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中国都市解説(8)~湖南省(長沙市) トウガラシの激辛料理が培った、アツイ消費意欲と美男美女

湖南省は、長江中流域の南側に位置しており、省都は長沙市です。かつて中国最大の淡水湖だった洞庭湖の南にあることから、湖南省と呼ばれるようになりました。日本人にとってはあまりなじみがない省かもしれませんが、お隣の韓国では中国に来る観光客の6割が訪れる人気の観光地でもあります。数多くの優秀な政治家を輩出し、美女も多いと言われる湖南省の魅力をご紹介しましょう。

参考:
中国を旅する~湖南省(出典:中国国家観光局)
中国の都市一覧~湖南省(出典:weblio辞書)
2015/12/1 外国人観光客が愛する中国の観光地、日本人は「大都市」好き、韓国人は「険しい大自然」を求める傾向に―台湾メディア(出典:exciteニュース)

湖南省には長江と洞庭湖、そこに流れ込む湘江など、水資源が豊富なため、豊かな農地と豊富な魚介類に恵まれ、昔から「魚米之郷」として知られてきました。

非鉄金属の埋蔵量も豊富で、農業だけでなく、工業も発達。世界トップクラスの建設機械・重機械大手メーカー、中聯重科(ちゅうれんじゅうか)の本社所在地でもあります。

営業収益ランキングでも、1位と4位に金属メーカー、3位と5位にゼネコン、8位と9位に建設機械メーカーなど、工業が上位を占めているのがわかります。

3大都市に次ぐ旺盛な消費意欲

しかし、注目は工業だけではありません。驚くべきは、その消費能力と消費意欲です。湖南省の人口6822万人は、中国31省の中でも7位の多さ。GDPと社会消費品小売総額のランキングでも、ともに9位にランクインしています。

その社会消費品小売総額をけん引しているのが省都の長沙市。省内の各市のデータを比べてみると、同市がずば抜けて高いことがわかります。実は長沙市の消費意欲は大都市に負けないほど旺盛で、2014年の可処分所得を見ても上海、広州、北京の3大都市に次いで第4位(同年の社会消費品小売総額は長沙市単独で3000億元超)。「長沙人は収入の2倍を消費する」と評されることもあるほどです。

そんな長沙市の消費能力、社会消費品小売総額は年平均12.8%の勢いで増え続け、2016年には4117.40億元に達しています。

買い物好きな長沙市民。いったい何を買っているのでしょうか?

販売実績上位をしめているのは、自動車、医療保険、通信機器関連。もちろんECも好調で、長沙市に拠点を置くEC業者のうち、43店舗は売上高が1000万元を超えており、なかには5億、10億元を売り上げている店舗もあるのです。

同時にここ数年、売上の順調なホテルや飲食店も急速に増加、長沙市の経済成長を加速させています。

参考:
31省市城市人口密度排名(出典:搜狐) 中国語
2018全国GDP排名2017-全国31省市GDP排行榜完整榜单发布时间(出典:阳光美文网) 中国語
2016年各省社会消费品零售总额排行榜 广东第一山东竟然第二(出典:中商情報網) 中国語
2017湖南省公司排名100强【完整名单】(出典:大学生必备网) 中国語
湖南省、長沙市概況(出典:JETRO)
2016年长沙社会消费品零售额居全国省会城市中第6名(出典:华声在线) 中国語

湖南省消費意欲を支えているのは「辛さ」?

湖南省民の「熱い」消費欲を支えているのは、おそらく彼らの食べ物ではないでしょうか?

