BAKE中国進出の事例に学ぶ、「本物の感動」を伝えるプロモーションの極意(1)~中国市場における店舗ビジネスの可能性
トレンドExpress社では、日々日本企業の中国現地におけるマーケティングを支援しています。今回は事例紹介として、株式会社BAKEの代表取締役社長 兼 CEO 西尾修平氏、そして中国法人総経理CEO田尻晃久氏にインタビューいたしました。
中国市場のもつ可能性や戦略におけるこだわり、さらに取り組んだマーケティング施策とその成果など、中国で成功している企業からしか聞けない情報満載でお届けします。
インタビュー日程:2018年1月4日
聞き手:株式会社トレンドExpress代表取締役社長 濱野 智成
中国での戦い方、こだわりのポイントとは?
ーではまず西尾さんにお伺いします。貴社の中国市場の戦略的な位置づけを教えてください。
中国市場については、人口、そしてGDPの成長性の2点を鑑みても私のビジネスにおいてとても重要なマーケットと位置づけています。特に人口は、すでに日本の10倍とも言われビジネスとしてのスケールが違うと捉えています。
成長性についてはこれはもう日本ではおそらく経験できない規模感ではないかと思います。ただそれが中国におけるビジネス、そして日本企業が中国に進出していく際の難しさにつながっているのではないでしょうか。
ーアジアナンバーワンを目指していく中で、人口やGDP以外で中国と他のアジア地域の違いを感じる点があれば教えてください。
まず情報をとりまく環境が他の国とは決定的に異なります。たとえば、中国で使われている情報収集ツールやSNSはWeChatを中心とした国内系のツールが中心ですし、国外の情報へのアクセスが難しいこともあり、お客様にリーチする手法が他の国とは違うと感じます。
また、クチコミとSNSがかみ合った独自の情報進化も特徴だと見ています。
ーその違いを踏まえたうえで、中国での戦い方においてこだわっているポイントは?
BAKEグループにおける経営方針の根幹の一つにもあるのですが、「権限の委譲」をとても大切にしています。どのように権限の委譲を行っているか、BAKEグループの概要に照らしてご紹介します。
BAKEグループでは国内と海外で大きく2つの事業ドメインに分けており、さらに海外の中で3つの事業ドメインに分けています。まずはシンガポールを中心とした東南アジア、2つ目が台湾を中心とした東アジア、3つ目が中国です。これらをBAKEグループのブランチとし、それぞれにCEOを置いています。
各CEOを中心に、ヘッドクオーターが考えたグローバル戦略をベースに個別の戦い方をローカルで考えてもらい、それらをハイブリッドで組み合わせていくことをとても大事にしています。ですので、たとえば日本のプロモーションと中国のプロモーションが同時に動くケースと、中国独自のものが動くケースがあります。
これは、中国のお客さまに合うように、さらに中国市場のスピード感が日本より早いことから、施策の速度やサイクルを上げていくといった経営判断がしやすいように、中国法人というのはある程度独立採算をベースに権限委譲をしています。
僕は中国法人の取締役でもあるので一応モニタリングはしていますが、基本的には中国総経理である田尻のやりやすいように、また田尻の仮説を基にサポートする役割としてヘッドクオーターを位置づけています。
権限を委譲できるチームに一番大切な事とは
ー権限を委譲できるチームをどのように組成されていったのでしょうか?
当初、中国でビジネスはやりたかったわけですが知見がないという状況で、まずは中国での小売りの実績がある方という点をポイントに人材を探したところ、中国総経理の田尻にたどり着いたという経緯があります。
実績の他にもう一点、BAKEグループの価値観に共感していただけるかどうかという点を非常に重視しています。グループとして一番大切にしている価値観というのは、「お菓子を進化させる」ということなんですね。さらにその進化させたお菓子をより多くの人に届けていくということになっていくのですが、この考え方に共感してもらえる人でないと、どれだけ知見があっても全然フィットしないだろうと考えました。
僕たちは日本のブランドを中国に持っていったわけですが、中国への持っていき方やストーリーの組み方に関しても、ある程度自由度を持たせています。それは田尻がBAKEグループの価値観をしっかりキャッチし、信頼して中国を任せられるからだと思っています。
中国全土に広がるマーケットチャンス
ーここからは田尻様にお伺いしていきます。あらためて、中国マーケットの可能性についてどのように捉えていますか?
