中国トレンドExpress

【春節訪日観光】 「モノからコトへ」ってホントなの? 変わる中国訪日客のニーズ変化をチェック

春節まであと10日程度。間もなく中国の最大規模の観光シーズンが始まります。実家に帰る人、今住んでいる場所で過ごす人、そして海外に出る人、様々です。もちろん日本旅行を楽しむという選択も少なくありません。

そんな中国人の訪日観光、日本では「モノからコトへ」、「今や体験型だ!」といった声が聞かれていますが、ホントのところはどうなのでしょう? 中国人観光客の日本観光への期待がどう変わったのか、クチコミデータをもとに見てみましょう。


いったいどんな人たちが日本に来ているのか?

まず、中国の訪日観光をもう一度確認してみましょう。

JNTOの速報値では、2018年に日本を訪れた中国人観光客は838万人、2017年比で13%の増加、過去最高となりました。

経済成長率の減速、アメリカとの貿易戦争など、景気には不安要素はありますが、それでも日本を訪れる中国消費者は減っていないことが見て取れます。

ただ、こうした中国消費者ですが、まず日本に来ている中国人観光客の状況を、JNTOの統計による2018年のデータを参考に見てみましょう。

【グラフ】中国人訪日観光客の年齢比率

出所:観光庁の四半期ごとに実施・発表したアンケート調査のデータを中国トレンドexpressで合算し作成
http://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/syouhityousa.html

 

これを見ると、ボリュームゾーンは20代~30代。いわゆる「80後」世代以降という、現代中国の主力とされ、かつ最もアクティブな消費層と言われている世代が中心であることがわかります。

これを男女比で見てみると、女性は20代が圧倒的多数となっており、流行や美に敏感な世代が多く訪れていることがわかります。

 

【グラフ】中国人訪日観光客の男女別年齢層(単位:人)

出所:観光庁の四半期ごとに実施・発表したアンケート調査のデータを中国トレンドexpressで合算し作成
http://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/syouhityousa.html

 

特に中心は「90後」世代、すなわちインターネット、SNSで育った世代であり、クチコミの影響を大きく受ける世代となっています。

日本で「〇〇したい」ランキングで何が見える?

さて、そんな中国人観光客ですが、日本の観光に何を求めているのでしょう?

トレンドViewerに集められている「〇〇したい」クチコミランキングデータから、2018年1年分を抜き出して見てみましょう。

2018年の「〇〇したい」ランキングTOP20は以下のようになりました。

【表】2018年1年間の「〇〇したい」TOP20

順位 「○○○したい」
1 買い物したい
2 日本料理を食べたい
3 温泉に入りたい
4 お寺に行きたい
5 日本料理を作りたい
6 お茶をたてたい
7 森林浴をしたい
8 エステに行きたい
9 握手会に参加したい
10 美容院に行きたい
11 富士山に登りたい
12 和菓子を作りたい
13 お城に住みたい
14 鹿を見たい
15 人力車に乗りたい
16 紙漉きをしたい
17 舞妓さんになりたい
18 スキューバーダイビングをしたい
19 着物を着たい
20 新幹線に乗りたい

出所:トレンドViewer「○○○したい」ランキング(2018年1月3日~12月25日)を集計

 

これを見ると「買い物をしたい」というニーズは依然として1位ですが、これについては後述します。

またTOP5は「温泉」、「お寺」といったキーワードが並びますが、注意すべきは5位「日本料理を作りたい」といったように、自分で日本的なものに挑戦したいという部分が上位に上がっています。

さらに見ていくと、「お茶をたてたい」や無形文化遺産に登録された「紙漉き」、「日本のお城に住みたい」、「富士山に登りたい」など、日本的なものを実際に深く体験をしたいというニーズが見られます。

 

しかし同時に「美容院」や「エステ」など、日本の「美」の技術を体験したいというニーズが高いのも見て取れます。

これはやはり日本の基礎化粧品から始まった、日本のコスメ・美容への高い評価から派生したもので、日本のエステサロン・ヘアサロンといった場所で、日本の技術とサービスによって安心して(押し売りなどなく)美しくなりたい、というニーズが高まっているためです。

