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【中国コンテンツBiz】 人気漫画のオリジナルCMでW11~W12へ  コンテンツ・タイアップで中国の胃袋をGet

以前ご紹介した「中国における週刊少年ジャンプ」の人気ぶり。その作品の多くが中国の若者を魅了し、人気を博しています。こうした日本のアニメなどのコンテンツは、中国に進出する日本企業にとっても強い味方になります。実はすでにその人気を活用し、中国で話題になった商品があります。それは「日清カップヌードル」。

今回の中国コンテンツBizでは、日本のみならず中国でもファンの多いジャンプ作品『銀魂』を活用して中国SNSで話題になった案件をご紹介しましょう。

 

『銀魂』は2004年から週刊少年ジャンプで掲載されている人気漫画(作者:空知英秋)。セグメントで見れば、「SFギャグ・バトル時代劇」とでもなるでしょうか。

2016年5月には単行本発行部数累計5000万部を突破し、アニメ化、さらには2017年に実写映画が上映され、興行収入39億円のヒット作品となっています。

その銀魂ですが、すでに海を越えて中国でも人気作品となっています。主に、大学生~ホワイトカラーに好評なようです。多くがインターネットでその作品を知り、動画サイトなどで視聴し、アニメイベントでは登場人物のコスプレなども多く見かけます。

前述の実写映画も2017年9月1日から3日間限定で上映されましたが、その興行収入は5956万人民元(約10億円)超、中国で最も売れた実写邦画となっています。

その人気に着目したのが「日清食品」でした。

同社は1994年に中国で、即席めん「カップヌードル」の販売を開始、以来20年以上にわたって中国で市場を開拓してきた企業です。

もともと中国の即席めんメーカー「今麦郎」との合弁を行っていましたが、2015年にそれを解消、2017年末には単独で香港市場上場を果たしています。

その日清が2017年に行ったのが、前述の「銀魂」とのコラボ。

行った施策は①キャラクターをデザインしたパッケージ商品の販売。②アニメ版「銀魂」オリジナルCM、の2点。そして狙ったのが、中国最大のECイベント「W11(ダブルイレブン/独身の日)」とそれに続く「W12(12月12日)」でした。

そんな日清食品×銀魂コラボ、W11~W12までの施策を見ていきましょう。


まずはW11に向けた綿密なプロモーション

日清食品が行った「銀魂カップヌードル」のプロモーション、時系列に沿って見ていくと、トータル3か月間にわたるものであったことがわかります。

 

8月23日

日清食品カップヌードル「合味道」のWechat広告アカウント「合味道」×「銀魂」コラボCMを発表。

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8月25日

Wechat広告アカウントでCMアニメを公開。

タイトルは「ドライブデートは計画的に」。ストーリーは、主人公である万事屋の3人が依頼を受けて上海へと向かい、依頼人・周さんのデートを成功させるため、独身の3人がアドバイスを出すというものでした。

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10月3日

中国のアニメイベント「CICF EXPO 2017」(中国国際漫画動画ゲーム展示会)の会場でコラボの発表会。また会場内限定で通常商品を12個セットで買うと、銀魂キャラクターに合わせた特別商品「いちごみるくシーフード味」、「あずきシーフード味」と「ダークマターシーフード味」の3つの味から、ランダムに1つプレゼント。注文期間は会場内の17:00まで、限定500セット。

 

10月27日

アニメCM第2弾がWeChat公式アカウントで公開。タイトルは「好きなタイプは人それぞれ」をテーマに、独身女性・張さんから彼氏探しの依頼です。3人は銀魂の中の人気キャラクターを紹介しましたが、「一緒にいてもつまらなそう」、「年下圏外」、「マンションを持っていない」の理由ですべて撃沈という話。

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10月28日W11事前注文

12個セットを買うとスペシャルフレーバーが3つとも貰える!

11月10日22時まで事前注文、66元に前払金10元を払う。2000セット限定。

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11月10日W11のキャンペーン案内

W11直前コラボCMアニメ第3弾の予告編が公開。同時にW11におけるT-mallキャンペーンページへの案内。

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11月24日

アニメCM第3弾「どこの国の母ちゃんもだいたい同じ」の正式公開。ストーリーは、ある母親が公園で張り紙を出して娘・林さんのお見合い相手を募集するお話です(中国では親が適齢期の未婚の子供の資料をもって公園でお見合い相手を募集するイベントが多く開かれている)。限定パッケージ第2弾を発表。

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12月8日W12

T-mallで12個セットを買うと限定味がランダムに2個入ったお得な14個セット販売。

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これらの内、W11のキャンペーンページは1日限定でもう見られませんが、11月10日時点で事前注文は1万件超えとのこと。

