【中国インバウンド】「お一人様感」が中国人消費者のツボに? 4月4日〜4月10日「食べた」ランキングから
トレンドExpressが毎週行っている中国ソーシャルメディアにおける日本関連書き込み総件数ランキング。その中から「行った」、「食べた」、「〇〇したい」などインバウンドに関連したランキングをピックアップし、注目のキーワードを分析します。今回は「食べた」ランキングから、定番外(?)ながら中国人訪日観光客に人気の、あるメニューをピックアップ。
まずランキングトップ10はこちら。
今週のInbound Word:「釜飯」
今回注目するのは、食べたいランキングの上位に、人気日本食メニューに混ざって必ずランクインしている「釜飯」です。
お寿司や焼き鳥、ラーメンなど、日本に来たら食べたいリストに必ず入っている人気メニューに肩を並べるように、「釜飯」は常にベスト10にランキングされています。釜飯の何が中国人をそこまで引き付けるのでしょうか。
釜飯はお米を醤油やみりんなどの調味料で味付けし、その上に具をのせた一種の炊き込みご飯のことです。一人用の鉄釜や土鍋型の陶器の釜で炊き、釜のまま食卓に提供します。
意外と歴史は浅く、大正12年、関東大震災の後の東京上野で行われた炊き出しをヒントにしており、浅草の「釜めし 春」の女将が一人用の釜を開発し、メニューに加えたのが始まりといわれています。
中国には「釜めし」的メニューがない?
中国人の主食も日本人同様にお米ですが、中国で食事をしていて思うのが、残念ながらお米をおいしく感じる機会がとても少ないことです。
日本はお米の味や食感が重視されているので、炊飯器ひとつとっても、いかに美味しくお米を炊くかがポイントになっています。
一方の中国ではおかずを美味しく作ることにこだわっていても、お米はお腹を満たすための食事という認識の方が強いようで、美味しく炊くということにはあまり関心がないように感じます。
中華料理の歴史において、日本の釜めしのようなメニューは広東料理の煲仔饭(バオザイファン)くらいではないでしょうか。こちらも1食分ずつ土鍋で炊いた釜めしになり、ご飯が主役の料理です。
しかし、中国広しといえども、釜めしのようなメニューをほとんど見かけることがありません。
中国人と日本人の食文化の違いが釜めし人気に
お米が主食という共通点はあるものの、中国人と日本人の食文化の違いは色々ありますが、大きな違いの一つに「分餐」と「大釜飯」があげられます。
例えば、中国人は学校や会社の食堂などでは分餐という、個人が一人前の料理を食べるスタイルが主流なので、お弁当や定食などを自分の分だけ食べますが、それ以外ではテーブルを囲んで何種類もの料理を一緒に食べる「大釜飯」がメインになります。
よく映画やドラマで中国の食卓のシーンに出てくる、あの丸いテーブルを全員で囲み、好きな料理を取り、食べたいだけ食べるスタイルが、家庭でも宴会でも一般的なのです。
一方の日本人、特に都会では自分の分を食べる分餐がほとんどとなっています。
宴会や祝い事の席では、テーブルを囲むこともありますが、あまり頻繁にはありません。なので、中国人にとってお米が美味しく、お一人様分の食事を提供するサービスが受けているのではないでしょうか。
好みの具材+お一人様サイズがポイント
外食の際、中国人は複数のメニューを注文することが一般的で、1皿1皿の盛り付けも日本よりはボリュームがあります。
そんな食文化を持つ中国人にとって、コンパクトにまとまったお一人様用の釜めしは新鮮であり、あれこれ食べたい中国人にとっても程よい量です。
そして何より「美味しい」というのがポイントになっているようです。
中国ではWeChatなどを通じて口コミで広がり、釜めしを食する人が増えており、訪日の際に「本場の味を食べてみたい」という人が多いようです。中にはすっかりその味の虜になり、自宅で作ってしまう人もいるほどです。
では中国本土ではどうなのでしょうか? 釜めし人気について、日本食レストランを経営するご主人に聞いてみたのですが「確かによく注文を受けるメニューになっている」とのこと。
ただ、「日本では鶏肉や旬の野菜などの具材が人気だが、中国ではウニやボタン海老、サーモンなどの海鮮が乗ったものがよく出る」そうです。
いっそのこと海鮮丼を頼んだ方が良い気がしないでもありませんが、日本で本場の味を体験し、多くの人にその美味しさを伝えてもらいたいものです。