中国化粧品市場攻略の必須知識 『2020年中国化粧品マーケティング白書』を読む
【今回はトレンドExpressのサービスのご紹介です】
現在、消費市場は世界的にもコロナ禍によって少なからぬ打撃を受けている。日本の企業はこの未曽有の災害の中で、日本国内および海外の市場も開拓し、収益を伸ばしていく必要に駆られている。
その中で重要視されているのが中国であるが、その市場状況は絶えず変化を続けており、その全体像の把握は難しい。
こうした中国化粧品市場を把握するため、トレンドExpressがSNS分析を含めた自社の調査ノウハウを活用して発行したのが『2020年中国化粧品マーケティング白書』(以下:白書)である。
今回はその白書から気になるパートを紹介していこう。
世界的なコロナ禍、中国の化粧品消費はどう動いた?
知っての通り、中国もこの新型コロナウイルスの打撃を深く受けた国である。
中国政府が毎月発表している消費指標である社会消費品小売総額を見てみると、2020年の第1四半期は前年比を下回っていることが見て取れる。
特に3月までは前年比で-14.1%、-11%と前年に比べて化粧品消費が大きく落ち込んでいることが見て取れる。
しかし、「婦女節(天猫女王節)」を含む3月には外出規制も解禁されたこともあり、消費はプラスに転じ、リベンジ消費も相まってか「618」を含む6月には前年比20%増、ダブルイレブンを含む11月にはなんと前年比で32.3%増という伸びを見せている。
終わってみれば、2020年化粧品類小売総額は約3400億元と前年比13.4%の増加をとなった。
【グラフ】2020年化粧品小売額各月の前年比
出所:中国統計局の公開データをもとに中国トレンドExpressで整理
【グラフ】直近3年の社会消費品小売総額化粧品類の小売額推移(単位:億元)
出所:中国統計局の公開データをもとに中国トレンドExpressで整理
ニュースで見るように欧米においてはワクチンの投入が始まったとはいえ、いまだに新型コロナウイルスの悪影響から脱し切れておらず、経済の立て直しが課題となっている。
それに比して中国の化粧品消費は昨年を超える状況となっている。
自然、国を問わず、化粧品ブランドは中国市場に対し期待をかけ、市場戦略を強化。欧米系、日系、中国系が合い混ざった市場であり、トレンドExpressの濵野智成社長はその模様を「まさしく戦国時代」と語るほどである。
存在感を増す中国ブランドと攻める欧米ブランド~T-Mall流通額から見る
『白書』の天猫のスキンケアカテゴリー流通金額のブランドシェアをみると、トップ2はLOREAL、SK-Ⅱが占めているものの、それに続く中国ブランドの躍進が目立つ。「一葉子」、「玉澤」、「WINONA」等は、19年9月と比較すると20年4月にはシェアを大きく伸長させており、それ以外でもランキングの多くが中国ブランドに占められている状況が見えてきた。
メイクアップカテゴリーを見てみると、中国ブランドの強さが更に顕著である。
上位は「完美日記」、「花西子」など中国ブランド躍進の象徴とも言える有名ブランドが並ぶ。しかしながら、その他の様々な中国ブランドが相対的にシェアを伸ばしており、トップ2ブランドのシェアを侵食し始めている。
メイクアップ市場は中国ブランド同士の激しいシェア争いが続いているのである。
さらにスキンケア、メイクアップ各15ブランドの流通額シェアを国別に整理してみると、スキンケアにおいては中国ブランドがシェアの6割を占めており、メイクアップでも50%以上と、高い比率を見せていることがわかる。
出所:『2020年中国化粧品マーケティング白書』より
その市場にあって中国企業はもちろんのこと、欧米のハイステージブランドもその手を緩めることなく、年間を通じて様々なプロモーションを展開。マーケティングにおいては守りよりも攻めに力を注いでいる。
出所:『2020年中国化粧品マーケティング白書』より
まさに激しいマーケティングの「打ち合い」が繰り広げられているわけである。
トップバイヤーを組み込んだ戦略策定が迫られる対中国市場
新型コロナウイルスの蔓延によって大きな打撃を受けた市場が「インバウンド」業界である。
業界における最大の消費層である中国からの感顧客が実質的に消失したことで、インバウンド市場をターゲットとしていたブランドは大きな転換を迫られることとなった。
そのなかで存在価値が注目されるのが中国で幅広く浸透しているCtoCチャネルであり、その担い手となっている「代購(ソーシャルバイヤー)」である。
『白書』では在日、在中双方で、年商1億円を超えるトップクラスのソーシャルバイヤーにアンケートを実施。日系ブランドへの期待を聞いている。
それによると、日中双方のトップバイヤーが「日本ブランドの需要は増加傾向にある」としている。
特に日本在住のソーシャルバイヤーは「渡航規制で日本への観光旅行ができなくなったため、日本でしか売られていない商品のニーズが高まっている」という。
出所:『2020年中国化粧品マーケティング白書』より
ただ、中国在住のバイヤーに話を聞くと「欧米ブランドに比べ、日本ブランドは低調だという印象」、「韓国ブランドへの流出」といった声が聞かれ、中国国内のマーケティング領域において他国に押され気味ともとれる状況が聞かれている。
こうしたソーシャルバイヤーについて濵野社長は「その活用の価値は、ブランドで投資できる直接的広告効果のレバレッジが最大化されることにある」という。
ソーシャルバイヤーを単純な販売者としてだけではなく、「ブランドのアンバサダーとして、しっかり良好な関係を構築して、自社のインフルエンサーとして抱え込むこと」(濵野社長)が必要なのである。
中国では、パワーを持つバイヤーのC店舗を淘宝網内でコントロールするMaaM(Marketplace as a Media)戦略が主流になりつつある。
これは淘宝網をメディアとして捉えて、ブランドクリエイティブや価格コントロールを行い、結果認知やブランド価値を高める戦略である。
そこで日本企業にとって重要なのは、これまで各々で活動していたソーシャルバイヤーたちを組織し、ブランドが上手にコントロールすること。「戦略的に手を打たなければ、勝手に広がってしまう有象無象集団として、事業の阻害要因にもなり得てしまう」と濵野社長は注意を喚起する。
ブランドが戦略的に活用することで、ソーシャルバイヤーが新たなブランド価値を作り出す存在として機能できるのである。
今、中国ではライブコマースが大きく展開されているが、それによる「LTVの食いつぶし」が課題となっている。
同時に注目の大型商戦も、戦い方を誤ると安売りの消耗戦に陥り、ブランド価値を毀損し続けるマーケティングに成り下がる。
変化を続けながらもいまだ課題の多い中国のマーケティング、特に化粧品領域のマーケティングに関して濵野社長は「ブランドの本質的価値をユーザーに理解してもらい、本当の意味でのファンを獲得するブランド経済圏づくりが、重要なマーケティング戦略の根幹になる」と強調する。
中国化粧品マーケティング業界をしっかりと把握しておくことの重要度がより高まっているといえるだろう。
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