中国トレンドExpress

女性のお悩み番外編~宿題は毎日3時間!耐える子供と苦悩する母(1)

中国の小中学校の宿題が多すぎる、という話を聞いた事があるでしょうか。

最新の「中国中小学宿題圧力報告」によると、ここ3年間で、小中学生の宿題にかかる平均時間は”3.03時間/日”から”2.82時間/日”に減少しました。それでも、これは世界平均の3倍、アジア圏内で比較すると、日本の3.7倍、韓国の4.8倍にあたります。「たがが宿題、されど宿題」・・・、宿題の多さは中国の教育体系を体現しています。

今回は子供のみならず、その母親たちをも悩ませる、中国の宿題事情について、中国国内での調査データを踏まえながら紹介します(全2回)。


女性の悩みにもなっている「子供の教育」

中国トレンドExpressでは、今年3月、「中国の女性の悩み」をテーマにした特集をお届けしてきました。そのなかで「子供の教育に悩む」女性の比率が比較的高いということをお伝えしました。

そう、中国で子供を持つ女性にとって、子どもの学習状況、成績は非常に頭の痛い問題になっています。先のデータを見てみましょう。

【参考】中国女性のお悩み分類

【参考】「子供の教育」に関する具体的な悩み

これを見ると、中国の「お母さん」たちが、子どもの将来的な「学歴」や入学する「学校」に非常に強い関心を抱いていることが見て取れます。

2017年6月には日本でも中国の大学入試「高考」がクローズアップされ、ワイドショーなどでも報道されました。

中国ではまさに「大学受験に人生がかかって」います。そのため、学校からは進学率アップのために宿題がたくさん出され、親には学力アップのために塾へ通わされ、寝る時間を削ってまで勉強する生活に、子供たちは巨大なプレッシャーを感じています。

家庭も総力を挙げてそれに応じつつ子供を育てているのですが、かつての「詰め込み式教育」時代を超える超学歴社会の激しさに、多くの日本人が驚き、中国の子供たちに同情を寄せ、そして一部からは中国の親たちに批判的な意見もありました。

しかし、こうした学歴社会と勉強負担に苦しんでいるのは子供たちだけではありません。その保護者達も苦しみの渦中にいるのです。

子供の宿題を毎日手伝う親たちの苦悩

子供、おもに小学生の宿題の内容は、基本的に国・数・英の3教科(中国では英語は小1から必須科目)で、ドリルやプリントなどの紙ベースのものに加え、暗記や朗読、読書などがあり、週末にはスピーチ用のPPTやレポートの作成などもあります。

あまりの多さに寝る時間が減ることを恐れる親たちは、監視するように宿題に付き添い、時には手伝うこともあります。代わりに問題を解いたり、PPTやレポートを作成したり、子供の書いた作文を修正することさえあります。

また、教師から、例えば、漢字の書き取りや算数の答え合わせ、漢詩や英文の暗記のチェックをするよう求められたり、朗読やスピーチを撮影してSNSを通じて教師へ送信するなども日常茶飯事です。子供の教育情報APP「上哪学」の調査によると、実に78%の親が毎日宿題に付き添っているとのこと。

毎日宿題に付き添う肉体的・精神的疲労、学校の学費に加えて塾や習い事などの経済的プレッシャー、他の子供たちと比較する焦燥感・・・。大量の宿題に悩まされているのは子供たちだけではないことがわかります。

では子供たちは現在、どのくらいの宿題をやっているのでしょうか? 子供たちの宿題事情を数字から見ていきましょう。

地下鉄やレストランでも。数字で見る子供たちの宿題事情

「上哪学」がWeChat(微信)を通じ、上海市内の小学生を持つ約500人の親たちを対象に実施した「小学生の宿題と睡眠状況」調査を行っています。

その調査によると、「宿題量問題の温床」と言われている公立と私立に通う子供たちが毎日宿題にかける時間についての質問には、「2時間以上」と答えた親が全体のおよそ半数に達しました。さらにそのうち約17%が「3時間以上」と答えています。

続いて学年ごとの勉強時間を見てみましょう。

3年生以上を見ると、2時間以上が約70%、うち3時間以上が約32%となっており、5年生になると「1時間以下」という回答は全体の2%未満と、非常に少ない数値になっています。

気になるのは健康を左右する睡眠時間です。

1年生でも「10時間以上」の睡眠は3割程度、4年生になると約13%が8時間未満という結果です。日本では低学年では「10~10.5時間」、高学年でも「9時間以上」が理想的とされていますが、中国でそれを実現するのはなかなか難しそうです。

帰宅したらすぐに宿題に取り掛からないと終わらないので、ほとんどの小中学生は、放課後に友達と遊んだり、テレビを見たりゲームをしたりする余裕がありません。それどころか、授業の合間や昼休み、スクールバスを待つ時間を利用し、学校にいる時から宿題を始めます。

また週末には、レストランで並ぶ間や食事を待つ間にも宿題。春節(旧正月)の祖父母への家お泊まりにも、親戚一同の食事会にも、冬休みや夏休みの旅行先にも宿題を持参。とにかく至る所で宿題に向かう子供たちの姿が目に移ります。

子供たちの負担は宿題だけではなりません、学校の宿題に加え、補習塾や学習塾、英会話や水泳などの習い事へ通ったり、自宅学習用の教材をやらされる子供たちも少なくありません。

当然、塾へ行く車や地下鉄の中でも宿題をします。そして、そちらに中国のお母さんたちは付き添っているのです。

こうしたデータを見ると、中国の子供たちの宿題負担が決して一部の親のエゴによるものではなく、社会的な要因によるものが多いことがわかると思います。

「子供はかわいそう。でも、それに乗らなければ、もっとひどいことになる…」。そんな葛藤とストレスの中、中国のお母さんたちは子供の宿題に向かい合っているようです。

中には、疲れがたまった母親が宿題に集中できない子供を怒鳴り散らし、後になって後悔する…。そんな書き込みがWeiboなどに散見されます。

プレッシャーに堪える子供に対してももちろんですが、こうしたお母さんたちへのケアも重要になっていると専門家も見ています。

母子そろってリラックスが求められているのかもしれません。

次回はそうした教育負担軽減施策とその現状について紹介します。