【訪日中国人】中国アクティブ世代を取り込め 国慶節に年末~春節、最新インバウンドデータから読む
中国夏休みシーズン真っただ中。すでに国内には多くの中国人観光客が訪れている模様。夏休み自体は8月いっぱいで終了しますが、その1か月後には国慶節、さらに国慶節から2か月後には年末シーズンと、中国消費者が海外へと出かける機会も増えていきます。
そんな年末のインバウンドに向け、大切なのが中国消費者のニーズを探ること。そこで今回は、Hotels.comがまとめた『2018年中国游客境外旅游調査報告』から、最新の中国人観光客、なかでも注目の「ミレニアル世代(2000年以降に成年を迎えた世代)」の海外旅行ニーズを見ていきましょう。
中国で現在、消費の主力であり、そして最もアクティブな世代と言われているのが「80後(1980年代生まれ)」や「90後(1990年代生まれ)」、そして新世代である「95後(1995年以降に生まれた世代)」。
彼らはすべて西暦2000年以降に成人を迎えたことから「ミレニアル世代(千禧一代)」と呼ばれています。経済発展の中で育ち、インターネット、スマホ、SNSとともに歩んできた世代であり、より開放的、個性的な価値観を有した世代です。
まずは、そんなミレニアル世代の「行きたい目的地」から見ていきましょう。
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一番行きたい目的地は…
昨年2位に泣いた日本でしたが、今年は1位に。訪日人気がいまだ衰えていないことが見て取れます。
【表】行きたい旅行目的地
順位 | 目的地(国・地域) | 前年順位 |
---|---|---|
1位 | 日本 | 2位 |
2位 | タイ | 1位 |
3位 | 香港 | 4位 |
4位 | 韓国 | 6位 |
5位 | オーストラリア | 3位 |
6位 | マカオ | ― |
7位 | アメリカ | 5位 |
8位 | シンガポール | 9位 |
9位 | カナダ | 10位 |
10位 | ニュージーランド | ― |
またビザ取得が容易な「タイ」が2位にランクインしています。タイ、シンガポール、マレーシアは中国では海外旅行目的地の定番。早くから中国からの観光客を受け入れていたこともあり、いまでも人気となっています。
その中でもタイが人気なのは、タイを舞台とした中国コメディ映画『泰囧』の影響も大きいと推測されます。
5位にランクインしているオーストラリア、9位のカナダ、10位のニュージーランドなどは中華系移民・留学生が多く、中国人にとって「身近」な外国であることも理由に挙げられます。
続いて「旅の途中にいくらぐらい使うのか?」という問題。世代ごとに見てみると、その違いは明確になります。80後世代(29歳~38歳)が最も高いのは、もともと中国でも新しい世代であり、自分自身に対する投資に積極的であること。また主に後半の世代は企業で中堅以上のポジションについていたり、個人の事業を軌道に乗せていたりと、経済的にも充実しているためと思われます。
【グラフ】日平均消費金額 単位:USドル
出所:Hotels.comの調査レポートをもとに中国トレンドExpressで作成
旅行中は写真撮影、そしてWeibo&Wechatで発信!!
ミレニアル世代の特徴ともいえるのが「スマホ」と「SNS」。それがこのレポートにも色濃く表れています。
レポートでは、旅行中のスマホの利用方法においては「写真や動画の撮影」という回答が最も多く、なかでも「自撮り」によって自分の感動を表す比率が非常に高いと報告されています。
さらに全体の60%が旅行中「3~5本の情報をSNS上にアップする」と回答、16%のミレニアル世代が「5本以上アップする」と答えています。
【表】ミレニアル世代旅行中のスマホの使い方
写真や動画の撮影 | 70% |
家族との連絡 | 68% |
SNSへアップロード | 52% |
出所:Hotels.comの調査レポートをもとに中国トレンドExpressで作成
こうした状況から見えるのは、旅行の目的というものが単に「非日常を体験する」や「リフレッシュ」だけでなく、同時に仲間との感動の共有にもあること。そしてなにより「自己顕示」といった根強い意識も見受けられます。
それゆえ、いわゆる「誰もが知り、行きたがる場所」や「SNS映えのする場所」へのニーズが高まるのです。
70年代はアート、80年以降は「聖地巡礼へ!」
ではこの世代は、どういったものに興味を向けるのでしょうか?レポートでは60後(1960年代生まれ)から90後までの異なるニーズが見えています。
80後や90後のミレニアル世代は、「音楽フェス・ライブ」や「ロケ地めぐり(いわゆる聖地巡礼)」といった、華やかなイベントや個性的なイベントを好む傾向が見えます。
それに比してまず年配層である60後世代ではあまりアクティブなイベントには興味は向かないようですが、70後を見てみると、「美術館」へのニーズが高い事が見て取れます。
【グラフ】年代ごとのイベントニーズ
出所:Hotels.comの調査レポートをもとに中国トレンドExpressで作成
ミレニアル世代は中国国内だけでなく、数多くの海外のドラマや映画、そしてアニメに触れてきた世代であり、こうしたコンテンツの影響を色濃く受けている世代です。
しかし70後世代は、こうしたコンテンツを受けながらも、ミレニアル世代よりは数が少なく、社会的地位も高い事が多いため、いわゆる「文化、教養」を補おうという意識が強い傾向があります。
そのためミレニアル世代のような「動態」のイベントではなく、美術や文化体験のような「静態」のイベントに目を向ける意識が強いのです。いわゆる「教養を漂わせる人=成功した人」という意識です。
一言に中国人訪日観光客と言っても、世代だけでも観光地に求めるものが違うというわけです。
やってみたい「急流下り」。アウトドア志向の高まり
さて、よりアクティブなイベントを好むミレニアル世代。彼らが「やってみたい」と思うイベントについても見てみましょう。
特にレポートでは、若干危険の伴う激しいアクティビティについて聞いています。こうした背景には、「日常と異なる体験」、「ほかの人がやったことの無い体験」をしたいという欲求が存在しています。
【グラフ】ミレニアル世代が好むアクティビティ
出所:Hotels.comの調査レポートをもとに中国トレンドExpressで作成
ミレニアル世代の興味を引いているのがカヌーなどを使った「急流下り」。
中国の河川は雲南省などの一部の地域を除いて、多くが山々の間を流れる大河であり、急流下りが楽しめるちょうどよい川というのがなかなか見つかりません。そのため、山岳地帯でなおかつ水のきれいな場所での急流下りといったアミューズメントは人気が高いのです。
またそれ以外にジャングル体験、さらにはペイント弾を使ったサバイバルゲーム、さらには活火山からの滑降(スキーなど)といった、大胆なイベントが並んでいます。
共通しているのは、やはり自然の中のアクティビティということでしょう。
海外旅行を行うのは主に大都市のホワイトカラー以上。彼らは日々近代的都市の中で生活していますが、健康志向の高まりから自然と触れ合うことへの意識が高まっていることが背景として考えられます。
またこうした自然の中でのアクティビティの様子がインターネットの動画などを通じてもたらされることから、流行のスポーツとしての興味が高まっているのです。
こうした傾向はトレンドViewerにも表れています。「〇〇したい」では「渓流下り」や「森林浴」といった、やはり自然を感じるイベントがランクインしています。
今後はこうした自然を活用しつつ、ミレニアル世代に刺さるアクティビティの開発、そしてその情報発信が重要性を帯びてくるでしょう。
次回は同レポートから、中国人観光客が感じる、海外のちょっと残念なところなどについて分析します。