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【特集】キャッシュレス時代を読み解く!中国モバイル決済基礎&最新事情(3) ~キャッシュレスが生み出す新たな店舗の形~

キャッシュレス時代の中国でのモバイル決済の広まりをお伝えしてきましたが、いつも「トライアンドエラー」の中国ではすでにその先の技術が市場に登場し始めています。

先週、日本のメディアでも中国の無人コンビニや「タオカフェ」についての報道を目にした方も多いのではないでしょうか。それぞれどんなシステム、試みなのでしょうか? 現地報道から情報を集めてみました。

※記事中の人民元は1元=16.5円で換算

「スタッフレス」時代の到来

無人コンビニ「缤果盒子」

無人コンビニサービスは「缤果盒子(BingoBox)」の名称で、OtoOで有名な「缤果フルーツ」により開始されました。24時間営業で、中型と大型のコンテナ型の店舗(Box)を商品のラインナップに揃えています。

入店、利用するためには、QRコードを読み取り、BinguoBoxのパブリックアカウントをフォロー、携帯電話の番号を入力し届いたコードを入力します。これで利用者の登録は完了です。二回目以降はQRコードを読み取るだけで入場できます。支払いはWeChatPay、アリペイ、そして専用のアプリが利用可能で、出店前にレジで提示されるQRコードを読み取り支払いをします。商品を購入しなかった場合は出店用のQRコードを読み取れば退出可能です。

報道によれば、昨年8月にはすでに広東省中山地区でサービスを開始していたそうですが、今年6月にふたたび上海に登場しました。CEOの陳氏によれば、BinguoBoxのコストは一般の有人コンビニの八分の一、家賃や光熱費を含め、ひと月のランニングコストは2,500元(約41,250円!)以下におさまるそうです。コンテナ型の店舗設営なので、設営費用や賃料といった面でコストダウンを図っていることが考えられます。

BinguoBoxは昨年の夏以降すでに数万のユーザーに利用され、盗難事件はゼロ件、リピート率は85%に上るとの公式資料もあり、この一年で5,000件の出店を目指すそうです。

アリババグループの「タオカフェ」

「タオカフェ」は、「天猫」「タオバオ」を運営するアリババが杭州市で開催したイベントにおいて、次世代キャッシュレス店舗のコンセプトカフェとして開設した店舗です。コンセプトカフェのためまだ実店舗は存在しません。

カフェへの入場では「モバイルタオバオ」のアプリを起動し、QRコードを読み取り、電子チケットの発券を受けます。ゲートにこのチケットをかざし入場した後は、支払いまでスマホを触る必要がありません。具体的にはどのような構想なのでしょうか?

この店舗では、店内で選んだ商品を「支払いゲート」までもっていくと、目の前のタブレットのパネルで顔面を認証し、そのまま支払いまで完了する仕組みです。「商品を選んで持って、スマホに触れることなくその場を離れられる」ということです。

また、カフェではコーヒーを店員に注文すると、システムが顔面と音声から個人を識別し、注文を完了させます。店員によるオーダー確認ののち、本人のアリペイから自動的に支払いが完了する仕組みになっています。こちらでも同じくスマホに触れる必要がありません。設置されたカメラがとらえた来客者がスクリーンに映し出され、残りの待ち時間やまだオーダーが完了していないなど、ステイタスが表示されるサービスもあります。

新浪ニュースに掲載のレポートによると、イベント当日の朝9時に店へ行ったところ、すでに長蛇の列だったそうです。人々の関心の高さがうかがえます。また顔面の認証の際には専用のモニターに向き合う必要はなく、通常の行動の中で個人を識別できる技術が採用されたカメラが設置されているそうです。記事では、この技術の開発は天猫とアントフィナンシャルのIoTのグループが行っていると伝えられています。

まとめ

キャッシュレス化の拡大、個人を識別できるテクノロジーの進化に伴い、店頭での支払いにおける無人化が実現しつつあることがわかりました。

ただしこういった「無人店舗」について、インターネット上には「人がいないならネットショッピングと何が違うの?」という意見も見られるそうで、時間の経過とともにユーザーに受け入れられるのかどうかの検証が待たれます。

「2017年中国コンビニ発展レポート」によれば2016年にコンビニの増加率は13%、市場規模は1300億元(2兆1450億円)となっており、中国のネットユーザーの中には中国のコンビニ市場は今後発展の見込める分野だとの意見を持つ人もいます。

実際に、BinguoBoxは7月頭に1億元(16.5億円)の融資を得ており、同じく無人コンビニの「F5未来商店」も新工場の開設のための3000万元(約5億円)の融資を調達することを発表しています。

「コンビニ」とういう購買チャネルの拡大、そしてもしそこに「無人化」が引き起こす消費の加速が起これば、新たな消費トレンドが生まれる可能性もあるのではないでしょうか。「手にしてそのまま出られる」という便利さがさらなる消費の拡大をもたらすのか、「店員レス」の店舗が今後どの地域、所得層に広がっていくのか、要注目となりそうです。

参考:
缤果盒子公式サイト 中国語
CCTV2財経チャンネル無人コンビニのBinggguoBoxに「いいね」:無人販売の時代がやってくる(出典:財経網産経) 中国語
BinguoBoxを見てわかる、ブラックテクノロジーとは何か?!(出典:新浪科技) 中国語
アリババの無人スーパー「タオカフェ」(出典:莞訊網) 中国語

アリババ「タオカフェ」初のお披露目! 無人コンビニのビッグバンがやってくる(出典:新浪科技) 中国語
2017年―2021年中国コンビニマーケット消費規模分析(出典:中国投資諮詢網) 中国語

アリババ、一歩前進した無人店舗の模擬店を公開(出典:日経テクノロジー)
アリババグループ「淘カフェ(Tao Cafe)」は顔認証で自動決済ができる近未来のキャッシュレス店舗(出典:サーチナ)
電子決済連携で省スペースでも開業できる無人コンビニ(出典:YahooNews)


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