2017年国慶節、訪日中国人の動向(1)いつ、どこから、誰が来ていた?~滞在日数は「5日間」に集中~
中国国家旅游局(CNTA)の統計によると、今年の国慶節に海外旅行に出かけた中国人旅行者は約600万人、渡航先は88か国1,155都市に及びました。
これまでも何度かお伝えしているとおり日本は人気の旅行先の1つです。中国の大手旅行予約サイト・携程(Ctrip)が発表した「2017年国慶・中秋節の旅行トレンド報告および人気ランキング」では、タイに次いで2位となっていました。
今年の国慶節、日本の楽しみ方に変化はあったのでしょうか? 今回は中国トレンドExpress恒例、国慶節振り返りをお届けしたいと思います。
参考:
中国人旅行者、大型連休「国慶節」中の海外旅行は600万人規模に、中国国内旅行は7億人突破(出典:トラベルボイス)
中国・大型連休の海外旅行先、「意外な」国が観光客に人気(出典:AFPBB NEWS)
2017年国慶節、訪日中国人の動向 旅の思い出をつづる? 連休終了後もクチコミは増加
日本旅行に関する書き込みの中から、国慶節に関するものについてその推移を見てみましょう。
データ出所:2017年9月24日~10月24日、新浪微博、Wechatオープン部分、BBS、BLOGの日本旅行に関する投稿の中から「国慶節」というワードを含む内容を抽出、集計
昨年と比較すると全体的に書き込み件数が増加しています。
書き込みが最も多かったのは連休開始から3日後の10月3日で、連休前半に日本を訪れた方が多かったことがうかがえます。
昨年は国慶節初日にピークがあり、連休最終日に向かって減少、国慶節終了後も減少から横ばいに転じました。
今年は5日にクチコミが減少したのち翌日からクチコミが再び増加し、国慶節が終了してもしばらく増え続けています。
この動きから、連休が長期だったことから訪日が前半と後半に分かれていたことが考えられます。また、終了後も数日は書き込みが増加したことから、後半に訪日した方が帰国後に旅の思い出について積極的に書き込んだ様子もうかがえます。
子供の朝食の様子をアップする女性は「今回の日本旅行で多めに買ってきたアンパンマンのグミは娘のお気に入り。本当かわいい!」とお菓子を紹介しています。
また「昨日と今日の夕飯はこんな!生ビールは本当おいしい!」という書き込みもあり、10月8日までの「国慶節期間」を過ぎても日本で休暇を楽しんでいる旅行者もいたようです。
他には日本旅行をまとめたブログ、鹿児島の歴史を紹介する書き込みなどが見られました。ブログでは写真が多数紹介されており、「エスカレーターの右側をあけておく東京」「おじぎする鹿」「バス待ちの列(ほんとにまっすぐ!)」「マンホール」「京都の小道」「手洗いの水は便器の中に落ちて再利用」など、目にする光景の端々までとらえて楽しんでいる姿がうかがえました。
2017年国慶節、訪日中国人の動向 ペルソナ分析~上海からの訪日旅行客が増加~
次に、国慶節に日本に旅行したことがわかる書き込みから、そのペルソナを分析していきましょう。
まずはエリア分布からです。今年は上位に動きがありました。
データ出所:SNS上の書き込みから、国慶節に日本に旅行したことが判明したものを収集し、集計。以下グラフはすべて同様。
今年は1位「上海市」、2位「広東省」、3位「江蘇省」、4位「山東省」と続き、5位「河北省」に次いで「北京市」は6位という結果になりました。
▼どんなところ? 「江蘇省」「山東省」「河北省」
中国・都市解説(3)山東省(済南市) ~無骨な男性と古代の思想家が支える裕福な沿海部~
中国・都市解説(4)河北省(石家荘市) ~避暑地を悩ませる鉄鋼産業の大気汚染、「雄安新区」のハイテク産業が解決なるか~
中国・都市解説(5)江蘇省(南京市)~いにしえの首都 江蘇人は日本人のパートナーに最適?~
上位以外のエリアは昨年とあまり変化はありませんでした。
昨年との大きな違いは、北京市のランクダウンでしょう。昨年は1位が北京市、2位が広東省、3位が上海市でした。
インサイトを探る…上海市と河北省の中国人は日本が好き?
