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【セミナーレポート】双十一の振り返りと2018年春節対策(1)~2017年双十一の5つの特徴

中国トレンドExpressで月に1度開催しているセミナー。

12月は当社代表取締役濱野智成がプレゼンターとして登壇し、2017年の締めくくりとして、中国最大のECサイトイベント《双十一》を振り返りました。

そして今後、2018年のインバウンドマーケティング、ECサイト市場において日本企業がどう闘い、どうプロモーションを行なうのか。次の商戦での売り上げに繋げるための戦略について、中国市場で成功を収めた企業の事例を基にお話いたしました。会員様限定でお送りしている本記事では、このセミナーを詳細にレポートします!


そもそも《双十一》(ダブル・イレブン)とは?

11月11日は、「1」が4つ並ぶことから、「光棍節(独身の日)」と中国人の大学生や若い世代の間で呼ばれるようになりました。公式な祝日ではなく、自然発生的に始まったイベントで、その後、独身パーティーやお見合いの開催、プレゼントを贈る文化が醸成されていきました。そして、この文化に目を付けた阿里巴巴(アリババ)社が、2009年に仕掛けた自社のECサイト販促イベントこそ、中国最大のECイベントと言われる《双十一》です。

2017年11月11日の双十一では、アリババ社の運営する天猫(T-mall)だけで2.87兆円を超える売り上げを記録しました。2016年の日本Amazonの売上が1.85兆円ですので、この1日だけで、日本Amazonの年間売上の1.5倍を優に超える金額が動いたことになります。

もちろん、追随する京東(JD.com)や、唯品会(VIP)といったサイトもこの日に多大な額の売上を記録し、中国全土で消費された総額は5兆円を超えました。また、この中には日本から出店した企業や、欧米ブランド等、中国国外の製品の売上も含まれると同時に、中国から海外へと販売された商品も含まれます。

今や《双十一》は中国だけにとどまらない、世界的な、そして世界最大のEC祭典へと発展したと言えるでしょう。

2017年《双十一》の特徴

1.前年度をはるかに超える売上金額と流通量

2017年の双十一の大きな特徴としては、やはり「前年度をはるかに超える売上金額と流通量」が挙げられます。公開されているだけでも1日で各社の総額が5兆円を超えた、世界最大の消費イベントとなりました。

2.T-mall一強から、2位の京東の追い上げが猛加速

中でも特徴的なことは、最初に双十一を仕掛けたアリババ社のT-mallだけではなく、2位以下のその他ECサイトが大躍進を遂げたことです。特に、2位の京東は、騰訊(テンセント)がバックアップしているECサイトですが、こちらが今まで非公開としていた双十一での売り上げを発表したことが大きな話題となりました。その金額は2.17兆円と、T-mallの2.87兆円に迫る勢いであったことから、京東が今まで非公開だった売り上げを公開した本心は、アリババ社のT-mallを「射程圏内に収めた」という意思表示であった、と言われています。

今回の双十一で売上高3位を誇った唯品会の株式に対し、テンセントと京東が大型の出資をしたとのニュースは記憶に新しいことと思います。2位の京東と3位の唯品会が統合されることによって、今後ECサイトはT-mallと京東の二強へと集約されていくと見られます。

また京東でも6月18日を「京東の日」と定め、双十一と同様のECサイト祭りを仕掛けています。2018年からはアリババ社のT-mallも参入すると言われ、ECサイトのこうした特売日はこれからも盛り上がりを見せていくだろうと予測されています。

従来のT-mall一強から後続のECサイトの台頭、そして今後京東が仕掛ける統廃合の動きなど、今後も中国ECサイトからは目が離せません。

3.生鮮食品の販売が注力され、多様化する販売商品

流通量の激増の要因の一つとして、生鮮食品の販売が注目を集めています。アリババ社はスーパーマーケットも運営しており、海外のグローサリーストアのようなおしゃれな雰囲気、その場で調理されて出される総菜の数々、また総菜をお弁当として宅配することも可能など、今までになかったサービスが人気を集めています。そういった背景から、アリババ社はECサイト上でも生鮮食品の販売に注力しています。