僕は2011年から中国にいるので今7年目なのですが、そのころはアパレル業界にいて店舗の出店を行っていました。そのころ周囲では、まずは上海、北京を押さえた後に、海岸、いわゆる浙江省や蘇州あたりから進出していき、内陸はまだ先だという話をよく聞いていました。
ですがここ数年で、内陸進出もどんどん進んでいます。いまや中国大陸のどこの都市にも、十分にマーケットとしてのポテンシャルはあると思っています。
ー中国市場の難しさはどんなところにあるとお考えですか?
西尾が最初にお話しした点と重複しますが、国外の流行が中国の消費者にダイレクトに届きにくいというところが、中国とその他の海外市場での圧倒的な違いだと思います。もう1点は、模倣品が市場に出回るスピードがすさまじいということでしょうか。
我々は2016年6月に1号店を上海のメトロシティに出店しているのですが、その当時「大衆点評」などで調べると、大体7、8ブランド、約60店舗のチーズタルト屋が上海にあったんです。ご存知のとおり、中国はデザインやパッケージなど全てコピーしますので、我々は明らかに出店が遅すぎ、最初から2番手、3番手となってしまいました。
また日本から商品を輸入しているので、ローカルの模倣品より高めの価格設定になっていました。そのためデザイン性は同じ、2年遅れで進出、でも価格は高いとなると、かなり厳しい状況でした。
また、いわゆるチーズタルトの味というのは、流行の最先端、感度の高い一部の中国消費者には受け入れていただけたかもしれませんが、やっぱり幅広いお客様に受け入れられるような、中国の方が食べ慣れている味ではないのかなということも感じていました。
そこでBAKEグループが日本でも展開しているクロッカンシューZAKUZAKUという商品で中国に再進出を試み、沢山のお客様に受け入れられています。模倣品が少なく、中国の方が食べ慣れたカスタードクリームを使っているため、マーケットで勝っていける商品になるのではないかと思いました。僕の主観ですが、中国ではやはりサイズが大きいものが売れる傾向があるのではないかと考えていて、その点ZAKUZAKUはサイズが大きめで、価格からしてもお得感があるという判断をされているのが、成功している要因の1つではないかと考えています。
一番大事なのは、信頼できる現地のパートナー
ー中国市場で戦う際に気をつけていることは?
最も気にしているのが、信頼できる現地のパートナーとしっかり手を組んで、出店戦略を進めていくということです。というのも、中国語が話せるかどうかというレベルの話ではなく、たとえば日系企業自らがモール施設など、店舗出店地とのパワーバランスを保つのにも限界があると思っているからです。
ですので、今回ZAKUZAKUはフランチャイズ展開に切り替えています。信頼できるパートナーと出店戦略を進めていることが功を奏し、順調に店舗数を増やしています。
ーフランチャイズオーナーの目利きは難しくないでしょうか?
いわゆる中国は人脈ビジネスと言われていますので、人脈をたどって探すのが一番ですね。やはり知らない相手、まだ仕事をしたことない方と、いきなり「はじめまして」で手を組むのはリスクがあるかもしれません。
ーフランチャイズモデルにおいて、苦戦しているポイントがあれば教えてください。
今はうまくいっているほうですが、以前の経験などから考えると、売上が落ちてきたときにどのようにフランチャイズのパートナーに対して打ち手の支援やアドバイスを行うかという点です。悪いときにどのように対応するかというのは、やはり難しいですね。直営であれば、自分たちがトライ・アンド・エラーでノウハウをつかんでいけばいいのですが、特にフランチャイズに関してはオーナーの売上に関わることなので、非常に気を使います。
ポイントとなる「打ち手」について、(2)では、実際のプロモーション事例を詳しくお伝えしていきます。
▼つづきは
【インタビュー】BAKE中国進出の事例に学ぶ、「本物の感動」を伝えるプロモーションの極意(2)~OtoO施策がもたらす効果とは