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【特集】2018年は何がアツい?2017年の「買った」「買いたい」から探る(3)~中国の「疲れ目」には日本のサプリ

2017年の「買った」「買いたい」ランキングから、2018年に売れそうなモノについて探る本特集、(2)ではオーラルケアやヘアケアなどについて確認しました。

(3)では、今後の伸びが期待できる衛生・健康カテゴリから、市場をけん引する各種サプリメントについて見ていきたいと思います。

生活改善・健康維持関連のサプリメントが人気に

衛生健康カテゴリをけん引するのはサプリメントや衛生用品となっていますが、この1年の「買いたい」件数推移を小分類でみてみましょう。

衛星・健康(主な小分類)「買いたい」件数推移

日本の健康食品といえば「美容・ダイエット関連」が人気というイメージが根強いですが、この秋ぐらいから生活改善・健康維持関連が件数を伸ばしています。直近のランキングで人気商品を確認してみると、ファンケルブルーベリーや血糖値対策のグルコケア、グルコサミンやコンドロイチンが含まれたものなどがランク入りしていました。

ファンケルブルーベリーは昨年5月までは下降傾向が見られたのですが、そこから「買った」「買いたい」が上昇傾向に転じています。

中国のアイケア闘争に日本のサプリ、キャンペーンは6月6日が狙い目

このファンケルブルーベリー、2017年「買いたい」ランキング推移を見てみると、6月7日ごろから一気に順位を上げています。その後、いったん下降しているものの、7月の夏休みシーズンや9月の国慶節前などで徐々に人気を上げています。この「6月上旬」をキーワードに調べてみると、中国のアイケア領域における奮闘が見えてきます。

実は中国では1996年に毎年6月6日を「全国愛眼日」と制定、目のケアを呼びかける日としており、政府などでもアイケアに関した宣伝などを行っていました。つまり中国は20年以上前から国民の「目」の問題に注目、国民アイケア活動に注力していたのです。

しかし、2017年6月6日は、若干様相が異なりました。

事の理由は前年、2016年10月に発表されたWHOの報告書。調査によると中国の近視人口は約6億人。小学生の近視率は約40%、中高大学生に至っては70%を超えているとの報告がなされ、世界最大の近視大国となってしまっていたのです。

さらにそれを受ける形で中国政府は2016年10月31日《关于加强儿童青少年近视防控工作的指导意见》を発布し、各学校において児童・学生の学習負担軽減、青少年の近視防止政策の強化を求めたのです。

ここで注意が必要なのは施策を「始めた」のではなく、「強化する」という点です。

そもそも、中国にとって「視力低下」は長きにわたる問題で、中国ではこの調査のはるか前から青少年の「目」のケアには注意を払っており、小学校では所定の時間に目の疲れを緩和する「眼保健操」と呼ばれるマッサージ体操を制度化、全国に普及させていました。

しかし、この調査の結果を見る通り、政府の施策が効果を上げているとはいいがたいばかりか、別の報告では2020年までに全人口の半数以上が近視になるとの予想までなされるほどだったのです。そうしたなかで迎えた2017年の「全国愛眼日」。国内外の眼科の権威を招いての「第一回国際眼科大会」を大連で開催し、アイケアの重要性を宣伝しています。

ちなみに、子供の視力低下の原因とみられているのが、過度の学習。中国ではいまだ学歴社会で、「高考(大学入試)」が人生を決めると言っても過言ではありません。小学生が深夜12時まで宿題に追われるといった詰込み型教育からは脱却できておらず、それは学年が上がるごとに激しくなります。中学高校での近視率の高さは、ひとえにその積み重ね、勉強による視力低下に歯止めがかからずにいるのが現状です。

もちろん中国の親たちとてそんなことは分っていること。とはいえ、子供の将来の事を考えると「勉強を減らすわけにはいかない」…。この日本の「視力サプリ」人気には、そんな中国の親たちが抱えるジレンマが見え隠れしています。

ちなみに勉強疲れの子供だけでなく、一日中スマホやパソコンを見続けているホワイトカラーなど、目に悩みを抱えている消費者は事欠きません。そこに向けて6月6日を訴求タイミングとして見てもよいかもしれません。

