越境ECシリーズ(2)この二年の変遷を映し出すデータをどこよりも早くチェック!「中国公式統計による2017年上半期ECレポート」
2017年も7月を過ぎ、上半期分の指標が次々に公表されています。さて今回は中国社会科学院と中央電視台が共同で発表した、2017年上半期の「中国電子商務半年報(2017)」(以下『レポート』と表記)の内容を紹介いたします。越境ECに特化したレポートではありませんが、中国のEC市場全体の、消費者の冷めやらぬ購買欲について感じ取れるのではないでしょうか。
「中国電子商務半年報(2017)」とは
レポートは「半年」という題名を冠していますが、この半年は2017年上半期から1か月前にずれた2016年12月から2017年5月までの時期のデータをベースとして作成されています。ほぼ2017年の上半期をカバーし、中国の公式統計でもあるので、中国EC分野における最新の、そして最重要指標の一つと言えそうです。
参考:中国电子商务半年报(2017) 中国語
※以下、ランキングは上記レポートより引用、編集部にて日本語に翻訳。
2017年上半期の中国ECの全体の動向をおさえるために覚えておくべきは、以下の3トピックではないでしょうか。
- インターネット上の小売額の総量が記録更新、「社会商品小売総額」中に占めるECの比重が更に増加した
- 2016年12月~2017年5月、インターネット上の小売総額は3兆229億元に到達、初めて半年内で3兆元を突破した
- 前年同期比は35.3%の伸び率となり、中国のEC小売総額の伸び率は同期間における最高記録となった
EC市場の成長は絶好調であり、消費全体の中に占める割合は日々高くなっているようです。では具体的に売り上げが伸びている商品はどういったものなのでしょうか?
商品カテゴリー別に成長率のランキング、小売額別のランキングをご紹介したいと思います。
前年比伸び率トップは「医療保健(ヘルスケア)」
本レポートでは、「医療保健(ヘルスケア)」の商品カテゴリーが伸び率の1位と報告されています。日本にいる中国人観光客が薬局で目薬等を大量に購入していくことはよく知られていますが、こうしたインバウンド市場の動向はECでの売れ行きとも重なっているのでしょうか。
ランキングでは続いて2位が「本・音楽・映像」、3位が「スポーツ・アウトドア」となっています。
順位 | 小売額前年比伸び率トップ10商品カテゴリー |
---|---|
1 | 医療保健(ヘルスケア) |
2 | 本・音楽・映像 |
3 | スポーツ・アウトドア |
4 | 服・下着/アクセサリー |
5 | 家電 |
6 | 家用繊維製品 |
7 | 靴・帽子・鞄 |
8 | 食品 |
9 | 化粧品/パーソナルケア |
10 | 赤ちゃん用玩具 |
同じくレポートによれば、こうした一連の結果は中国の消費の形態が、「衣食」→「家と交通」→「健康促進、生活の楽しみ」という高度なものに変化してきている兆候として捉えられているようです。
「健康促進」や「生活の楽しみ」という過ごす時間の質の向上にこれからの中国人消費者の需要が高まるとすれば、「一歩先の商品の安全性・信頼性」が売りの日本の製造業にとってはチャンスとなるのではないでしょうか。
小売額でトップに躍り出るは「服・下着/アクセサリー」
次に小売額(市場シェア)のランキングです。
順位 | 2015年 小売シェアトップ10 |
2016年 小売シェアトップ10 |
2017年上半期 小売シェアトップ10 |
---|---|---|---|
1 | 携帯電話/パソコン | 携帯電話/パソコン | 服・下着/アクセサリー |
2 | 服・下着/アクセサリー | 服・下着/アクセサリー | 家電 |
3 | 家電 | 家電 | 携帯電話/パソコン |
4 | スポーツ・アウトドア | スポーツ・アウトドア | スポーツ・アウトドア |
5 | 家具・建材 | 家具・建材 | 食品 |
6 | 靴・帽子・鞄 | 家用繊維製品 | 医療保健(ヘルスケア) |
7 | 家用繊維製品 | 食品 | 家具・建材 |
8 | 食品 | 医療保健(ヘルスケア) | 家用繊維製品 |
9 | 医療保健(ヘルスケア) | 靴・帽子・鞄 | 靴・帽子・鞄 |
10 | 宝石/腕時計・眼鏡 | 本・音楽・映像 | 本・音楽・映像 |
小売額では「服・下着/アクセサリー」が1位になっています。レポートの分析によれば、服・下着/アクセサリーが売り上げを伸ばしてきたことは、「3C産品」(家電、パソコン等)に留まらず、日用品の消費においてもECが存在感を強めてきたことを意味するそうです。
インバウンド需要との関連性と小売額で伸びる「食品」にも注目
食品から下着に至るまで、ECが「日用品購買の場」としても常識化してきたことがこのレポートでもはっきりと示されたといえるのではないでしょうか。ECとインバウンド市場での消費に相関性があるとすれば、今後インバウンドでは衣類や下着といったマーケットで中国人消費者に訴求することも有効な一手となるのかもしれません。
見てきたように、中国のEC市場は次第に成熟し、売り上げランキングの品目にも徐々に変化がみられています。小売額では前年と比べ、「食品」が「家具・建材」を初めて抜き去り5位に上昇しています。昨年はEC大手が食品大手と提携するといった動向もあり、今後必見の分野となるかもしれません。
何かにつけ変化のスピードの速い中国では、今後はもしかすると、「え?こんなものまでインターネットで買うの?」というものがECでの売り上げを伸ばしていくのかもしれません。変化のドラスティックさでも目の離せない分野となりそうです。
▼引き続きレポートより注目トピックをお届けします! ぜひご覧ください
越境ECシリーズ(3) 近日公開