またキャンペーン期間中、T-mall日清食品旗艦店での累計クチコミは4953件(買った人全員クチコミを書くとは限らない。また、実際の販売数はもっと多い。)、写真付きのクチコミは1215件となっています。さらに旗艦店の満足度も星4.8(5つが満点)で、大満足とも言える成果を得ています。

こうした旗艦店ページやWeibo上には、当たった限定版商品を見せたり、大量のカップヌードルを食べた後の戦績を自慢したりといった投稿が溢れていました。

うずたかく積まれたカップヌードルの写真がアップされたT-mall日清食品旗艦店内の写真付きクチコミ

発表された限定商品も高い注目を浴びた(Weiboの書き込みより

日清カップヌードルの成功から見るコンテンツ活用マーケティングのツボ

ではなぜここまでヒットしたのでしょうか?

もちろん「日清カップヌードル」という、すでに中国消費者に定着したブランド力もありますし、同時に『銀魂』という日中を股にかけるモンスターコンテンツを活用した点も大きいでしょう。

しかし、さらに冷静に分析すると成功のポイントは以下の3点が考えられると思います。

 

  1. 『銀魂』のファン層=日清カップヌードルのターゲット層
  2. 「独身が持つ結婚願望」というテーマから「W11(独身の日)」を連想させた
  3. CMのストーリーがすべて中国消費者の体験に根差したもので、共感を得やすい

 

その中でも最も大きな要因だったのが3つ目。

単にアニメのワンシーンを使うのではなく、オリジナル作品に仕上げたこと。さらにそれを作るにおいても日本目線でのストーリーではなく、中国消費者の実生活、実際の悩みや体験に基づいてストーリー構成をおこなった、ここに尽きるのではと思います。

第2弾も、中国の女性にとって「一緒にいて楽しく」、「年上で(頼りがい)」、かつ「家持ち」であることが理想の結婚相手であるというニーズをくみ取っての企画ですし、第3弾の「公園で、子供の経歴を交換し合って子供のお見合い相手を探す親」というシチュエーションは、中国ならではの現象で、日本にいたのではとても思いつかない内容でしょう。

しかしそれは中国の消費者、特に適齢期となっているターゲット層にとっては「あるあるネタ」もしくは「実体験」。共感を呼びやすいストーリーだったのです。

クチコミでも見えるW11のカップヌードル人気

コンテンツビジネスやコンテンツを活用したマーケティングにおいては、とかく「日本で流行ったもの」をそのまま適用するケースもありますが、中国でも人気の日本コンテンツを、上手に(原作のイメージを壊さず)ローカライズすることによって、よりターゲットたる中国消費者に訴えかけ、PR効果を高めることが求められます。

その点において、中国消費者の生活やその中での出来事などを詳しく分析した、「技あり」の成果だったと言えるでしょう。

 

こうした日清カップヌードル×銀魂コラボの成果は、トレンドViewerのクチコミ件数にも表れています。

トレンドViewer買ったランキング「カップヌードル」クチコミ件数の推移

徐々に情報が流れ始めた2017年8月16日の週から、トレンドViewerにおける「買ったランキング」の日清食品「カップヌードル」クチコミ数が上昇を始めています。

その後、一連のコラボプロモーションを受けて、クチコミ件数が増え続け、そして11月15日の週には一気に上昇します。

W11当日でないのは「買った」ランキングであるため、W11当日に購入したカップヌードルが家に届き、その後に一斉にクチコミを書きだしたことによるものと考えられます。

さらにそれがW12が終わった12月20日の週にまで続いたのは、W11の余韻をそのままW12まで継続させた施策によるもので「狙い通り」だったということになります。

後半クチコミ数が減少に転じているのは、カップヌードルの賞味期限は6か月とされていることもあり、消費者がキャンペーン商品を「美味しくいただいた」ことで、SNSへの投稿が減っていったことによるのではと予想できます。

 

つまり、消費者は今回の銀魂×カップヌードルイベントを目と舌で体験し、楽しんだ、と言えるでしょう。

 

ただ今回、少し残念だったのは、日清食品の銀魂コラボプロモーションが、Wechatの広告アカウントに終始したこと。

実は日清食品はWeiboの公式アカウントがなく、Weibo上で閲覧できた同社のコラボCMは全部ファンの転載だったのです。

「Weibo公式アカウントないの?コレおいしいよ~」というWeibo上のクチコミ

「カップヌードル」の公式Weiboアカウントは2017年12月31日に運営開始をし、現在のフォロワー数も約4万人となっています。

しかし、もし銀魂コラボの時に公式アカウントがあったら…?その効果はまた別の状況になっていたようにも思います。