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【訪日中国人】クチコミ調査で見る2018年国慶節の過ごし方~「もっと休みを!」

間もなくやって来る10月1日からの国慶節。この中国独自の観光シーズン、中国の消費者はどのようなニーズを持っているのでしょうか?中国トレンドExpressは、国慶節観光ニーズを知るためのクチコミ調査を実行。中国消費者の「予定」を分析しています。

最終回は楽しいはずの国慶節ですが、なぜか浮かない顔の消費者も。その理由をクチコミデータを見ながら探ってみましょう。

【調査概要】
調査期間:2018年7月21日-8月20日
調査対象:新浪微博
調査項目:
1.国慶節×〇〇したい
2.国慶節×行きたい
3.国慶節×海外vs国慶節×国内
4.国慶節×旅行×予算
5.国慶節×ほしい
6.国慶節×悩み
7.国慶節×買いたい

▼これまでは
【訪日中国人】クチコミ調査で見る2018年国慶節の過ごし方~今年の観光ニーズは?
【訪日中国人】クチコミ調査で見る2018年国慶節の過ごし方~観光予算と欲しいモノは?


クチコミデータに浮かぶ中国消費者の「疲れ」

さて、本特集の第一回「クチコミ調査で見る2018年国慶節の過ごし方~今年の観光ニーズは?」で紹介した通り、今年の国慶節で「何がしたいか?」という調査を行いました。

その結果は下のように「ゆっくり休みたい」が全体の29%、「何もしたくない」や「無計画」と合わせると35%以上を占めており、中国の消費者が「疲れている」ように見受けられました。

【グラフ】2018年の国慶節に「〇〇したい」クチコミ調査

同時に行った「国慶節×悩み」の調査を見てみると、次のような結果が。

【グラフ】「国慶節×悩み」クチコミ調査の結果

なんと「休めない」というつぶやきが圧倒的1位を占める結果となりました。次いで「お金がない」。

基本的に中国では10月1日~7日までは国定休日となるため、スタッフを出勤させることは原則として禁じられており、出勤させる場合は月給日割りの3倍にあたる休日出勤手当を支払わなければなりません。

ただ業種、例えば公共アクセスや病院などは休むわけにはいきません。またレストランやホテルなどのサービス業も、休むどころか書き入れ時ですらあります。

しかしそれ以外でも「休日でも仕事」というケースが多くあるようです。その「仕事」も、働いている会社ではなく、いわば副業。

普段は会社勤めをしているため、まとまった時間が取れる時に「自分の仕事」を片付けようという人も多くいる様子。

楽しく遊ぶためにはお金が必要。そのお金を稼ぐために休み返上で働く。よりよい生活、より安定した未来のため、中国の消費者は日々努力しているのです。

長城が人で埋まる!国慶節国内観光の恐ろしさ

そして第3位に入ったのが「どこへ行っても人だらけ」。

これに対して「日本のお盆シーズンも同じでしょ」と思われるかもしれませんが、まず規模が桁違いなのです。国慶節7日間で、日本の総人口の数倍の人が移動することになるのです。しかも日本同様、人気の観光地には人が集中します。

その結果、どのようなことになるか、想像してみてください。

「国慶節に行きたい」目的地No1だった北京では、ほぼ毎年あの万里の長城が「人で埋まる」光景が見られるのです。

風光明媚な観光地・浙江省杭州の有名なスポット、西湖断橋も、人の重さで名前通り橋が折れそうです。

「観光地を見に来たのか人を見に来たのかわからん」

「一番たくさん見たのは、人の頭だった…」

「そもそも景色が見れない」

などなど、国慶節の国内旅行中、中国のSNSには苦痛の声が上がります。

中国では国内観光市場も拡大していますが、環境設備が人の増加に追い付かなかったり、オペレーションが未熟だったりといった理由から、こうしたトラブル・ニュースが絶えないのです。

これを見ていると「やはり家にいたほうが」と思うかもしれません。

ただ、こうした国内の混雑を嫌って海外へと足を向ける消費者もいるようで、「ゆっくりと体を癒すための海外スポット」というものが今後人気を高めていくのかもしれません。

最後のキーワードとして挙がったのが「楽しそうな人がうらやましくなる」。

…。思わず「大丈夫?」と聞いてしまいたくなりますが、WeChatのモーメンツに上げられる友人たちのそれぞれ楽しそうに過ごす姿を見ていると、「休めない」と悩んでいる人にとっては羨ましくもなってしまうのかもしれません。

「SNSを多く見ていると幸福感が損なわれる」といった研究結果が以前ありましたが、特にSNS依存の高い中国、負のマインドにとらわれないように祈るのみです。

余談。キーワード選びは慎重に

さて、中国国慶節ニーズを探ってきましたが、ここで皆さんにちょっとしたアドバイスを。

我ら『中国トレンドExpress』が活用している中国SNSのクチコミデータ分析。関連キーワードを検索することで多くの消費者インサイトを分析することができるという、非常に有益なもの。

しかし、調べるキーワードを少し間違うと、予想とは全く異なる結果が飛び出てきて、非常に慌てることになります。

実は今回「国慶節で買いたいモノ」を調査する際、うっかり「国慶節で“ほしいモノ”」というキーワードで検索してしまいました。

その結果得られた情報は以下の通り。

【グラフ】「国慶節×欲しい」クチコミ調査結果

栄えある1位に輝いたのは「お金」。

そうですよね、これさえあれば何でも解決しますもの。ある意味、ドラえもんのポケットのようなもの。きわめて現実的な一面をあらわしています。

さらには「車」。世界最大の自動車大国へと発展した中国では現在、自動車の有無およびそのブランドがステイタスになっています。

車に続くのは「時間」。前述したように、仕事をし、そして休む「時間」は、現代日本人だけでなく、現代中国人にとっても貴重なようです。

とどめは最後に登場した「子供」。

そうなんです。確かに「一人っ子政策」は徐々に緩和され、2人目も可能になりましたが、それと子供が望めるかは別の問題。

特に「1人の子供にかける費用を考えると、2人目なんてとても」という声が中国の消費者からは聞こえてきます。

中国では日本のベビー用品が売れていますが、それらは国内の製品と比べればはるかに高い価格。それが2倍になると考えるとどうでしょう?手が出るでしょうか?

さらには小学校に入れば学歴競争が本格化。親は夜中まで続く子供の宿題に付き添わなくてはなりませんし、担任の先生への「つけ届け」などなど、苦労は絶えません。

そもそも結婚した時に不動産ローンを抱えていることも多いため、経済面を理由に2人目どころか1人目を躊躇する夫婦もいるほどなのです。

なんでしょう。国慶節どころか、現代中国社会の悩みをすべて網羅した結果になっている気がするのは筆者だけでしょうか…。