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越境ECの最新動向からソーシャルバイヤー活用法まで 新たな中国市場アプローチを語るセミナー現場リポート(2)

4月18日に行われた中国越境ECの最新動向を伝えるトレンドExpressのセミナー。100人もの来場者がしたこのセミナー、第二部では上海趣買信息技術有限公司(PP Buyer)Founder and CEOの胡志栄氏をお招きし、中国越境ECにおいて、日本企業にとっては未知の存在「ソーシャルバイヤー」について、胡氏からのプレゼンテーション、そしてディスカッション形式で解き明かしていきました。今回はその前半戦をお伝えします。

 

<第二部ゲストスピーカー>

上海趣買信息技術有限公司(PP Buyer)Founder and CEO 胡志栄氏

<第二部モデレーター>

株式会社トレンドExpress 取締役 津田哲也氏

中国消費者の日本商品購入事情とは?

津田 まず、「そもそも中国の人たちは、どうやって日本の商品を買っているのか」というところからお聞きしたいと思います。

 

胡志栄氏(以下、胡氏):日本の企業さんが中国の消費者にモノを売りたいと考えるばあい、いくつかのパターンが思い浮かぶと思います。一つが訪日観光客に向けた販売、インバウンドです。そしてもう一つが越境EC。特にT-mallや淘宝、京東といった名前が思い浮かぶと思います。

しかしもう一つ、それら以上に中国の消費者が利用しているのが「ソーシャルバイヤー」なのです。中国の消費者が日本の商品を購入しているチャネルを分析すると、以下のような結果になりました

①    日本への旅行時、また知人・友人が日本を訪れた際に頼む(インバウンド)……25%

②    越境ECでの購入(アウトバウンド)……35%

③    SNSを通じたソーシャルバイヤー(代購)からの購入……40%

本当の意味で一番中国人消費者が日本製品を購入しているのは「ソーシャルバイヤー」を通じてのものだということがわかります。

「中国の消費者が日本商品を購入するのはソーシャルバイヤー経由が最も多い」と説明するPP BuyerCEOの胡志栄氏(右)

津田 「ソーシャルバイヤー」という存在、名前は聞いたことがあっても、日本の企業にとってはまだまだ未知の存在です。

 

胡氏:ソーシャルバイヤーは日本の商品で「これは」、と思うものを自身で買い付け、中国の消費者に販売している人たち。中国では「代購(ダイゴウ)」と呼んでいます。この言葉は皆さん聞いたことがあるのではないでしょうか。

彼らは自身が見つけてきた商品、中国で人気になっている商品をWeChatのモーメント(タイムライン)上にアップする事で、フォロワーになっている中国の消費者に紹介。中国の消費者から注文があればそれを買い付け、EMSなどによって発送するのです。

ある例えですが、「中国消費者は、WeChat内に平均1~2人のソーシャルバイヤーのアカウントをフォローしている」と言われており、彼らから日本を含めた海外の製品を購入しています。

こうしたソーシャルバイヤーが利用しているのが、素早く、簡単に商品を売れるシステム我々の『微店(ウェイディエン)』です。

 

津田 意外にもソーシャルバイヤーから購入するケースが一番多いんですね。簡単に今お話に出た御社の『微店』についてご紹介いただけますか?

 

胡氏:『微店』とは、ソーシャルバイヤー向けC to Cプラットフォームです。個人でもこの『微店』上に店舗を開くことが出来、日本買い付けをした商品を『微店』から販売することができます。また取引は微信の決済サービスWeChat Payを通じて支払い、商品を送る、といった形で多くの人が利用しています。

現在は、全世界的で7800万人のソーシャルバイヤーが微店での店舗運営を行なっていますが、日本だけでも45万人のソーシャルバイヤーが存在しています。

ソーシャルバイヤーから買う理由とは?

津田 ありがとうございます。これほどのソーシャルバイヤーが存在していること自体が驚きですが、なぜ中国の消費者はソーシャルバイヤーからモノを買うのでしょうか?

 

胡氏:大きく分けると、以下の3つのポイントがあります。

①    コミュニケーションの多さ

②    「本物」を売ってくれる信頼

③    KOL

 

津田 少し具体的に説明いただけますか?

 

胡氏:まず一つ目は、主にWeChatを活用した消費者とのコミュニケーションです。

最近の研究では中国人が1日にソーシャルメディアを使う時間は10時間とされていますが、ソーシャルバイヤーたちの毎日その時間をWechatでフォローしてくれている消費者とコミュニケーションを取ることに使っています。その内容は主に商品の紹介や説明、発送の時期、価格といった内容。つまりカスタマーサービスですね。ソーシャルバイヤーはこうした時間をかけたコミュニケーションで、消費者と信頼関係を築いていきます。

第二に、日中間の商品を扱うソーシャルバイヤーは80%が日本在住で、日本で買ったものを直接送っていることです。

残念ながら中国ではいまだに偽物が横行しています。さらに大手ECサイトでも偽物が発覚したことから警戒感が強まっている状況です。

それに対し、中国の消費者には「日本で売っている商品に偽物はない」という意識があり、そのため日本在住のソーシャルバイヤーは消費者からの信頼を得やすいのです。

日本企業がECプラットフォームで安く販売しても売れない商品が、ソーシャルバイヤーからはそれ以上値段でも売れるのはこのためです。

新商品など、中国で見慣れていないモノについても、中国人消費者において購入の決定打となるのは、やはり「ニセモノのない日本で購入している」という安心感なのです。

 

そして第三の理由となる「ソーシャルバイヤー=KOL」ということにつながります。

日本企業でも昨今はKOLをプロモーションに活用しようという動きも出ていますが、ソーシャルバイヤーの人たちもWeChatのモーメンツの中でフォロワーに対し強い発信力を有する「マイクロKOL」であるともいえます。

これまで述べたように、彼らはそのフォロワーからの信頼が厚く、モーメンツ内での発言には大きな影響力があります。数百万人のフォロワーを持っているカリスマKOLも存在していますが、フォロワー数は1万人であっても、そのフォロワーと毎日のようにコミュニケーションを取り、信頼関係を築き上げ、さらにそれらに対して販売能力を有しているソーシャルバイヤーは、まさにしくKOLと同等の発信力・販売力を有していると言えるでしょう。

企業がプロモーションや実際の販売を行う際は、こうしたソーシャルバイヤーの起用も考えてみてもいいかもしれませんね(笑)

 

津田 確かに常に連絡を取っている相手に対する発信力には目を見張るものがあります。実際にそうした事例というのもあるようですね?

 

胡氏:そうですね。日本ではそんなに人気でなくても、街中のドラッグストアで軒並み品切れになっている商品があります。例えば「酒粕パック」や「お米パック」、それからONAKAなどのダイエットサプリ。

これらは、KOL化したソーシャルバイヤーたちがWeChatで紹介したことにより中国国内で人気に火が付き、日本在住のそのほかのソーシャルバイヤーたちが買い付けに走り、いわゆる「爆買い」が起こったものです。

このように日本企業のプロモーションによるものではなく、ソーシャルバイヤーが火をつけて販売につながったということが実際に起こっているのです。

 

ソーシャルバイヤーと呼ばれる存在のパワーを感じたセミナー第二部の前半戦。次回は「実際、ソーシャルバイヤーってどんな人なの?」という疑問に答えます。


▼つづきは

越境ECの最新動向からソーシャルバイヤー活用法まで 新たな中国市場アプローチを語るセミナー現場リポート(3)

▼前回の内容は

越境ECの最新動向からソーシャルバイヤー活用法まで。新たな中国市場アプローチを語るセミナー現場リポート(1)