中国トレンドExpress

越境ECで爆売れ!トレインの「アームカバー」の陣(1)~「女の欲望」に火をつけた成功事例~

中国トレンドExpressで月に一度開催している中国向けマーケティングセミナー。9月は「越境ECインバウンドでアームカバーが爆売れ!-中国人の「女の欲望」に火をつけたブランディング施策の極意とは-」を開催しました。

当日はゲストに株式会社トレイン代表取締役の長谷川康之氏をお迎えして、約1時間半のパネルディスカッション形式で、中国越境EC市場で大ヒットとなった「女の欲望」ブランドの「COOL&UVアームカバー」シリーズの成功例をご紹介しました。

本シリーズでは、会員の皆様限定で内容を特別にレポート形式でお届けします。本成功例から見えてくる、中国市場との付き合い方、そして売り上げ向上のためのPR施策についてここだけの情報がもりだくさんです。ぜひ全編お目通しください。

今回のセミナーはトレンドExpressの代表取締役である濱野が司会を務めさせていただきました。冒頭1節では、同日濱野がプレゼンしました「これからの日本市場、中国市場」についての簡単なまとめ、その後トレインの歴史や今回の施策の概要と結果をご紹介します。

想定されるリスクを乗り越える施策を

日本はこれからの人口減少に伴う内需縮小が見込まれています。海外からの需要を取り込み、経済活動を活性化させていくことは国としての課題でもあります。

しかし現状では、日本国内の内需が安定していることから、多くの日本企業の広告予算、事業の優先順位等が未だ国内中心になっています。ですが今後、世界を相手にする日がいやおうなしにやってきます。その日に備え、外需取り込みへシフトするための経験が求められています。

そんな中、これからもますます需要が拡大していくであろうと目されているのが、中国です。

日本の10倍もの人口を抱え、経済成長著しいこの大国に世界中の関心が向けられている今、日本企業としても手をこまねいているわけにはいきません。欧米に比べて地理的に近いといった地の利や、日本文化がすでに消費者から受け入れられている点を活かして、戦略的にアプローチしていく必要があります。

特にECサイト市場は、諸外国と比べても中国市場が規模も成長性も圧倒的大差を誇っており、日本からの中国向けEC市場も急速な成長が見込まれています。(下図)

 

 諸外国のeコマース市場の規模と成長性

諸外国のeコマース市場の規模と成長性

出典:総務省「IoT時代におけるICT産業の構造分析とICTによる経済成長への多面的貢献の検証に関する調査研究(平成28年)」

 

日本からの中国向け越境EC市場(物販)

日本からの中国向け越境EC市場(物販)

出典:富士経済「中国向け越境EC市場の実態と今後 2016」

 

しかしその市場の巨大さ、また日本との種々の相違点などから、実際に中国市場を手中に収めることは簡単ではなく、早々に撤退、などの失敗例があることも事実です。

時に難攻不落の体を見せる中国市場ですが、モノに出来る一手を打ち出したメーカー、それが株式会社トレインであり、中国人消費者の心をつかんだのが同社の『女の欲望 COOL&UVアームカバー』です。

同商品は中国の越境ECサイトで販売後、爆発的なヒットを記録し、在庫30万個が完売。「売り切れ大王」とあだ名がつけられるほどのブームを巻き起こしました。

株式会社トレインの歩みと海外市場での存在感

それではお待ちかねの、今回の事例の主役、株式会社トレイン(以下、トレイン)のこれまでの歩みをご紹介します。

同社は創業以来、広告・PR企業として『ルイ・ヴィトン』など大手ブランドの広告を手掛けていました。

2000年には初の自社開発商品として、当時日本にはまだなかった太もも丈のストッキング『ステイフィット』をリリース。これが大ヒット商品となり、その後もストッキング、アームカバーなどを展開した『女の欲望シリーズ』各商品、『女優ミラー』等、次々と革新的な商品を生み出し、人気を博しています。

