【セミナーレポート】双十一の振り返りと2018年春節対策(4)~2018年春節とこれからの中国市場をどう戦うか
中国トレンドExpressで月1回行っているセミナー。12月は「双十一の振り返りと春節対策! 売上を拡大した事例から探る中国で有効なマーケティング手法とは?」と題し、中国最大のECサイトイベント《双十一》を振り返りました。(3)では、成功した企業の共通点を探り、その事例から有効な戦略について詳説しました。
最終回となる今回、中国市場での成功例を基に、ECサイト、またインバウンドでも需要が見込めるこれからの商戦期をどう戦うかについてお伝えします。
認知拡大の重要性
中国市場で最も重要なことは、「認知の拡大」だと言われます。基本的には購入されるプロセスとして、認知獲得→理解促進→購買意欲喚起、といった段階がありますが、中国市場では認知獲得に非常に重点が置かれます。製品やサービスについて、消費者がその存在を知っていないとまず売れません。
理由は一つには、偽物の横行があります。偽物の流通が激しいために、消費者の中で本物志向が拡大し、「知らない商品・サービスは使わない」という自衛心が生まれます。そのため、本物であること、良い品質のものであることと同時に「よく知っている商品であること」が購入へつながる一番の動機となります。
中国市場は世界中が注目する一大マーケットです。そのため、中途半端なプロモーションでは他国に押されてしまい、目につかない、知らない、といったことも起こり得ます。中国から見れば日本もたくさんある選択肢のうちの一つでしかありません。選ばれるためには、いかに中国の消費者に「これ知ってる」と思わせるかが重要となります。
認知拡大のための戦略とは?
ECサイト内では、広告費用をより多く出して目立った方が勝つ、という消耗戦になってしまいがちです。その上、そこで展開されるターゲット広告、DSP広告については、すでに興味を持っている層や、限られた層には有効ですが、全くブランドを知らない、または買う気のない消費者を新たに取り込むためには不向きです。
それではどうやって新たな層にまで商品の存在を知らしめるのかといえば、口コミを最大化させる、これが現時点では最も有効だと言えます。
中国市場においてはSNSの影響力は圧倒的です。SNSのアクティブユーザーは7.87憶人と、世界一位のユーザー数を誇っています。中国は世界一のソーシャルメディア大国と言えるでしょう。また、中国人消費者の信頼する情報源として「口コミ」が上位を占めていることを以下のグラフが証明しています。
特に注目すべきは、年齢が上がっても、ネット口コミが第2位と上位に位置していることです。日本ではまだまだ若者のもの、といった感が強いSNSも、中国では高年齢層もが使いこなし、情報源のひとつとして大きな位置を占めていることがわかります。
つまり、ソーシャルメディア上にポジティブな口コミが多ければ多いほど認知が広がり、売り上げにつながる、と言えるでしょう。まさに、ソーシャルを制する者が中国マーケティングを制するのです。
どうやったら口コミが広がるのか?
SNSで口コミを拡散させるために最初に思いつくことといえば、SNSを使いこなしているKOLを起用してプロモーションを打つことですが、(3)でも触れたように、一度のプロモーションでは、ある程度の成果が得られたとしてもその後は急速に落ち着きます。消費者が熱しやすく冷めやすいため、興味がすぐに他へと移ってしまうからです。そこでお勧めするのが、WEBメディアの記事発信です。
WEBメディアとは、新浪などの大きなポータルサイトから発信されるネット記事です。広告とは違った印象を与えるため、消費者からは信頼性が高いとみられています。また、WEBメディア記事は蓄積され、情報として残っているため、閲覧者が多ければ多いほど検索結果の上位に表示されます。KOLやSNS上のフロー情報はタイムライン上ですぐに消えてしまうことが多いですが、WEB記事であれば日が経ってからも検索してすぐに取り出せます。
ひとつのサイトにWEB記事が掲載されると、その記事を別のポータルサイトが転載することも少なくありません。例えば新浪から発信したものが地方サイト、女性用サイトなどに転載されます。同じ記事が複数のメディアから発信されることで、まずはメディアでの拡散が最大化され、それがSNSで口コミとして広がり、大きなBuzzにつながっていくというのが理想的、そして効果的な拡散です。
ただし、そのためには、まずは「Buzzが生まれる記事」というものが必要になります。口コミの最大化の成功ポイントは、以下の3点です。
- プロモーションインサイトを発掘する
- Buzzに影響するキーワードを抽出する
- Buzzに影響するメディアを選定する
