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【事例】台湾インバウンドは中国と違う? 「訪日旅行」ソーシャルビッグデータで台湾人旅行客のインサイトを探る ~発展編~

前回の「基礎編」では、台湾でよく利用されているSNSから台湾人の日本旅行に対するイメージを探りました。

▼台湾で人気のBBSとは? 春と秋の訪日台湾人の目的の違い、理由は台湾の「気候」に関係?

【事例】台湾インバウンドは中国と違う?「訪日旅行」ソーシャルビッグデータで台湾人旅行客のインサイトを探る ~基礎編~

本編では、台湾人のクチコミデータから「日本」とともに言及される国、地域を確認してみます。合わせて、訪日旅行の主要な目的の一つである「買い物」を取り上げ、関連キーワードから台湾人観光客の消費のインサイトに迫りたいと思います。

4.「台湾人の海外旅行」日本のライバルは○○と韓国!

SNS上の書き込みで「日本」とともに言及される国、地域について集計しました。

どの国と一緒に言及されることが多かったのでしょうか。ぜひ予想を立ててから、グラフをご確認ください。

「台湾人の海外旅行」イメージ写真

どんな国が頭に浮かびましたでしょうか。

結果はこちらです。

台湾人は日本をどの国とあわせて捉えているか グラフ

ダントツで「中国」と一緒に言及されています。続いて「韓国」「香港」「タイ」「シンガポール」、「ソウル」「バンコク」「上海」「マカオ」「マレーシア」となっています。

さて、「中国」「韓国」と日本はどのように関連付けて言及されているのでしょうか。具体的に見ていき、台湾人観光客の心理を想像してみます。

 

【中国】目的地の比較は少数、日本人からの認知に戸惑う

「日本と中国」に関しては、日本政府の中国人観光客に対する施策に注目が集まっているようです。「日本政府が中国人へのビザ発給要件緩和」といったニュースが話題となっています。

「中国」関連のクチコミでは訪日旅行中の感想に最も多く表れています。「日本人は中国人と台湾人は同じだと思っている」というコメントに代表されるように、中国人と同一視されることへの戸惑いが存在するようです。上記の訪日中国人観光客への関心はこういった出来事に影響を受けているのかもしれません。

少数ですが、目的地としての比較のクチコミもありました。台湾から中国へ行くには以前はビザの取得が必要でしたが、今年の7月にこの手続きが廃止されました。今後中国への旅行者が増える可能性もありそうです。

参考:
【台湾人が中国に行くにはビザがいる?】7月1日台湾人のビザ免除に(出典:mafengwo) 中国語

 

【韓国】漢字以上の差別化が今後の課題

実は「旅行先」の比較検討の対象として最も言及されているのは「韓国」です。韓国旅行に関しては「激安ツアー」「化粧品等のショッピング」「食の安さ」に着目していることがわかっています。そんな中で「(韓国よりも)日本のほうが、漢字があって便利」と評価されていることがわかります。

トレンドExpressが週次で行っている微博上のクチコミの集計では、中国人観光客が訪日旅行で「化粧品」の購入を楽しみにしている様子が見て取れます。台湾人にとっても中国人にとっても「化粧品の購入」は旅行先での重要なトピックの一つであり、東アジアで「化粧品の聖地」として日本と韓国が二大巨頭となっていることを感じさせます。

また「韓国人に間違われた」との戸惑いも投稿されています。先ほど見た項でも「日本人は中国人と台湾人は同じだと思っている」という心象がクチコミに表れており、台湾人にとっては容易に「○○人」と断じない環境が心地よいものであるとの仮説が成り立ちそうです。

日本と韓国の間で、漢字以外の差別化ができていないのであれば、訪日台湾人旅行客の市場にはまだまだ伸びしろがあるということがいえるのではないでしょうか。「激安ツアー」「食の安さ」「ショッピング」「アイドル」では韓国に軍配があがっているかのようなクチコミも見られます。

比較検討している層に「こちらのほうがお得だった」と思ってもらえるのは「量」なのか「質」なのか、そのバランスを見定め提供していくことで、結果として訪日台湾人の満足度向上、さらに集客の拡大に役に立つのではないでしょうか。


▼化粧品ブランドのSNS拡散力を「日本・韓国・欧米」で比べてみました!

