【セミナーレポート】国慶節需要を逃さない!(3)訪日中国人の目的は「コト消費の中のモノ消費」
さて続いては国慶節期間の「コト消費」の傾向について、昨年と一昨年のデータ、そして最新のクチコミデータから振り返りと予測をしてみたいと思います。
行き先の決め手は「歴史的建造物」から「各自が感じる各地の魅力」へ
まずは昨年2016年の振り返りです。国慶節では関西人気が加速しました。
実際に行ったのは東京であるケースも多いのですが、行きたい都市として京都・奈良・大阪を挙げるクチコミが増加となりました。この地域には清水寺や大阪城といった日本の歴史的建造物が存在しており、これらへの注目が集まっていることがクチコミ増加の一因となっています。
今年、2017年はどうなるのでしょうか。都道府県別の「急上昇ランキング」に目を向けると、佐賀県、富山県、宮城県、埼玉県、群馬県などが上位に挙がっています。クチコミ上にも、地方への分散化が進んでいる現実が表れているのでしょう。
多様化が進み、「どこ」という一点ピンポイントの需要の傾向が読みにくい一方で、地方にはチャンスが増えているというのが現実です。地方の小売りや飲食店であれば品切れを起こさないようあらかじめ備えておくといったことが大切になってきます。予想外の規模の観光客が訪れて、購入の希望をいただいたのに売ることができない、という事態を防ぐ観点からです。
一線都市とそれ以外からの旅行客、日本旅行ではどんなトレンドが考えられる?
訪日中国人観光客の旅行目的にはどのような要素が挙げられるのでしょうか。
一線都市での消費トレンド「コト消費の中のモノ消費」
まずは、中国の「一線都市」に着目してデータをご紹介します。
※一線都市とは、北京、上海、杭州、深圳の4都市を指し、行政区分ではなく、商業、市場、消費レベル、物流という視点から決定される区分けです。
参考:中国で5番目の「一線都市」になるのは杭州か蘇州か武漢か
微博のクチコミ件数をもとにしたデータによれば、2016年には「グルメ」を目的とする訪日中国人観光客が6割を越えていました。これが、2017年には「文化、体験」がそれぞれ約3割(合計6割)で、「グルメ」は約2割となりました。
また「買い物」は2016年には24%だったところ、2017年には13.4%となっています。
昨今、訪日中国人の旅行トレンドとして、「モノ消費からコト消費」への変化が指摘されています。ところが、このデータを見る限り、訪日中国人の「購買」に対する関心は実際のところそこまで薄れていないのではないかと考えることもできそうです。
この変化から導き出される仮説は何でしょうか? それは、今、訪日中国人が旅行先で期待するものは「コト消費の中のモノ消費」だ、という仮説です。
「コト消費の中のモノ消費」とは、具体的にどんなことか、「ウコンの力」を例に説明してみたいと思います
この商品を味わいたいと思って購入するのは一面的な「モノ消費」です。
ですが、この商品には「飲酒前に飲むことで酔いを緩和できる」という効能があります。「飲酒前、お酒の分解に役立つという『ウコンの力』を飲む」という「シチュエーションを含めた面白さ」を体験してもらうことが、「コト消費の中のモノ消費」です。体験(コト)とセットにして商品の魅力を打ち出すことで、さらに一歩踏み込んだ商品(モノ)の価値が生まれます。
商品の「味」や「効能」だけでなく、「シチュエーション」という価値、こんな魅力が、これからの訪日中国人に受け入れられるのではないでしょうか。その体験が目新しく、意外性があり、またフォロワーの羨望を集められるものであるのなら、SNSにアップされ、商品の情報が拡散されることが期待できることが容易に想像できると思います。
未知の商品、そして新鮮な体験は今後の「モノ消費」の重要なポイントです。「商品を手に入れたいから、買いたい」という欲求よりも「商品を使って●●をできるという事実をシェアしたいから、買いたい」という欲求を引き起こすコンセプトメイキングが、訪日中国人に選ばれるブランドとなるか否かの境目を作るでしょう。
新一線都市、二線都市の消費者像は?
一方で、新一線都市・二線都市居住者ではまだまだ買物需要が主となっています。一線都市同様に微博のクチコミ件数を集計、分類したところ、これらの都市ユーザーの日本旅行の目的(2017年)は「買い物」45.6%、「グルメ」37.5%、「文化」13.7%、「体験」3.2%となっています。「買い物」は特に2016年の35%から10ポイント強増加しました。
昨年、富裕層や所得の高い一線都市の居住者が流行を先取りして訪日し、「日本のこれはいい」と情報を拡散しており、今年に入り新一線都市・二線都市で実際の消費が先行していた情報に追い付いたところ、と言えるのかもしれません。
以上のデータからは、モノを売るメーカーや小売企業がターゲットとすべき中国人消費者の居住地は新一線都市、二線都市、ということが見えてきます。逆に、消費体験やコト消費に関わる企業は一線都市の居住者へ訴求していくことが必要となってくるのではないでしょうか。中国市場への進出では、居住都市によって好まれる消費トレンドに差異があることを認識することが重要です。
今注目の集まる「体験」は、クチコミランキングの上昇で読む
2017年7月時点の「●●したいランキング」を作ってみると、依然として1位は買い物、2位が温泉、3位が日本料理となっています。
ここでご紹介したいのが、昨年のまさに国慶節からランキング順位をアップさせた「ライトアップ(夜景)を見たい」です。
きっかけは、あるホテルが行った「夜景の見えるスポットをSNSで拡散してください」というキャンペーンでした。日本の夜景がSNS上で拡散され、「日本の夜景を見に行きたい」となり、今では夜景が来日の目的として挙げられるコンテンツとなったのです。宿泊施設やレジャー施設であれば、例えばこのランクアップの動きに合わせ、ライトアップの実施でこの高まっている需要を取り込むことができると言えるのではないでしょうか。
以上、国慶節の訪日中国人観光客の目的にクローズアップしてみました。
続く記事ではクロスバウンド対策の大前提について解説していきます。
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【セミナーレポート】国慶節需要を逃さない!(4)KOL施策では3つの落とし穴に注意