湖南料理は通称「湘菜」と言い、中国八大料理の一つと数えられていますのですが、その特徴は「辛さ」。

激辛料理といえば「四川料理」を思い浮かべますが、湖南料理の辛さは四川料理とはひと味違います。四川料理は「麻(マー)」、すなわちトウガラシ+山椒を効かせた、舌がしびれるような辛さであるのに対し、湖南料理は「辣(ラー)」。トウガラシをふんだんに使った辛さが特徴。四川料理のコックがあっさりと「湖南料理の辛さにはかなわない」と白旗を揚げるほどの激辛なのです。

もともと亜熱帯気候で山も多く、山や川で取れる動物、魚、植物を使った辛い料理が発展してきた湖南省。トウガラシを含む10種類ものスパイスに付け込んで真っ赤になった湖南醤板鴨、視察に来た毛沢東が絶賛した火宮殿臭豆腐、湖南のご当地B級グルメ口味エビ、などなど湖南省にはおいしい料理がいっぱいです。

ただし、どれにもトウガラシがどっさり入っています。「この辛さはもはや芸術」と評するグルメもいるのですが、辛いものが大好きな人でも要注意です。

参考:
湖南人(出典:バイドゥ百科) 中国語
辣?麻辣?酸辣?中国激辛料理 勝手に辛さ比べ対決(出典:上海ジャピオン) 
湖南十大小吃(出典:博雅特産網) 中国語

湖南人は性格もトウガラシのよう?美男美女も多い

湖南男性の性格を一言で言うと「刃鋼火辣」。誠実で飾り気がなく、堅実、勇敢、屈強、傲岸不遜、困難を物ともせず耐え抜く根性があり、知的好奇心が旺盛で文武両道。人に先んじることを重んじ、弱きを助け強きをくじく任侠者、一匹狼、命知らず……、と続きます。まさにトウガラシの如く、自身にも相手にも厳しい「漢(おとこ)」たちなのです。

参考:
湖南人(出典:バイドゥ百科) 中国語

とはいうものの、経済の発展に伴い省都の長沙市では、外見にも気を配るイケメン男子が増えています。

ここ2~3年のこととして、主に95年以降生まれの若い男性が、仕事帰りにメイクをしてもらいに美容院にやってくるということです。ファンデーションで肌を整え、眉毛を少し濃いめにする程度のナチュラルメイクで、女の子受けが良くなるうえ自分に自信が持てると彼らは言います。

今では「自分でメイクをしてからでなければ外に出ない」という男子もいるそうで、眉を整え、フレグランスを使ったり、プチ整形をする人もいます。父親世代とは異なり、彼らは清潔な身だしなみを好み、優しく穏やかな話し方をし、ダイエットをして体型維持にも気を配ります。

特に長沙市はフレッシュさ・ファッショナブルさ・トレンドがあふれており、長沙市は流行のけん引役として、湖南省だけでなく中国全体の注目をも集めているようです。

参考:
男颜经济当道 长沙越来越多男士开始爱打扮注重仪表(出典:华声在线)
 中国語

では湖南女性はいかに?

聞けば時にトウガラシ的なきつい言い方をすることがあっても、心はトウガラシのきいた料理のように温かく、優しさに溢れていると言います。

北京や上海の女性たちが時代の寵児を追っかけがちな反面、湖南省の女性たちは誠実で揺るぎない愛情を保ち、預貯金や所有物、流行に左右されず、好きになった男性に一生ついていく、という性格の人が多いと言われています。

さらには湿潤な亜熱帯気候とトウガラシに含まれるカプサイシンパワーのため、色白できめ細かで柔らかい肌をしています。背はそれほど高くありませんが、かわいい美人が多く、颖儿(インアル)、柳岩(リウ・イエン)、李金陽(リー・ジンヤン)、劉雯(リウ・ウェン)など、女優やモデルとして活躍している女性もたくさんいます。

参考:
湘妹子(出典:バイドゥ百科) 中国語

まとめ

リテール市場と言えば、北京・上海・広州の3大都市に目が向きがちですが、同レベルの消費意欲を持つ長沙市および湖南省も要チェックです。トウガラシの辛さによって鍛えられた同地の人たちの情熱的なまなざしは、今、最新トレンドに向けられています。