中国からクリスマスが消える? 忖度が生んだ「西洋イベントの是非」大論争

年末の一大イベントといえば、そう「クリスマス」。日本の街を見ても、至るところにイルミネーションが彩を添え、そして大人も子供もそれを見て胸をときめかす。そんなイメージです。

それは中国でも変わりません。特にデパートなどの小売り、レストランなどのサービス業にとっても、きわめて重要なイベント。どこもあの手この手の華やかなイベントでクリスマス商戦を戦います。

そんな中国でも楽しいクリスマスですが、昨年はある地方政府の通達が波紋を投げかけ、ネット上を中心に不思議な議論が起こりました。その通達とはなんと「クリスマス禁止令」です。

参考:
2017年国内购物中心圣诞美陈抢先看(出典:SOHU) 中国語
【案例】北京商业购物中心圣诞美陈活动大集合(出典:SOHU) 中国語

発せられた通達。追従する教育機関。

通達は2017年12月22日。通達を発したのは中国中部エリアの「湖南省衡陽市」です。計8条からなる通達の内容からピックアップすると、「路上イベント禁止」、「可燃性製品の持ち込み、使用の禁止」、「共産党員のイベント参加禁止」と、クリスマスというイベントにはそぐわない、なんともお堅いもの。さらには12月24日、25日には3700人もの警察官を投入し、「社会の秩序維持に努める」とまで発表するなど、ハロウィンやクリスマスの渋谷をはるかに凌駕する厳戒態勢です。

これを受けて市内の学校では「拒絶洋節、弘揚中華文明(西洋イベントにNo! 中華文明を広げよう)」と、学校内でのクリスマスイベント不開催、伝統行事の挙行などを宣言。あたかもクリスマスが消え去るような雰囲気でした。

参考:
湖南衡阳:党员干部要让不过洋节成为自觉行动(出典:新浪新聞) 中国語
区教文体局] 荷池路小学:拒绝洋节,弘扬中华民族传统文化(出典:衡陽市石鼓区公式HP) 中国語

そして始まる大論争。理はどちらに?

これらの状況がインターネットや報道によって伝えられると、中国のネット上にはいろいろな議論が巻き起こりました。若者はもちろん社会的地位のある有識者まで、賛否両論様々です。

まずは賛成派。こうした西洋イベントに傾倒し、本来の文化が廃れることを憂う人たちは、この決断を高く評価。かつての義和団事件※など歴史的な事実を持ち出し、「西洋かぶれ」を徹底的に排撃し、中国人の誇りを取り戻そうと気勢を上げます。さらには「キリストの誕生日(12月25日)ではなく、毛沢東の誕生日である12月26日を祝おう」と、「偉人節」(数年前に提唱されたが定着せずにいる)の一大キャンペーンを展開するなど様々です。

しかし、同時に反対もしくは慎重派の声も少なくありません。「そもそも自国文化を広げるために、他国文化を排除する必要があるのか?」や以前あった「西洋イベントに負けないくらい、伝統イベントも内容を充実させればいい」など、理性的に見ようという意見も支持を集めました。

もちろん「楽しければ何でもいいし」や「何が悪い」など、いかにも今どきの若者的な意見も含め、様々な意見が展開され、結局結論を見ませんでした。

では肝心の12月25日はどうだったかというと、中国のニュースを見てみても、逮捕者が出たとか、賛成派反対派の衝突が起こったなどのような、大きなトラブルは報じられていません。どうやら中国でも例年のように粛々と、楽しくクリスマスを過ごした人、過ごさなかった人、それぞれだったようです。

そして現在は中国の伝統イベントにして最大のお祭りである春節直前。論争はそっちのけにされつつ、そのまま収まりを見せています。

※義和団事件
清朝末期に起こった秘密結社による排外運動だが、朝廷がその力を借りようとしたため、戦争にまで発展した事件。この事件で西洋諸国の対中国侵略がより深刻化したとされている。

参考:
堅決不過聖誕節, 中国人過偉人節(出典:莒州网) 中国語
国家终于出手!洋节,再见!(出典:文学城) 中国語
某校发抵制”洋节”通知 媒体:弘扬传统不必抵制洋节(出典:網易新聞) 中国語
与其抵制洋节不如丰富传统节日内涵(出典:腾讯网) 中国語

そもそも、この騒動の背景とは?

とんだ枯れ尾花だったこの騒動、いったいどこから出たのでしょうか?

引き金になったと思われるのは2017年初頭に国が中国伝統文化の価値を見直し、そうした活動を奨励する方針を発表したこと。同時に無信仰が原則である共産党員は宗教的イベントへの参加を控える旨、通達されたこととみられます。

しかし、これらの通達、どこにも「西洋イベントを排除せよ」といった直接的な表現やそれを示唆する内容は見当たりません。

さらに、この騒動の中にSNS上で回っていた中国政府によるとされる「共産党員クリスマスイベント参加禁止厳令」なるものが、「ニセモノ」だとの情報も現れており、国としてクリスマスを禁止してはいないことがわかります。

それでも起こったのは、中央の指標を拡大解釈し、それを必要以上に徹底させて評価を上げようとするお役人さんたちの思惑。そう、昨年一躍有名になったあの言葉、「忖度」だったのではないかと思われます(実際にそうしたお触れを出したのは少数の二三級都市だけでした)。

近年、世界第2位の経済大国へと成長した中国。その方針もこれまでの「先進国からの導入」から「自身の文化やプライドを取り戻そう」へと舵を切っているように見えます。

とはいうものの、西洋文化を完全に否定するのではなく、受け入れつつも自身の文化の宣伝も、という姿勢は変わっていない模様。クリスマスもバレンタインもハロウィンも、引き続き大きなイベントとして楽しまれていくようです。

ちょっと変わった横やりが入ってしまった2017年のクリスマス。2018年は純粋に楽しんでもらいたいものです。

参考:
中共中央办公厅 国务院办公厅印发《关于实施中华优秀传统文化传承发展工程的意见》(出典:中国文明網) 中国語
党员干部不过“洋节”应成自觉行动(出典:中国網) 中国語
新政策有关部门禁止过洋节通知?假的!(出典:百家号) 中国語

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