りで美団や餓了麽の制服を着た配送員が大量に待機しています。

お得で便利!が中国人の心をつかむ

フードデリバリーが流行っている理由にはいろんな面がありますが、「時間の節約」「わかりやすく豊富な選択肢」「コスパの良さ」といった点に集約されそうです。フードデリバリーを利用する理由は以下のようにまとめられるでしょう。

  • 注文してから30分以内で届くので、頃合いを見て注文すればランチタイムに並ばなくても昼食をとりたい12時にはランチにありつける
  • 写真付きメニューでいろいろな店から選べる
  • キャンペーンをしている店の情報が一目瞭然なのでお得な店を選べる
  • 「食後の口臭消しキャンディー」など付帯サービスが充実している

また、夜遅くなってから小腹がすいた時に家から出なくても食事を届けてもらえるのも、理由の一つです。


▼中国人は夜中におやつを食べる?! 「宵夜」の習慣はインバウンドでも発揮されているようです(クリックすると外部サイトが開きます)

訪日中国人にとって「日本のコンビニで唐揚げを買う」ことは訪日旅行のハイライト!?背景にあるのは「中国国内の日系コンビニ普及」「宵夜」:日本での「食」最新トレンドをソーシャルから分析!


デリバリーの利用には場合によっては100円程度の配達料金がかかることもありますが、美団も餓了麽も頻繁に割引キャンペーンをしているので、自分で買いに行くよりもフードデリバリーを利用したほうがお得と判断するユーザーもいるようです。

スマホのアプリを使ってメニューの写真を見て注文できるので、注文の聞き間違いなどのトラブルがない点も便利に感じられているのではないでしょうか。

配送員の給与は新一線都市の初任給を上回る

さてここまで「サービスの利用者」の立場から中国のフードデリバリーを見てきましたが、「配達員」にとってもフードデリバリーの存在も市場と同じく大きくなっています。

「餓了麽」の場合、配送員の基本給は2,100~2,300元です。一線都市、またそれに次ぐ新一線都市(杭州など)での大学新卒の初任給が約4,000元前後なのでアルバイト相応といったところでしょうか。


▼中国の大卒者の初任給について、こちらの記事で紹介しています

中国を数字で見る(2)中国学生の就職事情~新卒の初任給と人気業界ピックアップ


ところが、配送員の給与はこの基本給だけにとどまらず、実際にはかなり稼ぐことも可能となっているようです。その仕組みは「ボーナスや手当」と「初期費用の少なさ」です。

受けた注文の数が400件を超えると、1件につき6元ずつ基本給にプラスされます。そして、受けた注文数が600件を超えると1,200元のボーナスが付きます。

配送員になるには学歴などは必要なく、スマホを持っていれば誰でも配送員になれます。配達のための電動バイクすら、800~1,000元のデポジットを払えば支給してもらえるのです。さらに、スマホの通信費や食事代の補助、夏季の稼働には手当も付くそうです。

こういった補助もあり、配送員の月収は4,000~5,000元になるとも言われています。中国の普通のサラリーマンであれば、月給が3,000~5,000元であることもざらです。フードデリバリーの配送員は、場合によっては学歴がなくてもなれる高給な職業と考えられます。

まとめ

フードデリバリーサービスの拡大により、サービス利用者の生活の質を向上するだけでなく、新たな職業が生み出されている中国。東京だけで利用可能なウーバーイーツとは異なり、中国のフードデリバリーサービスを可能にしている餓了麽(ウーラマ)や美団外買のプラットフォームは中国全土で利用可能になっています。

また今年、餓了麽(ウーラマ)はアリババと、美団外買はテンセントと連携を強めました。餓了麽(ウーラマ)はアリババグループが提供する第三者決済サービスのAlipayのメニューにも配置されています。

業界の二大巨頭が確立し、今をときめく巨大企業の後ろ盾を得たフードデリバリー業界。今後もお金より大事な時間の確保のため、ますます業界が拡大していくのではないでしょうか。

参考:
※1 一般人が配達するウーバーイーツ、実際に頼んでみた(出典:NIKKEI STYLE)
※2 2017年第三季ウーラマと百度デリバリーの提携が第一位(出典:中国新聞網) 中国語

※3 「ウーラマ」の配達員の給与、待遇はどのようなものなのか(出典:53貨源網) 中国語
※4 「ウーラマ」アリペイのアプリに登場、決済と口コミもリンク(出典:新浪科技) 中国語