【セミナーレポート】国慶節需要を逃さない!(2)ターゲット層とこの時期に売れる商品の基礎&読み方
(1)では、中国ビジネスにおける商戦期としての国慶節の重要さについて確認しました。本編では国慶節の訪日中国人観光客のターゲット層と「モノ消費」に着目し、この二年の国慶節期間の人気商品と今年の傾向の読み方について解説していきたいと思います。
どんな人達が来ているのか?
中国の人口は約14億人、政府の公式なデータはありませんが、パスポートを持っているのは約1億人と言われています。昨年の2016年、来日した中国人観光客は約638万人でしたが、今後、パスポート保有者の増加に伴い訪日客も増加することが予想がされます。
居住エリア~著しく分散化が進む
訪日中国人の居住エリアには大きな変化が表れており、2015年は上海市が30%と多くを占めていましたが、2016年には著しく分散化が進みました。
分散化の理由は何でしょうか? 一つには中国の経済力の高まりを背景とした中流所得層の増加が挙げられます。海外旅行に行ける人達が増えたということです。
もう一つの理由としてあげられるのが、SNSでの情報発信・拡散です。一線都市に住む日本旅行のアーリーアダプターによる日本を賞賛するクチコミが中国国内に広がり、レイトマジョリティたる各地からの訪日客が増えたという事象が分散化を引き起こしています。
▼中国の各省のエリアや特徴については、「都市解説」シリーズで理解を深められます
中国・都市解説(1)浙江省(杭州市) ~賢く稼ぐ名勝地!大企業の本拠地は、上海に次ぐマーケットになるか?!~
中国・都市解説(2)四川省(成都市) ~激辛料理とパンダの先に存在する、8000万人の消費者~
中国・都市解説(3)山東省(済南市) ~無骨な男性と古代の思想家が支える裕福な沿海部~
性別、年代~今年の国慶節は家族連れが狙い目?
訪日旅行を好む方に性別で違いはあるのでしょうか? トレンドExpressのデータによれば、男性よりも女性がやや多いという実績があるものの、女性にフォーカスするほどには偏ってはいないようです。
続いて年代を見てみます。国慶節前の中秋節(旧暦に基づき制定される9~10月にある祝日)での訪日中国人観光客は25~34歳が半数を超えて若干年齢層が低めですが、国慶節は35~50歳が最も多く、やや年齢層は高くなっています。
2017年は中秋節と国慶節が一体化しているので、25~34歳を中心に幅広い層(年齢の高い層では家族連れ層)が来日するのではないでしょうか。
▼中国の季節ごとのイベントについてはこちらの記事からご確認いただけます
どんな物を買っているのか?
続いて過去二年の国慶節期間の訪日中国人の購買内容に着目して、データをご紹介したいと思います。
2015年は医薬品や化粧品、生活用品が多く買われていました。医薬品については日本から中国への輸出が容易ではなく、日本でしか買えないといった動機づけが存在しているのかもしれません。
2016年の特徴は、それまで人気だったデジタル製品がランキングから消えたことです。高額商品にかかる関税が上げられて高額商品を買いにくくなり、「日本で買えば安く買える」という動機づけがなくなったことが関係しているでしょう。
それでは2016年にデジタル製品の代わりに注目となったのはどういったカテゴリの商品でしょうか。それは「ベビー・キッズ用品」「一般消費財」(生活雑貨、消耗品など)、「医薬品・化粧品」です。
この流れは2017年も継続しており、今年の国慶節期間でも人気となることが予想されます。また今年も変わらず「体につける・触れる・入れるものは日本製がいい」という空気が中国市場にはあるので、食品、医薬品、化粧水などが人気となるでしょう。
「ベビー・キッズ用品」は、昨年と一昨年の国慶節訪日旅行の「買ったもの」ランキングを比較すると、大幅にランクアップしました。一人っ子政策が終わり、二人っ子政策になったことが影響していると考えることができるでしょう。今後もしばらく人気のカテゴリとなりそうです。
また高額商品が買えなくなったことは、安価な一般消費財についてのクチコミ件数の増加にもつながっています。実際のクチコミの内容を見てみれば、日本の一般消費財を「中国にはない、おもしろい商品が多い」といった内容の多さに気づきます。クチコミから訴求ポイントが見えてくる実例ですね。
「買いたい」ランキングから国慶節で買われる商品を先読み!
国慶節期間(10月初旬)に特徴的な商品需要とは何でしょうか? 当然ですが秋冬の季節性商品はこの時期に需要が増してきます。例えば、食欲の秋へ向けての胃薬的商品の「満腹30倍」、秋・冬服(子供服も含む)があげられます。食欲の秋で食べすぎた場合に、次の食事量を減らして調整することがあるのではないでしょうか。こういったシチュエーションを想像できれば、空腹対策として利用できるダイエット商品の「満腹30倍」が秋の季節商品となりうることも理解できると思います。
そのほか、売れそうな商品を先読みする方法はあるのでしょうか?
トレンドExpressの提供するオンラインツールトレンドViewerでのクチコミランキングのうち、「日本で買いたい」のランキング順位が急上昇している商品は要注目です。特に短期間に上昇しているアイテムが人気となる傾向があります。
▼クチコミランキング順位が上昇している商品の例
その理由は訪日中国人がSNSを利用する心理を考えると腑に落ちます。まだあまり有名ではない商品をSNSで公開することは注目を集めることができるので、「注目を集めたい」という欲求を満たすことになります。「注目を集めたい」というのは中国人がSNSを利用する動機の上位の一つです。そのため、ランキング順位がトップなものだけではなく、「上昇している」商品が買われやすくなると考えられるのです。
クチコミが増加しつつある商品が購買欲をそそるのはもちろんですが、こういった中国人消費者独特の心理を前提として把握しておくことが中国向けマーケティングでは重要です。
▼中国人がSNSを利用する心理とは…?
【特集】中国SNS情報最新版(2)SNSは22時、ライブ動画は日に4回、視聴のピークがある!
同じような理由で、ランキングに初登場している商品も人気が拡大する傾向にあります。例えば日本でしか買えない横山製薬のイボコロリなどが国慶節では売れるのではないでしょうか。
さて続く(3)では、国慶節期間の「コト消費」に着目してデータを読んでいきたいと思います。
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【セミナーレポート】国慶節需要を逃さない!(3)訪日中国人の目的は「コト消費の中のモノ消費」