中国トレンドExpress

中国都市解説(7)福建省(福州市)~グローバルビジネスで活躍する華僑・華人のゆりかご~

現在、世界で活躍する華僑・華人。その多くが福建省出身だということは日本ではあまり知られていません。多くの華僑・華人を輩出した同省は唐代の福州都督府(725年)に由来する古い歴史を有し、そして日本とも浅からぬ関係を持つ街。今回はそんな福建省を紹介します。

国際的な港湾都市、国内で増す存在感

福建省の人口は3,552万(2016年)で、国内18位に位置し、中国でも中間程度の人口規模を持つ地域です。北を浙江省、南を広東省、そして西を江西省に囲まれ、東は台湾海峡を挟んで台湾島と相対しているという地理環境です。

さらには国家主席を務める習近平氏が1988年~2000年までの12年間、官僚として在任していた都市として、中国国内での存在感も増している都市なのです。

その省都は福州市。歴史的には10世紀に王審知が閩(びん)国を建国し、それ以来、貿易港として発展してきました。明代(1368~1644年)には、福州に市舶司(貿易を所管する部署)が置かれ、中国国内において国際的な港として発展してきた街です。

そして、こうした港湾都市としての歴史を背景とし、世界へと飛び立って行ったのが福建省の華僑・華人たちです。現在、彼らの人数は1,000万人を超え、176の国・地域に散らばっています。

参考:
2016年全国各省人口数量排名(TOP34)(出典:中国産業信息) 中国語
『福建省および主要都市の経済概況(2016年)』(出典:ジェトロ)

以下では、そんな福建省の経済概況をみていきましょう。

1980年以降の急速発展、福建省人のたくましさ

まず省別GDPをみると、福建省は第10位に位置しており、なかなかの経済規模を誇っていることがわかります(図参照)。

省別GDPランキングTOP10(2016年)

順位 地域 億元
1 広東省 79,512
2 江蘇省 76,086
3 山東省 67,008
4 浙江省 46,465
5 河南省 40,160
6 四川省 32,681
7 湖北省 32,298
8 河北省 31,828
9 湖南省 31,245
10 福建省 28,519

(備考)南方財富網より作成。

続いて福建省内の企業ランキングをみてみましょう。中国国内でも沿岸部は経済先進地域として知られていますが、沿岸部に位置しながらも、福建省は経済に関しては若干立ち遅れた地域でした。

その原因の1つは台湾との緊張関係で、軍事的要衝とされる同地域は常に軍事的懸念を孕んでいました。しかし次第に緊張関係が緩和した1980年代以降は、厦門市が経済特区に指定され、これ以降同地域は短時間ながら飛躍的な成長を実現させました。

福建省企業ランキング(2016年)

順位 企業名
1 厦門建発股份有限公司(厦門市)
2 興行銀行股份有限公司(福州市)
3 福建省電力有限公司(福州市)
4 福建連合石油化工有限公司(泉州市)
5 厦門国貿集団股份有限公司(厦門市)
6 厦門海翼集団有限公司(厦門市)
7 紫金鉱業集団股份有限公司(厦門市)
8 戴爾(中国)有限公司(厦門市)
9 厦門象嶼集団有限公司(厦門市)
10 友達光電(厦門)有限公司(厦門市)

(備考)投資福州より作成。

現在同省経済を支えている企業は、建設業、金融業、エネルギー、そして貿易会社等となっています。福建省のイメージは、同じ沿海部でもアリババグループのような先進的なIT企業を擁する浙江省等とはまた違ったイメージかもしれません。

また、ランキング入りしている企業の所在地域は、経済特区に指定された厦門市が州都の福州市を上回っています。

余談ですが、福建省莆田市出身者は民営病院経営者として中国各地で成功しており、こうした莆田市出身者の病院の総称として「莆田系病院」という言葉が、近年の中国で広く使われています。世界に羽ばたく華僑以外に、こういった部分も福建省ビジネスマンのたくましさを感じさせられます。

知られざる福建・沖縄交流史

さてこうした福建省ですが、日本との関係においては、とりわけ沖縄と特異な交流関係を持っていました。

14世紀、当時の琉球王国は中国と外交関係も結び、使節を派遣、その出先機関として福建省内に「琉球館」と呼ばれる施設がありました(現在の琉球館は1992年に再建されたもの)。ここを通じて大陸の先進技術や文化を導入していたのです。

つまり福建省と沖縄県(琉球王国)とは600年にわたる交流の歴史があったのです。

2017年、その福建省と沖縄県は友好姉妹都市提携20周年を記念し、11月9日には沖縄県から福建省訪問団が派遣され、今後の沖縄・福建省の友好関係を更に深めていく方向性が示されました。同時に福州市内では「福州沖縄観光物産展」が催される等、商工レベルでの連携が推進されたり、また沖縄県では中国大学生友好交流訪日団を受け入れたりと、沖縄と福建省の独自の友好関係が構築されつつあります。これには、もちろん中国の経済力をバネにさらなる発展を企図する沖縄側の狙いもあります。

長い歴史に裏付けられた福建・沖縄の草の根の交流にも注目です。

参考:
中国・福建省と「交流深める」 友好20周年 翁長知事ら訪問団が出発参考(出典:沖縄タイムスプラス)