中国トレンドExpress

越境ECの最新動向からソーシャルバイヤー活用法まで 新たな中国市場アプローチを語るセミナー現場リポート(3)

中国越境ECの最新動向を伝えるトレンドExpressのセミナー。第二部では上海趣買信息技術有限公司(PP Buyer)Founder and CEOの胡志栄氏をお招きし、中国越境ECにおいて、日本企業にとっては未知の存在「ソーシャルバイヤー」について、胡氏からのプレゼンテーション、そしてディスカッション形式で解き明かしていきました。今回はその後半戦。

ちなみにセミナー第二部の冒頭では微店CEOの王珂氏よりビデオメッセージも届けられました。

<第二部ゲストスピーカー>

上海趣買信息技術有限公司(PP Buyer)Founder and CEO 胡志栄氏

<第二部モデレーター>

株式会社トレンドExpress 取締役 津田哲也氏


ソーシャルバイヤーってどんな人?

津田 ここからはもう少しソーシャルバイヤーの素顔に迫ってみたいと思います。前述では45万人ものソーシャルバイヤーが日本で活動しているというお話でしたが、彼らはどういった人達が多いのでしょうか?専業?それとも主婦?

 

胡氏:これは、本当にいろいろなパターンがあります。まずは、ソーシャルバイヤーそのものをひとつの職業として行なっている人達がいます。また、一部の留学生もソーシャルバイヤーとして活動を行なっており、これを学費に充てたりしています。

1人のソーシャルバイヤーが一か月に利益として得る金額は、中間層で2~3万元(人民元)とも言われています。

皆さん、最近コンビニやファミリーレストランでアルバイトをしている中国人が減ったと感じたことはありませんか? それは留学生を含む多くの日本在住中国人がソーシャルバイヤーで学費などを稼ぐようになったからなのです(笑)

 

津田 ではソーシャルバイヤーをフォローしている人たちはどうなのでしょうか? もともと友人だった人から商品の紹介などの情報を受け取って、かえって迷惑に感じたりするようなことはないのでしょうか?

 

胡氏:まず中国人消費者の所得が向上している今、多くの消費者はより良い商品を購入したいという欲求が高まり、そうした情報を集めることに積極的です。消費者からすれば、ソーシャルバイヤーはより高いレベルの商品情報を得るための情報源となっているのです。

またソーシャルバイヤーとの関係は、必ずしも実生活で友達であるとは限りません。信頼度の高い情報を発信しているソーシャルバイヤーの場合は、口コミなどで噂を聞きつけた消費者がフォローしています。

 

津田 ソーシャルバイヤー1人当たりで、どのくらいのフォロワーがいるものなんですか?

 

胡氏:一人の代購は平均して400~500人ほどのフォロワーを抱えています。

 

津田 なかなかの数ですね。さて大きな問題なのですが、こうした多くのフォロワーを持つソーシャルバイヤーの活動によって販売は増えているものの、店頭での欠品に頭を痛めるメーカーや小売店もいます。こうした現象を避けることはできないのでしょうか?

 

胡氏:ソーシャルバイヤーは、直接メーカーなどから商品を卸されているわけではなく、一消費者としてドラグストアなどの店舗で購入し、それを中国の消費者に向けて売っています。このため、小売店舗ではソーシャルバイヤーの大量購入によって品切れなどの混乱も起こってしまっています。これは大きな問題だと私たちも認識しています。

しかし同時に、ソーシャルバイヤーというものが非常に影響力を有している影響力も事実であり、中国向けの販売においても無視できない者と感じます。ソーシャルバイヤーの宣伝力、拡散力を利用しながらも、市場に混乱が起きないような形で、まったく新しい販売ルート作り上げることが大切ではないかと思っています。

「ソーシャルバイヤーを活用しつつ市場が混乱しないシステムを作りたい」と語るPPBuyerの胡CEO(右)

ソーシャルバイヤーの真の価値と活用方法は?

津田 メーカーにとって商品の欠品は大きな問題です。長く続くと、消費者が他のブランドに乗り換えていく、いわゆる「ブランドチェンジ」が起こります。こうなると生産が回復、増産したところで販売が伸びない可能性もあります。特に移り変わりの早い中国市場においては、そのサイクルも短いように思いますが。

 

胡氏:おっしゃる通り、長期にわたって欠品が続く場合、中国人消費者の興味は他のブランドに移ってしまうでしょう。これは中国に限らず、消費者の自然な特性であり、やむを得ないことだと思います。

しかしソーシャルバイヤーによる爆買いの問題に日本メーカーが対応できない理由は、ソーシャルバイヤーがどこでどう購入しているのか、消費者がどれだけ商品を欲しがっているかが見えないために、商品の生産計画に織り込めないことです。日本のメーカーにはソーシャルバイヤーと連携するためのつながりがなかったと言ってもいいでしょう。

そのためにも、ソーシャルバイヤーの動向やその先にある消費者のニーズを「見える化」し、上手にコントロールすることで、これまで受け身だった爆買いを「計画された爆買い」へと変えていくことだと考えています。

理想的なのは、『微店』が間に入り日本メーカーとソーシャルバイヤーを繋げるシステムではないかと思っています。微店はソーシャルバイヤーに対して日本メーカーの商品を紹介、ソーシャルバイヤーはここから商品情報を得て中国の消費者に紹介、販売、商品の発送などはメーカー側が行っていく……。今回はトレンドExpressと提携し、そういったモデルを作り上げました。

これによって企業側は小売店での予想外の品切れを防げるとともに、ソーシャルバイヤーから購入した消費者層のモニタリングが可能になります。

またソーシャルバイヤー側は、小売り価格よりも安い価格で商材の買い付けができ、さらに自身で郵便局まで行って購入したものを発送する、という手間がかからなくなる、双方にとってメリットがある形になります。

 

津田 うまくメーカーとソーシャルバイヤーの連携関係が作り上げれば、中国向け販売も非常にスムーズに行えそうですね。

「微店との新しい越境ECシステムが日本企業の助けになれば」と期待を見せるトレンドExpressの津田取締役

胡氏:日本のメーカーにとって「売りたい商品を売れる」状況を作り出すことが、これからの越境ECに必要ことだと思います。

ソーシャルバイヤーを上手に活用するということは、平均して400~500人の顧客と日ごろ密なコミュニケーションを取り、また彼らに対して強い影響力を持っている販売員を手に入れることと同じ意味を持ちますから。

日本だけでも45万人の代購が活躍している今、彼らを利用した新しい販路の開拓は、企業にとっても新たな可能性を秘めています。

 

津田 ありがとうございました。


▼前回までの内容は

越境ECの最新動向からソーシャルバイヤー活用法まで。新たな中国市場アプローチを語るセミナー現場リポート(1)

越境ECの最新動向からソーシャルバイヤー活用法まで 新たな中国市場アプローチを語るセミナー現場リポート(2)