インサイトとは、深層心理のことで、この場合は「中国人消費者が欲しているものは何か?」といった購買動機につながる心の動きを言います。SNSなどを解析すると、求められている深層心理が浮かび上がります。そしてその深層心理をくすぐるようなキーワードを抽出し、そこから、どの媒体で発信すれば欲している層に届き、拡散されるか? といった戦略を立てる必要があります。どんなにインサイトに沿った良い記事が書けても、自社のプロダクト、サービスに見合った媒体で発信されなければ、必要としている層に届かず、効果が見込めません。
▼当社の支援実績として、この方法にて大成功を収めた企業について、以前のセミナーで紹介しました
『越境ECで爆売れ!トレインの「アームカバー」の陣(1)~「女の欲望」に火をつけた成功事例~』
中国ではまだ馴染みのない「日焼け防止アームカバー」を、美容やファッション、生活シーンなどの中国人消費者のインサイトに沿った内容でWEB記事を発信して売り出しました。
記事は最終的に200を超える媒体で発信され、SNSでも口コミが広がり、リリース後は30万個の在庫が売り切れる大ブームとなりました。全く中国で知られていなかった新商品であっても、このようにインサイトを発掘し、口コミを動かせば認知が拡大し、売り上げにつながることが、これによって証明されました。
春節・インバウンド商戦への布石
2017年最後に大きく盛り上がった《双十一》。それでは、2018年のこれから、どのようなイベントに着目していけばよいのでしょうか。以下の図は中国のメジャーなイベントの一覧です。赤い丸がインバウンド、つまり訪日客が見込める時期で、青い丸がECサイト上での売上増が見込めるイベントです。
特に、直近で言えば春節、また清明節(4月)のインバウンド商戦期にどう中国人消費者を取り込むか? については、実は、旅行前の準備段階が非常に重要になってきます。中国人旅行客は、本国でインターネット口コミやSNS等で情報収集をし、行きたい所やお土産をリサーチします。そして旅行中も常に情報収集をしながら、実際の体験や購入品をSNS上に発信していきます。帰国後もSNSへそれらを発信し、その情報が次の旅行者の情報源となる、といったサイクルが繰り返されています。
昨今「爆買い」という言葉が日本メディアを再び賑わせ、国内でも中国からの需要を見込んでいますが、その原理としてはこのような流れがあります。実は、企業からのプロモーションがあったからといって、すぐに中国人消費者が見つけてそれが拡散されるといったわけではなく、間にソーシャルバイヤーと呼ばれる仲介が入ります。
第一次情報としては企業からの情報発信、そして第二次情報としてKOL起用などのキャンペーン情報があり、それを見て「売れそうだ」と目を付けたバイヤーの、ECサイト等へ誘導する販売情報があります。こうして高まってきたムーブメントが消費者に届き、今度は消費者間でSNSに投稿される体験談、口コミがいわゆるBuzzとして表面に出てきます。そして最終的にそのBuzzが影響力を持ち、爆買いやECサイトでの売り切れブームにつながるのです。
訪日旅行客が実際に来日する前の準備段階において、こういったBuzzを起こしておく、日本に行けばこれが買える、といった情報を広く認知させておくということが、インバウンドを取り込むために非常に重要です。2018年春節に向けて、これからインバウンド商戦が活発化してくる中、すぐにでも情報発信をしていきたいところです。
まとめ
中国ソーシャルメディアを制する者が中国マーケティングを制する、というのは、単にSNSでたくさん情報を発信すれば集客が出来る、というものではありません。上に見てきたように、まずはインサイトを発掘し、自社商品とインサイトに沿ったプロモーションを展開し、それがバイヤー等を通して浸透、そして実際に購入・使用した消費者からプラスの評価を口コミとして拡散される、ここまでがいわゆる「バズった」と評されるものです。
また、より良い口コミを形成させるために実際に商品を体験させる、中国国内でのオフラインイベントやサンプル提供などのOtoO施策も効果があります。
2018年、この年をどのように中国市場で戦っていくか。その答えは「口コミの最大化」にあります。ではその口コミを最大化させるためには何が必要か。それが、ソーシャルサイトの分析によって中国人のインサイトを発掘すること、そして、それに沿った自社商品の情報がターゲットユーザーに確実に届くプロモーション施策です。
最後に、そうして戦った後のモニタリング、分析を行ってPDCAを回していくこと。こうした最適なソリューションを組み合わせて購買への導線を確立し、口コミの最大化によって大きな売上につながれば、中国市場においてひとつの戦果を挙げられるのではないでしょうか。
▼これまでの特集はこちらから
【セミナーレポート】双十一の振り返りと2018年春節対策(1)~2017年双十一の5つの特徴