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【中国コンテンツBiz】 巨大アニメ消費国中国 しかし、その実態は…?

中国ではコンテンツ、特にアニメ産業が拡大を続けています。市場規模においてはすでに日本レベルにまで達しており、それはさらなる拡大を見せています。

これはアニメやゲームなどのコンテンツ産業に強みを有する日本にとっては非常に大きなチャンスなのですが、そのチャンスをどのように掴んでいくべきか…悩みを抱えている企業も少なくありません。

そこで中国トレンドExpressでは中国のアニメを中心としたコンテンツ産業の情報を収集。同市場の事情を把握しつつ、日本企業にとっての活用法を考えていきたいと思います。

第1回となる今回は中国アニメ産業の基礎情報を確認しながら、中国アニメ産業の抱える課題、そこに見える日本企業のチャンスを見ていきましょう。


市場規模もうなぎのぼりの成長産業

日本ではアニメ産業の市場規模が2兆円を超えましたが、中国でも2017年には1500億元、に日本円にして2.5兆円を超えたことが報道されており、金額面ではすでに「アニメ大国」日本に並んだことになります。

【参考】中国のアニメ産業市場規模の変移(単位:億元)

出所:『中国産業信息』

中国国内でも数多くのアニメ制作会社が存在しており、多くの作品を提供しています。アニメ映画の数字だけを見ても、年によって増減はあるものの、年間で250~300本ほどのアニメ映画が製作されていることが見て取れます。

【参考】中国のアニメ映画年間製作本数

出所:『中国産業信息』

しかし、大きな問題もあります。中国でも数多くのアニメ映画が上映されています。その本数の比率は国産70%に対して海外作品は30%と、圧倒的に国産の方が多くなっています。

しかし、興行収入で見ると、2015年に海外作品に迫ったものの、2017年には海外作品が倍以上の収入を得ていることになります。

つまり、中国では「収益性の低い作品を大量生産している」ということになります。

【参考】中国におけるアニメ映画における興行収入(単位:億元)

出所:『中国産業信息』

この原因の一部は政府の助成金です。

中国におけるアニメ人気の成長を見て、「クリエイティブ産業育成」を旗印にした助成金制度を展開しました。しかしその結果、助成金だけを得て、レベルの低い作品を生産しているだけの企業や、企業の進出の見込みがないままアニメ産業園区(※工業園区)を開発したりといった「助成金ビジネス」になってしまい、消費者の十分な評価を得られるものではないことが多いようです。

2017年、前述したように300本を超えるアニメ映画作品が「制作」されいますが、実際に「上映」されたのは、わずか39本という現実もあり、「果たして上映する目的で制作しているのか」という疑問も浮かんでくるほどです。

ちなみに日本のアニメーションは、特別な場合(「日本映画ウィーク」など)を除いて上映、放送することができません。そのため、上映されているものの大多数はアメリカの作品。ディズニーやワーナーブラザースの作品が多いのです。

しかし、多くの90後、95後、00後といった若者世代は、数多くの日本のアニメ作品を好む傾向が強く、根強い人気を得ています。

こうした事情の背景は、徐々にこのコーナーで紐解いていきたいと思います。

人気の高い日本アニメ。しかし日本企業のプロモーションには

中国における日本アニメの人気ぶりについては、上海では毎年「CCG」というアニメ展示会が開かれますが、その会場でも見て取れます。

展示会に出展しているバンダイや集英社、講談社などの日本のアニメ商品ブースには、数多くの高校生、大学生が詰めかけ、長蛇の列。ライトノベルのブースでの作者サイン会でも、作品を手にした高校生~社会人が列を作ります。

また中国国内の動画サイトでも日本のアニメは無くてはならない存在。

2012年に日中関係が悪化した際、多くの動画サイトから日本の連続ドラマや映画作品が姿を消しましたが、「アニメ」のみはそのまま提供されていたことからも、中国の動画サイトにおいても日本のアニメが「ドル箱」になっていることが見て取れます。

また江ノ島電鉄の踏切をはじめとして聖地巡礼に訪れる中国人観光客も多いこともすでに広く知られており、中国いまやインバウンドビジネスにも影響を与えるまでになっています。

ここまで人気の日本のアニメ、これを活用すれば中国の若者向けの大きな訴求ポイントになるはず。すでに中国企業において日本のアニメコンテンツを市場でのプロモーション戦略に活用しようという動きが長く続いています。

その一例が中国のティッシュメーカーである「潔云」。

同社は中国でも中堅製紙メーカーですが、2013年に日本の「ちびまる子ちゃん」をパッケージに起用した商品を売り出しました。もちろん、中国(上海市)にある正規のライセンス会社からライセンスを取得し、日本の版元の指示も受けつつパッケージをデザイン。

その上海のライセンス会社によると、もともと「潔云」では同製品の年間売り上げを3000万元程度と見込んでいたのですが、実際には数億元にまで上り、1年間のライセンス契約を延長することになったと言います。

その背景には「ちびまる子ちゃん」というキャラクターが、主に小学生から大人にまで広く認知度を得ていること。またティッシュのような比較的価格の低い商品でアニメキャラクターを起用したケースがなかったことがあげられます。

結果、多数の競合が並ぶスーパーの棚でも目立ち、親が子供にせがまれて購入する…というパターン、また成人しても「ちびまる子ファン」の大学生やホワイトカラーがそれを見つけ購入するというパターンで販売量が拡大したようです。

ちびまる子ちゃんパッケージのティッシュに喜ぶちびまる子ちゃんファンのクチコミ(2013年当時)

しかし、こうした日本のアニメーションを活用し、中国市場でプロモーションを行っている企業というのは、非常にまれです。

ローソンが『名探偵コナン』、『ウルトラマン』などを使った店舗イベントを開催したり、眼鏡メーカーのJINSが『ワンピース』や『エヴァンゲリオン』とのコラボモデルを展開(日本国内と同商品)しましたが、決して多くなく、現地の正規ライセンス企業も「もったいない…」とため息交じりに話すほどです。

本コーナーでは今後、こうした中国のアニメを中心としたコンテンツ産業の実情と消費者ニーズを探りながら、中国マーケティングへの活用法を考えていきたいと思います。