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【訪日中国人振り返り】春節前にチェックしよう。2018年に中国人訪日観光客はどこへ「行った」のか②

2018年の訪日中国人は相変わらず「沖縄」が首位をキープしていました。さらには北海道への人気も依然として強いものがあります。しかし、中国消費者は常に新しいモノ、新しい場所を求めて情報収集を行っています。2018年が過ぎ去る前に、中国からの訪日観光客が目を付けた新しいスポット、2018年「行った」ランキング21~40位を見ていきましょう。

■データ

トレンドViewer「行った」ランキングより

  • 2018年1月3日~10月30日
  • 2017年1月4日~12月4日

のクチコミ件数を収集し作成

 

前回述べたように、2018年の「行った」クチコミ件数全体を見てみると、昨年の342万件余りから40万件ほど増加の388万7867件が中国SNS上に書きこまれ、日本観光および「日本に行った」ことをアピールするニーズは衰えを見せていないことが分かります。

【グラフ】2018年と2017年の「行った」クチコミ件数の比較

クチコミ件数全体は順調な増加を見せていますが、ランキング1位となった「沖縄」の件数が大きく減少していたことも、前回お伝えした通りです。

では増えた分の件数はどこにいったのでしょうか?


観光地、訪日ショッピングスポットも入れ替わり激しい20位以下

その謎を解くためにも20位以下のランキングも見ていきたいと思います。

まずは21~40位の具体的な地名から見ていきましょう。

【グラフ】2018年「行った」ランキング21~40位

順位 2018年 2017年
21位 修善寺 黒門市場
22位 伊勢丹新宿 明治神宮
23位 東京タワー 厳島神社
24位 難波神社 立川
25位 中部国際空港 宝塚
26位 芦屋 ドン・キホーテ
27位 新橋 難波
28位 蓮華寺 東京スカイツリー
29位 下関 東京駅
30位 Ginza SIX 銀座
31位 宇佐神宮 東京タワー
32位 河口湖 別府温泉
33位 下呂温泉 東大寺
34位 難波 三町(高山)
35位 箕面 富山
36位 白い恋人パーク 難波神社
37位 桂川 Ginza SIX
38位 難波高島屋 銀座松屋
39位 天橋立 春日大社
40位 銀座 マツモトキヨシ

これを見ると「新宿伊勢丹」は昨年の12位から20位圏外へ、また高級ショッピング街である「銀座」も、昨年の30位からランクを10落として40位と下落。

これだけ見ると「モノ消費が衰え、コト消費か?」と思われがちですが、昨年26位だった「ドン・キホーテ」は今年9位に、2018年38位の「難波高島屋」も昨年51位から、また「京都駅IR伊勢丹」は大幅なランクアップを果たし、2017年253位から17位へと駆け上っています。

ここから「ショッピングスポット」に対してのニーズは衰えていない反面、その具体的な場所に関してはトレンドが移っていることがわかるでしょう。

特に「日本でショッピングをする」という行為自体が「コト消費」、「体験型消費」となっている状況にあることから、どのようなショッピング体験ができるかの情報発信が大きな影響を及ぼすことが予想されます。

 

また興味深いのは「東京タワー」と「東京スカイツリー」の新旧タワー対決。

2017年は僅差で「東京スカイツリー」のクチコミ件数が上回りましたが、今年は「東京タワー」が雪辱を果たしました。「東京スカイツリー」は今年46位とランクを大きく下げました。

その理由として、今年東京タワーでは中国でも人気が高いアニメ「ワンピース」とのコラボイベントを開催したり、その内部の状況を伝える動画配信を行ったりといった、「上ってもらう施策」を多く展開したことが挙げられるでしょう。

 

また、全体的に見れば「蓮華寺(28位)」、「宇佐神宮(31位)」、「桂川(37位)」などの、より具体的な地名も上位に挙がっている反面、昨年11位で、訪日外国人知名度No.1の「伏見稲荷神社」は2018年には51位まで」ランクを下げています。

こうした変化、Weiboの書き込みを見ると「伏見稲荷は外国人多すぎ」といった内容や、「ここは人が少なくていいよ」、「ゆっくり風景の写真が撮れる」などの書き込みが見られ、まだ中国で知られていないきれいなスポット、すなわち穴場スポット探しによるものであると予想できます。

こうした中国消費者の心理も、より細かく読み解く必要があるでしょう。

日本のメジャースポットも実は「隠れスポット」。魅力に気づき始めた訪日中国人

では、これらのクチコミ件数を見てみましょう。

【グラフ】2018年「行った」ランキング21~40位のクチコミ件数

これを見ると、ランキングを下げたもの以外は、軒並み大幅増加を見せています。特に目覚ましかったのは「新橋(27位)」と「天橋立(39位)」。

前者は日本ではサラリーマンの聖地として知られていますが、リーズナブルな居酒屋などが多く並んでおり、日本の日常生活を垣間見ることができるというのがポイントになっているようです。

また「天橋立」は、日本人にとってはメジャーな観光地ですが、実は訪日中国人にとっては「裏スポット」だったようです。

近年、中国のWeibo上で写真付きでアップされる(おそらく留学生など)ようになり、中国人観光客の間で知られるようになりました。

 

これらのスポットは日本側からのプロモーションの結果というよりは、中国の消費者が独自のルートで探していったスポット。「中国に知られていなかった日本の名スポット」が徐々に発掘されつつあると言えそうです。

それに比して29位にランクインした「下関」は、中国からのクルーズ船の受け入れ、こうした訪れた中国人観光客に対して、フグといった中国では食べられない食文化(中国ではフグの調理は原則禁止されている)を発信することでクチコミ増につなげたものと考えられます。

前出の「東京タワー」同様、中国国内にいる消費者に向けた情報発信が効果を上げた実績と言えるでしょう。

ただ「下関」の場合、同地以外の山口県の地名やスポットの名前が上がっていないのが気になるところ。2018年は明治維新150周年という記念の年であり、国内外に向けての観光誘致を行っていましたが、中国ではそもそも日本史への理解が薄いため、日本人にとってグッとくる「松下村塾」などの名スポットも名前を覚えてもらいにくいのが現状です。

こうした点からも、中国向けインバウンドでは「歴史に根差した観光戦略」の難しさがあると言えるでしょう。

 

昨年からも大きく変化した訪日中国人の目的地ランキング。そこからは見えるのは、やはり中国消費者のニーズ変化の激しさであり、それを支えているのが中国独自の「情報チャネル」であると言えます。

次回はインバウンドがもたらす「観光公害」や中国人観光客とのトラブルについて考察を加えてみたいと思います。