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大人の絵本ブーム到来?!拡大する市場と海外絵本への注目度

ECでも人気、海外の絵本

今年に入り、日本を代表する絵本作家・佐野洋子著の『100万回生きた猫』が中国でミリオンセラーになったと報じられました。本のタイトルにかけ「100万回読んでも飽きることが無い本」と称賛され、中国の児童文学作家からも、「極めて簡単なストーリーの中に奥深さがあり、何回読んでも新しい感動を生む」と高い評価を受けています。日本の絵本は注目を集めているようで、取扱い絵本の8割が日本人作家という専門店もあるとのこと。

また、中国のネット通販サイト、京東(jd.com)を覗いてみると、絵本の総合売上上位10冊のうち、9冊が翻訳作品となっています。絵本を始めとする、外国の児童書に対する期待は非常に高いといえます。
(※ここを最新の情報に更新…のちほど山浦で作業。)

本編では、日本の絵本への注目度について紹介するともに、注目を集める理由やブームの兆しについて探ってみたいと思います。

絵本市場の拡大、キーワードは「温かみ」「感動」

中国では、一人っ子政策が廃止されて二人目の子どもを持てるようになったことから、早期教育に関心を寄せる家庭も多く、幼児・児童向け絵本を子どもに買い与える親が増えているようです。そうした背景から市場は急激に拡大しており、絵本はこの5~6年で毎年売り上げが2~5割の割合で伸びていると報じられています。2016年の中国出版マーケットについてGerman book office 北京支局が報告したところでは、2016年のオンライン上での本の売買のうち、実に21.9%が絵本だったとのことです。

日本の絵本が中国へ進出していったのはおよそ10年前ですが、当初は子どもに漢字を学ばせることを期待している中国の文化背景から、文字数の少ない日本の絵本に対して「どうしてこんなに空白が多いの?」「文字も少ない・・・」という反応や、「高い(相場の2倍ほど)」という反応があったそうです。しかし日本のアニメの影響を受けた20~30代が子供をもつようになり、日本の絵本に親近感を持つようになっていった、とも言われています。

また、独身者が自らのために絵本を手に取るケースも増えつつあるようです。新浪微博を覗いてみると、仕事で生じるストレスや悩みなどの中に身を置いている女性が、自分を落ち着かせたい、と温かみのある大人向けの癒し系絵本推薦を求めるといった投稿が見られます。ちなみに、同質問への回答のおよそ7割が外国の絵本・児童書で、日本の作品で言えば、『窓際のトットちゃん』を推す声が複数あったようです。

こういった絵本に対する投稿を見ていくと、国に関係なく支持が高い絵本にかなりの確率で共通する評価があります。それは「温かみ」、「感動」です。温かみを感じる絵、内容に感動するという意見が多いようです。また、「絵そのものの可愛さに心奪われた」というような、絵そのものへの高評価もあるようです。絵本を手に取った理由・きっかけは様々ですが、前出の女性のように仕事のストレスを理由に挙げる人もいれば、子どものために絵本を買い与えるため、自分がまず目を通す際、その繊細な感情描写に涙し、感動して温かい気持ちになったことで、「良い本に年齢制限なんてない」と確信するようになったという女性の意見も見られました。

政府の制限は絵本ブームに歯止めをかけるのか?

さて、こうした一連の絵本ブームの影響の大きさを決定づける出来事が今春起こりました。サウスチャイナ・モーニング・ポストや、ガーディアン紙、その他ニューヨーク・タイムズ等大手新聞各社が伝えたところによると、この1年で、中国国内での外国の絵本の出版が劇的に制限されているそうです。「諸外国の社会・政治思想の流入を阻止すべく、中国国内の出版社は、外国の絵本の扱いについて取扱量を減らすか、取扱そのものを止めなければならない、という通達を政府から受けとった」とも報じられており、規制をかける動きが出るほど、中国国内における絵本市場の発展の速度、及びその影響力の強さがうかがえます。

記事によれば、これに付随するように、中国最大のECプラットフォームであるタオバオが3月10日に「より安心・安全なオンラインショッピング環境確立のために、海外出版のすべての本のセールを行うという公式声明を発表しています。また先ほどお伝えしたとおり、相変わらずJINDONでも海外の絵本は人気を維持しているようです。
またこういった規制がある中での、『100万回生きた猫』ミリオンセラーですから、これからも注目度は高まっていくのではないでしょうか。

今や、日本を抜いた過労死大国とも評される中国。絵本に対する期待は、何も早期教育に対する理由だけではありません。新浪微博を見ると、絵本を手に取るのは女性の方が多いようですが、歳を重ねる中でどこかに無くしてきた天真さ、好奇心、想像力を絵本の中に求める中国の人々は、今後もますます、シンプルで読み手の想像力をかきたててくれる日本の絵本を求めていくのではないでしょうか。

参考:
中国で人気拡大中 日本の絵本(出典:ブログ「日暮しの種」)
アニメの次は絵本?!中国で日本の絵本がブームに(出典:マガジンサミット)
日本の絵本が中国人の心を打つ!「100万回生きたねこ」、中国でミリオンセラーに―中国メディア(出典:レコードチャイナ)
中国における絵本の翻訳出版の状況(出典:国立国会図書館 国際子ども図書館WEBサイト)
Top 5 of Popular Children’s Books in China after Crackdown on Foreign Storybooks(出典:What’s on weibo) 

日本に負けているのはアニメや漫画だけではない!絵本でも日本に完敗=取扱い絵本の8割が日本人作家という専門店も―中国(出典:レコードチャイナ)

※出典先の記事タイトルはのちほど山浦が入れます…
豆辨小姐
https://www.douban.com/group/topic/49667024/
成年人看童书是什么感觉?
https://www.zhihu.com/question/56022066
推荐书-9本适合成年人阅读的童话书
http://www.tuijianshu.net/article-5238-1.html
The guardian:
https://www.theguardian.com/world/2017/mar/13/peppa-pig-pulled-china-cracks-down-on-foreign-childrens-books
京東
https://list.jd.com/list.html?cat=1713,3263,4761&page=1&trans=1&JL=4_1_0#J_main
人民網
http://j.people.com.cn/94475/7995043.html
为什么成人也读童书
http://book.ifeng.com/a/20170509/53124_0.shtml