中国旅行研究院が発表した「2017年国慶節中秋節旅行消費ビッグデータレポート」によれば、この時期の旅行消費者数別の上位3地域は「広東省」「江蘇省」「山東省」となりました。ほか「河南省(鄭州市)」「浙江省(杭州市)」「湖北省(武漢市)」「四川省(成都市)」「上海市」「北京市」「湖南省(長沙市)」がトップ10にランクインしています。
レポートの図では消費人数の多い順にグラデーションで示されているため、正確な人数や順位は読み取れませんが、「北京市」は河南省や浙江省よりも旅行の盛り上がりが低かった様子がうかがえます。そのため、日本旅行書き込みユーザー数も低下したのではないでしょうか。
反対に、今回トレンドExpressで調査した結果でダントツの1位となった「上海市」は中国旅行研究院の調査結果ではTOP3には入っていません。その中でこんなにも多くのクチコミ投稿があったということは、上海では日本旅行がかなり流行していると言えそうです。
また同様に、今回トレンドExpressで調査した結果では第5位にランクインした「河北省」は、中国旅行研究院のデータでは特別旅行者が多いということはありません。その中で書き込みユーザーの比率順位では5番手に並んでいますので、河北省では今年の国慶節期間、「日本旅行」がブームとなっていた可能性があります。
実際には、中国旅行研究院の発表したTOP3の「広東省」「江蘇省」「山東省」からの旅行者は上海市からの旅行者よりも多かったかもしれません。上海市の「日本ファン」が抱いているのと同じくらいの書き込みの動機づけを持ってもらえれば、クチコミの拡散により旅行市場での日本の存在感は増大するでしょう。
中国のどこの地域に訪日旅行のニーズがあるのか、SNSへの投稿を後押しする仕掛けが十分なのか、注意を払っていく必要がありそうです。
参考:2017国庆中秋旅游消费大数据报告(出典MEADIN.COM) 中国語
若返る日本旅行者~性別、年齢別~
男女比では、昨年とほとんど変わらず6割が女性でした。
性別と違い、年齢層には大きな変動がありました。グラフの横軸に年齢をとり、昨年と今年の年齢別書き込み比率を比較してみます。
2016年は35-50歳が36%と最多でしたが2017年はこの層の割合は半分近く減少しました。2017年は25-34歳が最多の37%、19-24歳も増加して27%となっています。
9月中旬、中国の一部地方都市において訪日団体旅行が制限される動きが始まったとの報道もありました。この動きによって広まった「個人旅行」の潮流が若年層の比率を押し上げたのかもしれません。
そうはいっても、51-80歳の層は昨年比では増加しています。団体旅行制限の地域や時期は限定的で、ツアー客の減少は相対的な減少にとどまる可能性もありそうです。
個人旅行者といえば「地方拡散」「コトの多様化」をけん引しています。また前半で紹介したブログの内容のように、何でもないような道端の光景に目を留めるような「生活するように旅行する」スタイルもこれから広まっていくのかもしれません。
「コト消費」については、特集後半の「国慶節コトランキング」などからもその動向を探っていきたいと思います。
参考:
中国が訪日団体旅行を制限 外貨流出警戒か(出典:日本経済新聞電子版)
滞在日数は縮小傾向も、「2~3日だけの滞在」は激減
最後に「滞在日数」を昨年と比較しながら見ていきましょう。
去年は6日が最多で3割近くとなっていましたが、今年は 5日間が一番多く4割近くに上ります。やはり連休が長かった分、訪日が前半と後半に分かれる傾向にあったのかもしれません。
一方、2日間や3日間といった短期での日本旅行が大幅に減少しているのは悪い傾向ではありません。6日間、7日間の割合が減少しているのは気になりますが、ある程度の日数をかけて日本を楽しむ機運が高まっているのであれば、この流れを逃さずしっかり集客していきたいところです。
まとめ
2017年の国慶節では、「訪日中国人の若年齢化」や「北京市のランクダウン」という大きな動きが見られました。若年齢化については、9月中旬に実施された団体旅行制限もさることながら、やはり個人旅行客の増加が影響を及ぼしたと考えられそうです。
特集の後半では、買った「モノ」、した「コト」ランキングを紹介します。
若年齢が増加したことが影響してか、結果には大きな変化が現れています。変化の中身を追っていきたいと思います。
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【特集】2017年国慶節、訪日中国人の動向(2)クチコミのモノ対コトの比率をチェック!注目は「鹿」「紅葉」「コンサート」