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【訪日中国人】クチコミ調査で見る2018年国慶節の過ごし方~今年の観光ニーズは?

2018年の夏、例年にも増した暑さに見舞われた日本でしたが、そんな暑さなどなんのその。多くの中国人が日本へとやってきました。日本の観光ブームを相まって、多くの観光地がまさに「書き入れ時」となりましたが、その波が過ぎ去ってもまだまだ観光シーズンは続きます。続いてやって来るのは10月1日からの国慶節。この中国独自の観光シーズン、中国の消費者はどのようなニーズを持っているのでしょうか?今回、中国トレンドExpressは、国慶節観光ニーズを知るための口コミ調査を実行。中国消費者の「予定」を分析します。

【調査概要】
調査期間:2018年7月21日-8月20日
調査対象:新浪微博
調査項目:
1.国慶節×〇〇したい
2.国慶節×行きたい
3.国慶節×海外vs国慶節×国内
4.国慶節×旅行×予算
5.国慶節×ほしい
6.国慶節×悩み
7.国慶節×買いたい

日本を訪れる観光客は増加の一途をたどっていますが、その中でも最も多いのが中国からの観光客。いまだに2014年の「爆買い」を覚えている日本人は数多くいます。

そのため中国からの観光客のニーズを知ることは、インバウンド産業においても非常に重要なミッションとなっています。

増加を続けている外国人観光客と中国人観光客

JNTOの統計では2017年に日本を訪れた訪日観光客の内、実に26%、4分の1以上が中国大陸からの観光客となっており、東京でも新宿や銀座など、中国語を聞かない日はないほどの人気ぶりとなっています。

2018年に入ってもその人気は継続しており、都内百貨店の免税エリアを見てみても、来店客の8割程度が中国からの観光客なのでは、とも思われます。

【グラフ】2017年の訪日外国人観光客に対する中国人観光客の割合

出所:日本観光局(JNTO)の発表を基に中国トレンドExpress編集部で作成

【グラフ】2018年の訪日外国人と、訪日中国人数の推移

出所:日本観光局(JNTO)の発表を基に中国トレンドExpress編集部で作成

こうした中国観光客ですが、その爆買いの対象も炊飯器や温水洗浄機付き便座などから健康食品や化粧品などへと移り変わりました。

また越境ECの発展、日中間のソーシャルバイヤーの活躍によって、買い物の必要性が徐々に薄まり、より観光を楽しむスタイルへと変化しています。

その中で、中国人観光客が日本を訪れるシーズンも徐々に定着してきました。春節、桜の咲く春、夏休み、そして10月にやって来る国慶節です。

そもそも「国慶節休暇」とは?~巨大な観光マーケット

国慶節とは、いわゆる中国の建国記念の日。1949年10月1日に建国の父であり、初代国家主席である毛沢東が、北京天安門の楼上で建国の宣言を発した日です。

もともとは10月1日から3日のみが休日になっていましたが、1999年に建国50周年を記念して「長期休暇」が制定され、2000年国慶節より施行となりました。

ただ実際は、国慶節前後の週末を出勤日にし、その4日分に休日を国慶節後に振り分けることによって1週間の休暇を設定しました。

そのため中国では国慶節の前後の週末(もしくは片方)は、基本出勤日となっています。

いずれにせよ、中国では春節に次ぐ大型の休日とあり、2017年には中秋節と重なったことで、国内の旅行人数7億人超、観光による国内の収益は5839億元(9.5兆円)に達したと中国国家旅游局は発表しています。

