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中国女性のホンネVol.8~不動産コンサル会社経営の姚さんの場合

Text・Photo:配島亜希子

独身アラサーで不動産コンサル会社の社長をしている姚さん(35歳)。

陝西省西安市で生まれ、大学卒業後は中国国内をあちこち旅して回り、最終的に上海に腰を落ち着けました。企業に勤めながらMBA(経営管理修士)を取得、カフェの運営に携わったり、台湾人と起業したりと様々な社会経験の持ち主です。

3年前に自分の会社を設立し、今の月収は上海の平均水準をやや上回る約2万元(約32万円)。社交的でアグレッシブ、仕事もプライベートも謳歌しているその姿は“上海の独身アラサー女性”の象徴かもしれません。

今回の取材対象者のプロフィール

氏名: 姚艶華

年齢: 35歳

出身: 西安市

婚姻状況: 未婚

月収: 月収2万元(約32万円)

勤務先: 商業不動産コンサル会社経営

学歴: 中国人民大学(修士)

家族構成: 両親、弟、本人の4人

生活状況: 本人は一人暮らし(徐匯区、家賃4,500元/約72,000円)。家族は西安(陝西省)在住。

趣味: アウトドア、カフェ巡り、読書、アメリカドラマ

趣味は話題の「カフェ」巡りに、最近ブームの「クラフトビール」

商業不動産のマネジメントやコンサルを手掛ける会社を経営する姚さん。今年から本格的に取り組み始め、多忙な日々を送っています。

そんな彼女の趣味は「カフェ巡り」。

じつは以前に友人とカフェを経営していた時期もありました。ニューオープンや今話題のカフェなど、気になったカフェをブックマークしておき、仕事の打ち合わせや友人とのおしゃべりの際に利用しています。

本日の取材も、「一度来てみたかったんです」と彼女に指定されたカフェで行いました。

 

もう一つの趣味は「クラフトビール」。仕事柄人と会うことが多く、交友関係の広い彼女は、仕事帰りや休日にクラフトビールを扱うビアレストランへよく食事に行きます。

「もともとビール好きなんですけれど、最近のクラフトビールブームでますます感化されました」とのこと。

世界各国のクラフトビールが飲めるアメリカの有名レストランチェーン「ワールド・オブ・ビア(WOB/World of Beer)」や台湾の「金色三麦(チンスーサンマイ)」、中国の「熊猫精醸(Panda Brew)」といったクラフトビールブランドのビアレストランがお気に入りです。

 

クラフトビールは中国でも2008年頃から都市部を中心に親しまれるようになり、海外のクラフトビールを扱う輸入ビール専門店やビアバーなどが次々と登場しました。

その波に乗り、国内のメーカーやレストランがオリジナルブランドの国産のクラフトビールを製造し始めます。

その先駆けとして、「Boxing Cat Brewery(拳撃猫/ボクシングキャットブルワリー)」や「熊猫精醸(Panda Brew)」などが有名です。徐々に到来したクラフトビールのブームは2、3級都市へも広まっています。

ソーシャルバイヤーや「唯品会(VIP)」でコスメを購入

アラサー女性にしては珍しく、コスメや美容への関心はあまり強くない姚さん。ブランドもこだわらず、スキンケアも基本中の基本程度。

友人のおススメを購入したり、人からもらった化粧品を使ったりしています。「こだわりはないけど必ず実物を試してから買います」と品質や相性は重視しており、使ってみて良ければ継続するそう。

 

最近はアメリカの「エスティローダー(Estée Lauder)」や「エリザベスアーデン(ELIZABETH ARDEN」)」、そして「資生堂」を愛用し、「ロレアル(L’Oréal)」や「ランコム(LANCÔME)」をスポットで使うことも。

大半の中国女性に漏れず海外ブランドばかりで、女性向けのファッション系ECサイト「唯品会(VIP)」や海外ブランドのソーシャルバイヤーをしている友人から購入しているとのこと。

 

美容への関心は強くないとはいえ、目の下のクマや涙袋のシワ、髪のパサつきは気になっているそう。

「みんな30歳頃からエステに通い始めますが、私はあまり興味がなくて。友人に誘われたり、クーポンをもらったりした時にたまに行くくらい。それより、お茶したり飲みに行ったりしてストレスを発散しています。こうしたストレス解消法も美容効果があるのでは?」と、ストレスフリーなライフスタイルに重きを置いているようです。

 

