【越境EC】ソーシャルバイヤーと日本メーカーの熱い夏! 再考・日中ビジネスの担い手
8月25日、都内某所には約200名もの人たちが集まっていました。集まったのは「ソーシャルバイヤー」。かつては爆買いの火付け役と言われ、現在は中国に向けて中国消費者の求める日本商品を送り出すという存在です。
今回はそんなソーシャルバイヤーの熱気に包まれたイベント「JAPAN GOODS EXHIBITION」の現場から、改めてソーシャルバイヤーについて考えてみたいと思います。
※そもそもソーシャルバイヤーとは?
個人で商品を買い付け、SNSを使って消費者に告知、販売を行う人たちの事。
2014年から始まった「爆買」ブームの真の火付け役ともいわれていますが、多くは留学生や主婦、ビジネスマンという、いわゆる一般の人。ただ近年は専業ソーシャルバイヤーも多数存在している模様で、中国のソーシャルバイヤープラットホーム上には45万店舗もの日本商品取扱店舗が存在していると言われています。
開場1時間前から長蛇の列
日本在住のソーシャルバイヤーと日本のメーカーを繋げようという、初の試みである「JAPAN GOODS EXHIBITION」。
例年を超える暑さの中、開場の一時間前にはすでに長蛇の列。主催者側が用意した受付前から、会場となったビルの入り口外まで、ソーシャルバイヤーたちが並び開場の時を待っていました。
それもそのはず、今回のイベントには9社の日本メーカーが出展しており、それぞれの会社・商品紹介やブースでサンプルを体験するなど、メーカーとソーシャルバイヤーが直接コミュニケーションをとることができる貴重な場なのです。
また今回来場したソーシャルバイヤーは彼らのプラットホームである「微店」に店舗を持っているバイヤーたち。同時にWeChatでは数多くのフォロワー(すなわち顧客)を抱えており、常に日本商品を中国に向かって発信している人たちで、常に中国のフォロワーのニーズに応えられる商品を求めている人たちです。
そんな両者が出会う今回のイベント、会場ではバイヤー側から積極的にメーカーブースを回り、商品についての細かなレクチャーを受け、同時に商品や資料の写真を撮影し、自身のSNS上にアップしていました。
さらにはメーカーからの説明がある間、メーカーの用意したスライドやCM動画をスマホで撮影・記録し、すぐに自身のWeChatフォロワーグループ(モーメンツだけではなく、フォロワー属性ごとにグループを作っているケースが多い)にアップ。商品についての情報を共有している姿があちこちで見られました。
このようにしてソーシャルバイヤーたちは、得た情報をすぐにフォロワーと共有。フォロワーからの質問にも一つ一つ確認、回答することで、フォロワーからの信頼を得ているのです。
知名度だけでなく季節性、消費者嗜好を読んだ買い付け
来場し、メーカーとのコミュニケーションを行っていたソーシャルバイヤー。イベント会場ではどういった印象を持ったのでしょうか?
ある1,000人ほどのフォロワーを抱えている女性ソーシャルバイヤー(20代後半)は、「会場の半分のメーカーはすでに知っていたブランドで、中国消費者からの問い合わせも多い。もう半分のブランドは初めて見たブランドでしたね」と語ります。
その「初めて接触したブランド」が売れそうか尋ねたところ、「フォロワーに推薦してみたいと思います。こうしたブランドの商品を中国の消費者が買わないのは“知らない”から。中国の消費者が知っている日本ブランドは、まだまだ少ないんです」と答えてくれました。
また別のソーシャルバイヤー(フォロワー1,000人以上)に気になった商品を聞いてみたところ、高価な化粧品ではなく「タイツ」と答えました。しかも1人や2人ではなく、非常に多くのバイヤーが出展されている女性向け冬用タイツに注目していました。
その理由は「夏が過ぎれば冬になる。特に北京などは冬が早いから、こうしたニーズが増える」と回答してくれました。
つまりソーシャルバイヤーたちは、単純に「人気商品だけ」を集めて売っているのではなく、季節やそれに応じた消費者ニーズの変化を見ながら買い付けている商品を決めていることがわかります。
しかし、繰り返しますが、こうしたソーシャルバイヤーたちは、もともとこうしたビジネスを経営していた経営者でもビジネスマンでもないケースがほとんど。多くが留学生や主婦、もしくはサラリーマンの副業であったりします。
こうしたソーシャルバイヤーのパワーはどこから来るのでしょうか?なぜ、彼らは生まれたのでしょう?
ソーシャルバイヤーを生む土壌とは?
ではここで「ソーシャルバイヤー」という存在が誕生した背景について考えたいと思います。といっても、すでに語りつくされた「日本商品の人気」、「国内商品の不振」、「輸入品の高さ」などではなく、中国の人の気質から考察してみましょう。
そもそも中国社会では会社勤め、サラリーマンやOLよりも、自分でビジネスを行うことを望む傾向が強いのです。
そこにはいろいろな理由がありますが、日本のような終身雇用制ではなく、欧米と同じ「契約制」であるといった環境によるものもありますが、「(会社で)他人のビジネスをするよりは、自分で自分のビジネスをしたい!」という気質が強いのです。
中国で使われる「打工」という言葉がそれを表しています。
この言葉、日本の中国語辞典では「アルバイト」などと訳されていますが、実際は会社勤めを皮肉って言う言葉。
つまり会社に所属してサラリーを得ていることと、アルバイトには大差がない→他人のビジネスを雇われで行っている、という認識がいまだ残っているのです。
そのため、常に「自分のビジネスとして行えること」を考えている人が多くいるわけです。
そのような意識で日本と中国を眺めていると、中国でもニーズが高く、かつ自身が日本に住んでいることで仕入れやすく、信頼もしてもらいやすいビジネスがあった、それがソーシャルバイヤーだったわけです。
現在、中国国内にはいわゆる「ベンチャー企業」そして「ユニコーン企業」が数多く生まれていますが、その背景もこうした「自分のビジネスを求める」意識の高さによるものと思われます。日本のように、現在崩れ始めているとはいえ終身雇用制が長かった社会で育つと、なかなかこうはいかないのではないかという印象を受けます。
中国独特の環境から生まれたソーシャルバイヤー、参加者の一人は「これまではみんなが買っているものを手掛けていたけど、今日の会場でこれまで知らなかったブランドにも会えた。今後は新しい商品の発掘もしてみたい」と語っていました。まだまだ成長していきそうな気配です。
ちなみに、同様のイベントは今年11月下旬、規模を拡大して開催される予定。