つまり国慶節は中国国内にとっても、最大級の観光商戦なのです。

クチコミで見る国慶節観光ニーズ

そんな国慶節のニーズを知るための今回の口コミ調査、まずは中国の消費者が今年の国慶節連休に何を求めているかを見ていきましょう。

【グラフ】2018年の国慶節に「〇〇したい」クチコミ調査

「いつの時でも元気な中国観光客!」と印象が強いですが、クチコミ調査の結果を見てみると、なんと「ゆっくり休みたい」というクチコミがトップに。

そこに「何もしたくない」、「無計画」というクチコミと合わせると、なんと3割以上の消費者が「長期休暇には出かけたくない、もしくは出かける予定がない」となります。

何があったのかを分析してみましょう。

実は多くの一般消費者は、一言でいうと「疲れている」のです。これには現代中国、特に大都市の現実が現れています。

日本では「中国経済の成長」や「中国富裕層」などが取りざたされますが、一般の家庭では所得こそ増えているものの、たくさんのプレッシャーを抱えながら生活しています。

一つが不動産。中国では結婚する際の不動産購入は習慣になっています。結婚することを「結婚(jiehun)と一般に言いますが、もう一つ別に「成家(chengjia)」という表現を使います。しかし、この言葉は「自分の家をもって一家を立てた」という意味合いを持ち、家を購入していない新婚夫婦は結婚こそしたが「家を成していない」と、やや中途半端な評価を受けます。

そのため結婚する2人、特に新郎側は住宅購入に躍起になります。しかし購入すると、住宅ローンの返済が始まります。中国の住宅ローンは年利5%以上、住宅積立金ローンを利用しても3.25%と比較的高く、大都市ではその返済は大きな負担になります。

また子供が生まれれば子供の養育費、学校に入れば教育費、習い事の費用なども不動産ローンに加えて発生します。

こうした支出を支えるために、大都市消費者はより高い所得を求め、多くの仕事やビジネスを展開するのです。よく「中国人はがつがつビジネスを展開する」という印象をメディアなどから植えつけられていますが、彼らはそのように積極的ビジネスをし、より多くの所得を得ていかなければ生活の安定を得ることができないのです。

しかし、そうした生活を続けていくとどうしても疲れます。このクチコミ調査の結果には、こうした生活を送っている中国消費者の「たまの長期休暇、ゆっくり休ませて…」という思いの表れなのです。

では気になる国慶節の観光ニーズは?

とはいうものの、「近場で」というニーズや国内外への旅行ニーズを合わせると、同じく3割程度が希望として持っており、観光ニーズが皆無というわけではないようです。

それは「疲れを旅行で癒そう」というニーズなのかもしれません。

グラフ】国内旅行と海外旅行のニーズ比率

観光ニーズの内、海外と国内を比べてみると、国内旅行が約6割となっています。

国を出て日本へやって来る観光客ばかりを目にする日本人からはなかなか理解できず、「中国人はみんな海外旅行へ出かける」といった誤解もあるようですが、広大な国土を有する中国には歴史を持つ都市、風光明媚な観光地が数多くあることから、旅先選びには事欠きません。

「中国国内でもまだまだ行っていない場所がある」

「昨年は海外に出たから、今年は国内で」

などなど、理由は様々ながら国内旅行のニーズもまだまだ高いのです。

では中国の消費者はどこに行きたがっているのか、同じくクチコミ調査を行ってみました。結果は以下の通り。

 

【グラフ】国慶節に行きたい場所クチコミ調査

今回の調査ではあえて国内・海外を分けず、すべてをまとめて調査してみました。

それによると、まずは首都である北京市。

日本人でも「首都への観光」はいまだに高い人気がありますが、それは中国でも同じ。特に北京には故宮(紫禁城)や万里の長城など、日本でもおなじみの観光資源があり、根強い人気を誇っています。さらに国慶節という国ができた日であることから、「じゃあ新中国誕生の地を見に行こう」という気持ちもあるようです。

続いて四川省。なによりも「パンダ」という観光キャラクターを有している同省は、国内でも人気の観光地。大仏で有名な楽山、九塞溝など、SNS映えのする観光地が人気です。

3位、4位は海外。「タイ」、そして「日本」が続きます。この両国は中国では常に1位、2位を争う観光地です。

タイは今年7月に起きた、中国人観光客を乗せた客船の沈没事故に対する対応で中国での印象が悪くなっていましたが、リーズナブルに行ける海外観光地であることや、中国人向けのサービスが充実していることから人気が高くなっています。

またタイを含めたマレーシア、シンガポールといった、中国海外観光初期の目的地が依然として人気となっている様子が見て取れます。

しかし注目は10位以下。ここに、最初のクチコミにも通じる中国の海外観光ニーズが隠れています。その分析は次回詳しく見ていきましょう。