中国では何事もECで買うと言われるくらい、ECサイトの利用はもともと活発です。そのため販売商品の多角化も顕著であり、今回の双十一においてもその特徴はそのまま反映されました。

4.中国国内にとどまらない、世界規模への成長

2017年の双十一では海外での売上が多かったことも特徴の一つです。一番多かったのはロシアで、同じ中華圏である香港よりも売れたということは特筆すべき点でした。この双十一の潮流に海外ECサイトも手をこまねいているわけにはいかず、amazon globalが参入するなど、世界規模への発展が見られました。過去にはT-mallがイギリスのサッカー選手デイビッド・ベッカム夫妻を起用したキャンペーンを行うなど、双十一を世界的な祭典へしていこうという動きがありましたが、ここに至ってそれが実現したと言えます。

5.キャンペーンの複雑化

今回2017年の双十一で一点だけ負の側面を挙げるとすれば、キャンペーンが複雑になったためにユーザーに混乱が起こったことでしょう。

双十一がどうしてこんなに盛り上がるかと言えば、第一に商品が普段より安く買えることが理由ですが、今回これが裏目に出てしまったといえる事態が起きました。ECサイト側で独自に小売り販売価格を値下げしたものもあれば、ECサイトに商品を卸している企業側での値下げなど、様々な形の割引サービスが展開され、却って消費者からは「どのキャンペーンを適用すれば一番安く購入できるのか?」がわかりづらい状況となったのです。

キャンペーンがわからない、という一点だけでもユーザーが離れてしまう危険性もあり、今後の課題としては、「どうすればユーザーはよりお得に買えるか?」がわかりやすくあること、この点により注意が必要になるでしょう。

2017年・双十一の人気ブランドや国

その他、2017年の双十一での人気ブランドは以下のようになりました。

スキンケア部門では、百雀羚(PECHOIN)と自然堂(CHANDO)がそれぞれ1位、2位となり、海外化粧品が圧倒的人気を誇る中国で、中国ブランドが1位と2位を独占したという点は非常に興味深い結果でした。中国発の双十一というイベントに、国内ブランドである2社が、その利点を活かしたセールスを成功させたものと思われます。

スマホ部門ではiPhone Xなど話題が多かったアメリカのApple社が1位ですが、2位以下にはやはり国内メーカーが続きます。その中でも、レディースアパレル部門では1位に日本が誇るUNIQLOが輝いたことは、嬉しいニュースでした。越境ECの国別流通ランキングでも、日本製品が1位となり、日中間の活発なやり取りが窺えます。

逆に、今まで人気のあった韓国が低迷している背景には、政治的に中韓関係のイメージが悪くなったこともあり、一時期の日中関係を彷彿とさせるものがあります。また韓国企業はプロモーションが上手なのですが、製品に期待したほどの良さを感じないなど、実際の商品とのイメージの乖離があった点も、ユーザーが離れてしまった一因ともいえるでしょう。口コミが売上に大きく影響する中国市場では、ユーザーの満足度や口コミにも注意が必要で、悪い評判はあっという間に広まってしまいます。

まとめ

以上、2017年の双十一を見てきましたが、今回においてはやはり圧倒的な売上規模の拡大が大きな特徴であると言えるでしょう。世界規模へ発展しつつある中でも、中国国内ブランドが売上を着実に伸ばしている点は、国内の利点を使ったプロモーション戦略によるものとの見方が出来ます。日本企業は、海外勢の中では相変わらず人気が高いですが、今後も追い抜かれることなく、この祭典を利用してもっと多くを売るためにはどういった戦略が必要か考えていく必要があります。

次回、セミナーレポート第2回では、中国の双十一がこんなにも盛り上がる理由について迫り、売上拡大事例からそのマーケティング手法を紐解いていきます。

▼近日公開

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