前述の訪日観光客、女性の若年齢層が多いのは、こういった理由によるものなのかもしれません。

また、「森林浴」や「お寺に行きたい」、「スキューバダイビング」など、どことなしかリフレッシュを求める傾向もうっすらと見えてくると思います。

競争社会、高速で変化するライフスタイルに、中国の消費者、特に中核たる20代30代は疲れを感じ、癒しを求めているのかもしれません。

 

さてこうしたニーズ、中国における訪日観光人気に火が付いた2014年当時と比べてみましょう。なかなか面白い結果が現れます。

 

【表】2014年1年間の「〇〇したい」TOP20

順位  
1 買い物したい
2 温泉に入りたい
3 観光したい
4 お寺に行きたい
5 ブランド品を安く買いたい
6 新幹線に乗りたい
7 着物を着たい
8 花火を見たい
9 日本料理を食べたい
10 桜を見たい
11 福袋が欲しい
12 撮影をしたい
13 舞妓さんになりたい
14 ライトアップ(夜景)を見たい
15 日本の家を買いたい
16 和菓子を作りたい
17 利き酒をしたい
18 鹿を見たい
19 雪が見たい
20 撮影をしたい

出所:トレンドViewer「○○○したい」ランキング(2014年1月1日~12月31日)を集計

 

「買い物をしたい」は相変わらずですが、「ブランド品を安く買いたい」(安くっていうのがポイントですね)、「日本の家を買いたい」、「福袋が欲しい」など、「欲しいもの」がランキング上位に散見します。さらには「観光がしたい」という漠然とした回答も。

当時はやはり「日本に行く=何かを買う」という意識が強く、観光地を見て歩くといった部分は少なかったことが想像できます。

また、「新幹線」、「着物」、「桜」など、体験の内容も「The Japan」というものが上位に。まだまだ日本初心者が多く、「まずは基本的にゴールデンルートを巡って、日本っぽいものを体験してみたい」といったニーズでした。

 

これを比較すると、中国からの訪日観光客も徐々に日本慣れをしてきており、さらに本国で少しずつ現れてきている価値観の多様化の影響を受け、日本に来る目的も「美容」や「リフレッシュ」、「文化体験」など、さまざまに変化している傾向にあると言えるでしょう。

「モノからコトへ」を少し深めに考えてみる

さて、この対比をしてみて「買い物がしたい」が依然として高い人気を保っていることが見て取れます。

それを見て、

「あれ、モノからコトでしょ?もう爆買いも終わったんでしょ?」

といった疑問を感じる人も少なくないと思います。

では、逆に質問します。

「コト消費とモノ消費の区別とは?どこで線を引きますか?」

実は最近の中国消費者に話を聞くと、「日本で買い物をするというコト消費」が人気でもあることを感じます。

例えば化粧品売り場で、専門スタッフに細かなカウンセリングをしてもらいながら消費を選ぶという「体験」、ブティックで店員さんのアドバイスを求めながら服を選ぶという「体験」。

そうした買い物も、中国訪日観光客の「コト消費」に含まれてきているようです。

さらに「日本商品の人気」は依然として衰えを見せていません。であれば、「日本に行ったら、日本で日本の商品を買いたい」と思うのは当然のことではないでしょうか?

そのため、安易に「モノ消費」「コト消費」と考えるのではなく、日本に観光に来るコト自体が「コト消費」であり、そこで行う、買い物を含めたすべてのことが「コト消費」に含まれるのだという認識が必要になってきているように思われます。

 

ただ注意が必要なのが、かつてのような「日本製だから買う」といった時代は過ぎています。また中国消費者も「日本のどこで何を売っているのか」という情報も豊富になっています。

そのため「Made in Japan」や「有名店」といった看板だけに頼った販売は、徐々に通用しなくなっていくようにも思います。

これからは、インバウンドにおいてもしっかりした、受け身にならない情報発信が必要となって来るでしょう。

 

次回は中国人の「買いたい」ものの変化を見てみましょう。