対決シリーズ!【欧米vs韓国vs中国vs日本】化粧品の場合(1)


5.台湾人の日本「ショッピング」観を読み解く

さて最後に再度訪日旅行にフォーカスし、その旅行形態と目的について見ていきます。台湾からの旅行者の9割弱は「個人旅行」での訪日です。そのため滞在中の行動は旅行者次第。旅行者全体の訪日旅行の目的TOP5は以下のようになっています。

1位 体験
2位 買い物
3位 歴史
4位 レジャー(余暇)
5位 自然風景

「体験」については秋に盛り上がること、その中には【文化体験】【アクティビティ・ツアー】【現地生活】【独自な旅行体験】が含まれることを(1)で確認してきました。


▼目的の季節別盛り上がりは(1)の記事から確認できます

【事例】台湾インバウンドは中国と違う?「訪日旅行」ソーシャルビッグデータで台湾人旅行客のインサイトを探る ~基礎編~


今回は通年その需要が高い2位の「ショッピング」について、関連のキーワードを見てみます。

 

ショッピングの要はプチプラ、日常使い、電化製品

ショッピング関連のキーワードTOP15を見てみます。件数別の1位は「お土産」、2位「化粧品」となりました。

 

No. 言葉
1 お土産 5,463
2 化粧品 4,940
3 ショッピングモール 4,743
4 familymart  3,639
Lawson 3,336
スーパー 3,113
デパート 2,344
7-11 1,939
9 お台場 1,762
10 コンビニ 1,683
11 秋葉原 1,229
12 PLAZA 1,166
13 阪急 1,153
14 BICCAMERA 945
15 AEON 918

 

3位には「ショッピングモール」がランクインしています。また15位に「AEON」がランクインし、百貨店のような高級な店舗よりも、日常使いできる製品が手に入る店舗に足を運んでいるという仮説が成り立ちそうです。

4位「familymart」、5位「Lawson」、8位「7―11」(編集部注:セブンイレブン)、10位「コンビニ」とコンビニの人気も目立ちます。百貨店は7位に「デパート」が現れていますが、個別の店名では「阪急」がランクインするのみでした。

12位には「PLAZA」がランクインしたほか、TOP15圏外ですが16位「LOFT」、22位「DAISO」、21位「セール」といった関連ワードが見られます。「プチプラ」「コスパが良い」ものが訪日台湾人の消費意欲に熱をつけているようです。先に考察した韓国との比較と合わせて考えると「安くお得に」「化粧品やおいしいものが買える」場所に需要があることは間違いないようです。

百貨店では「漢字でわかりやすい」とあって阪急のクチコミ投稿が後押しされている可能性もあるのでしょうか。24位には「高島屋」が現れています。印象に残りやすい漢字なのかもしれません。

11位「秋葉原」、14位「BICCAMERA」、またTOP15圏外ですが23位「電気屋さん」がランクインし、訪日台湾人の日本の電化製品へのニーズがよみとれます。

まとめ

中国とほぼ同じ公用語があり、位置的にも近く同一視してしまいがちな「台湾」ですが、クチコミから見た訪日旅行の目的の一番が「体験」であること、食への感度の高さからもわかるように、訪日中国人とは異なる嗜好を持っています。

また国土が広大で各地の気候、習慣といった地域による特性が幅広い中国と比較した場合、島しょである台湾では全国的に共通した慣習や認識が存在しているという側面もあります。一方で、台湾の各地に特有の文化も存在します。両者を理解することで、一段上の水準の台湾人向け「おもてなし」が提供できるのではないでしょうか。

ちなみに、訪日台湾人の宿泊先は4分の3がホテル、2割強が民宿となっています。

 

日本への台湾人旅行客の宿泊先 円グラフ

コスパを重視する台湾人がベストと判断する宿泊先がホテルなのか、あるいは今後民宿の利用が増えていくのか…さらなるクチコミの収集、分析によりインサイトを理解することで、より一層の工夫に取り組むことも可能となりそうです。

2020年に向け観光立国への道を歩んでいる日本各地の自治体そして日本企業ですが、クチコミを始めとするデータから拾い上げたインサイトに基づけば、満足度の高い「おもてなし」を策定できるのではないでしょうか。

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