欲しい情報は「WeChat」公式アカウント、世間のニュースは「今日頭条(Toutiao)」で

 

「買いたい!と思えば『Taobao(淘宝)』、行きたい!食べたい!と思えば『大衆点評(Dianping)』が一番」と姚さんは言います。

さらに、「ショッピングはファッション系なら『唯品会(VIP)』、電子商品なら『JD.com(京東)』、デリバリーなら『ウーラマ(餓了麽)』、イベントチケットなら『大麦網(Damai)』」と、それぞれのアプリが得意とするジャンルで使い分けているそう。

 

欲しい情報を定期的に獲得するツールには、「WeChat(微信)」の購読アカウント(訂閲号)やサービスアカウント(服務号)といった公式アカウントを利用。

「気に入ったアカウントをフォローして配信されたコンテンツを極力見るようにしています」とのこと。

 

では、今大人気の「TikTok(抖音/ドウイン)」などのショート動画アプリや「タオバオライブ(淘宝直播)」などのライブコマースアプリはどうでしょう?「習慣がないので見ませんね。世代の違いかもしれません。10~20代ほどアラサーには響かないかも?」との返答でした。

 

ビジネスからエンタメまで様々なニュースを受け取れる「今日頭条(Toutiao)」で、世間の動向を把握します。動画を中心としたコンテンツの豊富さが売りのニュース系SNSアプリで、総合情報の老舗大手ポータルサイト「新浪(Sina)」、「捜狐(SOHU)」、「網易(NetEase)」を追い抜き、今やニュース配信アプリの定番になりそうな勢いを見せています。AI(人工知能)を活用してユーザーの趣向に合わせたニュースを自動配信し、SNSやEC機能を兼ね備え、コンテンツを投稿することもできて画期的だと利用者が急増しています。

「供給側改革」で、中国の国産コスメにも商機はあるかも

中国ブランドについては、「中国の国産コスメは気になっています。政府が後押ししていますし」とのこと。

とはいえ、コスメに関心の低い彼女はビジネス的視点から気にかけているようです。中国政府は2015年、「供給側改革」と呼ばれる経済改革を打ち出し、過剰生産による需給の不均衡の是正と生産性の向上を目的とし、国内で生産した商品で内需を満たそうと経済の方向転換を図っています。

 

「低品質だが安価」な中国製品は外需に対応し、自国商品の粗悪さを認識する中国人は海外製品に高品質や安全性を見出しています。

しかし、「供給側改革」の政府の支持もあり、一部の中国製品の品質レベルは中国人のニーズを満足させるようになり、「良品質でリーズナブル」という認識が徐々に生まれてきています。前述のクラフトビールも、人々の意識が変わり、ここ数年は国産の人気にも火がつきました。

 

全体的に品質レベルが高いと言うにはまだまだですが、確かに中国製が見直されつつある動向はあります。彼女も「国産コスメが海外コスメと肩を並べられるようになるのはまだ時間がかかるとは思いますが、馬鹿にできないブランドが出てきているのは感じます」との見解です。

「鞄の中をみせてください」

小さなショルダーバッグの中には、スマホ、名刺入れ、カードケース、イヤホン、ハンドクリーム、口紅とリップグロス。ミーティングなどでパソコンが必要な時は、別途ノートPCやタブレットを持ち歩くこともありますが、基本的にはこれだけだそう。

キャッシュレス先進国の中国、スマホ決済でもう財布は必要ありません。一部の大手スーパーチェーンや家電量販店、コンビニなどではすでに顔認証決済が導入され、スマホさえ必要ない時代へと変わりつつあります。「お財布を持ち歩かないのでカードケースに身分証を入れています。出張やミーティングが急に入り、飛行機や高速鉄道に乗る時に必要なので常に携帯しています」とのこと。日本のマイナンバーカードに相当する身分証ですが、これさえも中国では今、スマホ認証+顔認証によるデジタル化が進められています。

 

化粧品類はハンドクリームやリップクリームなど最小限のアイテムだけ。「ここ最近“断捨離”をしていて、極力モノを持たないようにしています」という彼女。日本で“断捨離”という言葉が流行した頃から中国でも注目され始めました。「豊かな時代で鈍感になってしまった精神を研ぎ澄まし、不必要な事物は切り捨て、執着せずに大事なものだけを残そうと心掛けています」と、考え方から持ち歩くバッグに至るまで“断捨離”を実践しているそうです。