【セミナーレポート】国慶節需要を逃さない!(4)KOL施策では3つの落とし穴に注意
(3)では、国慶節の訪日中国人観光客のターゲット層のプロファイルを確認しました。本記事では中国とのクロスバウンドビジネスの大前提である認知拡大についてみていきます。
買われる大前提は「選択肢に入ること」
クロスバウンド対策の大前提として、これ自体は当然のことなのですが「知られないと買われない」「知られていないと選ばれない」ということがあります。
中国消費者行動の特徴の一つとして、初めて知った商品は検索エンジンで「どういう商品なのか」「成分はなにか」などを深く調べる、ということが挙げられます。国内に偽物が多いため、これは本物か、信頼性はあるのかということに非常に敏感だからです。同時に、「人気がない商品」は「偽物ではないか」と疑うのが定石です。
では、「よく知られていない商品」はどうでしょうか。知られていないのですから、そもそも検索もされず、買われもしません。つまり、知られていない商品が「たまたま買われる」ということはないのです。
これはどういうことかというと、これまで爆買いになった商品には、手に取られた際にはすでになにかしら名前や存在を知られていたということです。では、その「知られるきっかけ」とは何でしょうか?
実は、その「知られるきっかけ」が何であったかを把握していなかったことが、2016年に見られた爆買い終焉の一因でもあります。事業者側から売るための戦略を仕掛けていなかったため、なぜ売れたかの理由が分からず、結果としてヒットを長続きさせられせずに終わったと考えられます。
反対に言えば、「なぜ知られたのか」を把握し、名前や存在を「知られ続ける」構造を構築すれば、消費者の購入を維持できたかもしれないのです。認知獲得施策の重要性が理解できるのではないでしょうか。
認知拡大ではKOL施策の落とし穴に注意
中国人消費者の認知を獲得したのなら、次なるステップは認知拡大です。このフェーズにおける中国での有効な施策とはなんでしょうか? この問いに対して最も挙げられる回答はKOL(Key Opinion Leader)施策です。
KOL施策とは、有名ブロガーなどのインフルエンサーに紹介の依頼をするものです。この施策は中国国内では普及している手法で、その効果には今も多くのメーカーが期待を寄せています。
しかし、KOL施策には3つの落とし穴があります。順に確認してみましょう。
一過性の盛り上がりでファンが根付かない
1つめに「一過性のフロー情報で終わってしまう」面があります。瞬間最大風速が一瞬で大きなスピードを記録するように、盛り上がりを一点に集めるプロモーションには有効ですが、継続性はありません。インフルエンサーは一日にいくつもSNSに記事を投稿するので、商品の情報の露出後ほどなくして過去の投稿として埋もれてしまいます。
消費者の警戒心
2つめは「広告色が強く警戒されてしまう」ことです。ステルスマーケティングが多く存在していることは中国人消費者にとっては周知の事実です。それであっても良い商品と判断され購入意欲を高めることもありますが、場合によってはステルスマーケティングであることを引き金に消費者の関心が薄れることがあります。
新鮮さが薄れている
3つめには「手法が消費者に飽きられてしまっている」ことが挙げられます。中国国内では普及している施策であるがゆえに「また、この手の広告か」と思われてしまい、2つ目の例と同様消費者の関心が薄れてしまいます。
KOLをやって成功した例が多くある一方で、以上の3点を主な原因として、失敗した例も同じく多くあるのです。
では、成否を分けるポイントはどこでしょうか?
それは「KOLで情報を流すだけ」なのか「そうではない」ところにあるようです。次節で詳細を確認してみましょう。
3つの経路で消費者に届ける ~KOLと一次情報の位置づけ
以下の図のように、中国での情報発信の起点はWebメディア、企業サイト、ECサイト、SNSそしてKOLとなっています。この中で、情報の最上流に位置するものの一つがWebメディアです。
Webメディアから中国人消費者への情報伝達のパターンは以下の3パターンに分類されます。
- Webメディア→KOL→中国人消費者
- Webメディア→SNS→中国人消費者
- Webメディア→中国人消費者
KOLに情報を渡すことやSNSを運用し情報を発信していくことは確かに大事です。しかし、まず一次情報としてWebニュースやWeb媒体に挙がった記事がソーシャルメディア上に投稿されるケースが圧倒的に多いのです。
SNS上には写真や動画の投稿も多いですが、これらが集める注目は往々にして一瞬のものです。一方で、Web媒体上のニュースなどの一次情報は検索結果に残り続けるものであり、また、検索回数やWebページへのアクセス回数が増えるほどに検索順位が上がります。
これを考えてみたとき、重要なのは、「拡散されたい情報がWebメディアに一次情報として存在している」ということだと気づくのではないでしょうか。Webメディア上の記事がストック情報として、また一次情報として存在し続けることで、これをKOLが拡散し、SNSでも拡散し続けるのです。
またこのように拡散された情報は先に見た「KOL施策の3つの落とし穴」にはまる可能性がぐっと低くなります。広告色がないからこそ、消費者に抵抗なく受け入れられ、拡散されることが期待できます。また拡散により、Web掲載だけでは情報が届きにくい消費者にも届く可能性が広がります。拡散された情報を受け取った消費者が、ECサイトや実店舗に誘導されていく可能性もあるわけです。
例えば「ある商品が日本で人気」という情報をWebニュースで流すことができれば、訪日中国人、また訪日中国人の周囲にいる方の目にとまり、その情報の拡散が起きれば訪日旅行に関係ない中国人消費者の目に留まる可能性もあります。結果として売り上げの拡大に結び付くことも当然あり得るのではないでしょうか。
※ 企業サイトも一次情報となりますが、中国国内で企業サイトを維持することの煩雑さに加えて、KOLやインフルエンサーやSNSを介するのに比べると残念ながら商品者の目に触れることは期待しにくいものとなります。
ポイントは「消費者の必要とする情報なのかどうか」
それでは、Web媒体に情報を配信し続ければ売上につながるのかというと、そうはいかないのが市場です。まずは、商品を購入してくれる消費者のインサイト(心の中)を「発掘」することから始める必要があります。
「発掘」した後は、商品やサービスの特性に応じて、インターネット上で多くの注目を集め拡散を引き起こすキーワード(Buzzワード)を「抽出」し、その次にBuzzワードの効果を高めるメディアを「選定」することがポイントとなります。
シリーズ最後の1編となる続く記事では「発掘」「抽出」「選定」の具体例を紹介します。
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【セミナーレポート】国慶節需要を逃さない!(5)事例から見る「発掘」「抽出」「選定」