『女の欲望シリーズ』は、株式会社トレインの主力商品として、2007年より発足した自社ブランドです。「スタイルよく見せたい」という女性の欲望をかなえるための補正インナー、レッグウェアを中心に150種以上の商品を展開しています。

シリーズ売り上げ累計も2015年には1,000億円を突破、日本人のみならず、訪日観光客のインバウンド需要も近年増加しています。特に2014年以降、中国のSNS微博上でクチコミが掲載され、タイツなどのレッグウェアを中心に、おしゃれなパッケージデザイン、着圧・防寒素材など中国にはまだない高機能性とファッション性が高く評価され、爆買いの対象となりました。

中国ではレッグウェアとしてはATSUGIのタイツと並んで国内トップシェアを誇り、『女の欲望』というブランドネームはすでに広く認知されています。

同シリーズの商品として2011年に販売されたアームカバーは、年々売り上げ数量が増加。東急ハンズ・ロフトではアームカバー部門の売り上げは4年連続1位となっています。日本のみならず、海外への出荷量も2016年には前年比倍増しており、日本での人気が海外市場にも反映されています。

現在は「モノトーンの商品をカラーに」をモットーに、様々なファッション雑貨の企画・販売業務を行っています。

ポイントは「ビッグデータ分析」「メディア選定」「ECへのリンク」

今回トレインが中国市場に仕掛けた施策は、中国のウェブ上への情報拡散を狙ったPR施策です。以下の流れを実施しました。

 

  • ソーシャルビッグデータの調査、分析

まずは中国のSNS等を調査。市場でどのような欲求が高まっているのかを事前にリサーチします。これによって消費者に刺さるプロモーションのインサイトを発掘します。調査・分析の結果に基づき、拡散を狙える記事・PRコンテンツを制作しました。

 

  • 記事の作成

SNS等のソーシャルビッグデータを分析した結果、そこに現れたセールスポイントをニュース記事に落とし込みます。

 

  • メディアでの拡散

商品を欲する消費者層にダイレクトに届くメディアを選定して、記事・コンテンツを最大限に拡散、知名度を上げていきます。

 

  • 効果測定

実施後は、プロモーションの効果測定を行い、次の販売戦略に活かせるマーケティング資料を作成します。

さらに記事内ではECサイト『京東』への誘導リンクを載せ、購買意欲の喚起だけでなく需要を取りこぼさず購入につなげることができました。

「爆売れ」までの軌跡

2017年4月17日の第1回配信開始時点では『捜狐』、『新浪』や、『中国化粧品網』といった、代表的な15のメディアにアプローチしての掲載でした。代表的なサイトでの掲載ゆえ、他のウェブメディアもその記事を転載します。PV数は約5,400万を数えました。

このニュース記事施策は合計3回行われ、全部で45のメディアに掲載を依頼、225ものメディアにて転載され、この結果、総PV数は1億6,000万にまで達しました。

また、該当商品について言及しているSNS上のクチコミについて、閲覧数の多い上位10投稿の合計閲覧数は、施策実施前の約10万件から、実施直後の4月には41万件、5月には更に倍の約95万件に達し、施策前と比較すると約10倍もの拡散効果が見られました。(下図)

トップ10書き込み閲覧数

クチコミではポジティブな内容が大多数を占め、ECサイトの商品レビュー欄にも好意的な感想があふれました。これを受け、同記事のリリース後に30万個の在庫はあっという間に完売「売り切れ大王」というあだ名までつけられ、中国国内で手に入らないと、日本への旅行者が日本国内で購入し、インバウンドの方面でも売り上げの向上が見られました。

今回「在庫完売」の成功を導いたのは、施策の巧さだけではありません。実は同社のPR活動における基本姿勢にも成功の秘訣がありました。続く記事では、トレインのPRのポリシーと、売り上げにつながった施策のポイント「ウェブでの情報上流からの情報発信」について解説いたします。

 

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【セミナーレポート】越境ECで爆売れ!トレインの「アームカバー」の陣(2)~PRの心得そして越境ECで勝ち抜くための作法~