高齢者向けサプリで親孝行

また注目されるのが「コンドロイチン」や「グルコサミン」など、高齢者向けのサプリです。高年齢層の健康意識も高まっているように見えます。

これらは主に関節の痛みや炎症に効果があるとされているもの。中国の「健康促進与教育協会」の調査によれば、中国国内の関節炎患者はすでに1億人単位で存在していると見られていますが、病院で治療を受けているのは半数程度だと言われています。

これは、関節炎などが「歳のせい」、「高齢者には当たり前の症状」といった意識が強く、癌や高血圧ほど予防や治療に関しての情報が普及していなかった、「病院に行くほどではない」という認識でいたことが原因と業界では見ています。

とはいうものの、その子供や孫などから見るとやはり身内。親孝行の一環として親や祖父母にこうしたサプリメントを送るケースが増えています。もともと中国では春節や中秋節、また敬老の日に当たる重陽節には、家族内の高齢者に朝鮮人参などの漢方薬剤、漢方酒などを送ることで、健康を気遣う、「孝心」を表す習慣もあるため、そこに刺さった可能性が高いと思われます。

ちなみに中国では2020年には60歳以上の人口が2億5000万人を超えるという試算がなされており、総人口の17.8%に達するほどです。彼らの多くは子供や孫(70后や80后)の健康意識の高まりに押される形で健康に気を使うようになっているようです。

参考:
《中国家庭健康大数据报告(2017)》发布(出典:人民政協網) 中国語

依然人気のダイエット商材、キーワードは「むくみ」

ダイエット系の商材も緩やかに伸びを見せており、伸びしろは存在しているように見えます。直近の「買いたい」ランキングでは、DHCメリロートが人気。メリロートとは、マメ科の植物ですが、血液やリンパの流れを改善し、またむくみを取る効果があることから、デスクワークの女性などを中心に人気が集まっています。この状況は中国も同様で、フットケアも含めて、むくみやオフィスワークによる不調を改善するサプリやグッズへのニーズが常に存在しています。

また、もともとダイエットに対して理性的な思考を持つ消費者が多い中国。ダイエット手法でも運動や食事改善などが上位を占めています。そのため、通常の食事や運動による健康的ダイエットに合わせて使え、その効果を高める補助食品やサプリといった分野が人気を集めていると考えられます。


▼中国で人気のダイエット方法TOP10とは?

中国人気ダイエットTOP10~年配者は公園で華麗なステップ?!


余談ですが、2017年末、中国ダイエット業界にちょっとした事件が起こりました。先のランキングでも人気が高かったツボ押しダイエットなのですが、2017年12月11日付の北京日報で「軽々しくツボ押しダイエットを信じた80后の男子が緊急搬送」と報じ、その後、各メディアも一斉に「ツボ押しダイエット」に関しての記事を掲載。いずれも「たやすく信じるな」、「詐欺」などと言った論調であったため、にわかにその効果に疑問がもたれています。

ちなみに緊急搬送された男性は「ツボを2時間にわたって押したあと、医師から24時間の食事禁止を告げられた」といい、その言いつけを守っていた所、体調を崩したと伝えられています。同施術に関しては、無資格店舗が多く存在しているようで、現在はメディアによる注意喚起が行われていますが、場合によってはツボ押しダイエットそのものに対して行政が取り締まりを行う可能性も考えられます。

参考:
不运动光靠点穴就能减肥? 所谓神奇疗法只是替节食打的幌子(出典:sina新聞中心) 中国語

まとめ

健康志向に裏付けられた「目」や「ダイエット」など、中国消費者にとっての長年の悩みに関しては、依然として高いニーズが存在していることが見て取れます。こうした分野では商品の知名度だけではなく、機能性の訴求などによって差別化を図る必要があるでしょう。

続く(4)では、カテゴリ全体の件数はまだ少ないものの、伸びを見せている生活雑貨カテゴリについて見ていきたいと思います。そこにはある共通のキーワードがありました。

 

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【特集】2018年は何がアツい?2017年の「買った」「買いたい」から探る(4)~生活雑貨・日用品の共通キーワードは「香り・ニオイ」