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中国で盛り上がるクリスマス。 手を切り落としても欲しいのは「コフレ」!

史上最高額、24時間で3兆5000億円にも上るオーダーが発生した2018年のダブルイレブンから半月。中国最大の小売りイベントも終了し、中国消費者の購買意欲もひと段落、と思われがちですが、実は中国消費者たちの「購入」イベントはまだまだ継続中です。

すでに終了した「ブラックフライデー(中国名:黒色星期五)」、また続いてやって来る「ダブルトゥエルブ(W12 12月12日)」などのキャンペーンが目白押し。

そして年末にはそれらと同レベルの非常に大きなイベントを控えています。それは「クリスマス」です。


クリスマスや年末の年越しは、日本では非常に盛り上がるイベントであり商戦でもあります。実は中国でもそれは同様なのです。

パーティイベントとしてのクリスマスが一大商戦に

こういうと「中国の年末は旧正月なのでは?」などと思われます。

もちろんそれは正しいのですが、にぎやかなイベントが大好きな中国消費者、特に欧米文化が流入している沿岸部大都市では「クリスマス」「12月31日のカウントダウン」でも大いに盛り上がり、小売り・サービス業の大きな商戦となっているのです。

ただ、もともと宗教的色合いが薄い中国。クリスマスもキリスト教の記念日というよりは、日本同様に若者たちが集い、パーティなどを楽しむイベントとして浸透しています。

そのクリスマスを盛り上げるポイントに不可欠なのが「プレゼント」。

恋人の記念日としての色彩が強いのが中国のクリスマスですが、そのデート費用などはすべて男性が負担するのがしきたり。

バレンタインデーも男性が女性にバラを送って告白する日になっていますが、クリスマスは更にレストラン・ホテルの予約からプレゼントの用意まで、中国の男性にとって一年の中で最も試練の日となっています。

また逆に自分がほしいモノをどうやって彼氏に気づかせるかなどは、女性にとっての悩みのタネになっているようです。

中国の「プレゼント情報サイト」。ここで外れないプレゼントを探す男性も多いとか

また年末は春節を指すものの、企業の決算などは12月末であることが多く、街も「西暦の年越し」ムードになるため、独身女性は一年頑張った自分へのご褒美として、特別な商品を購入する傾向が強くあります。

そのため、メーカー・小売店(EC含む)にとってもクリスマスには大規模なキャンペーンを展開することが定着。激しい戦いが繰り広げられます。

クリスマスのターゲットは日本のコフレ

そうした中国のクリスマスですが、この時期は中国SNS上では日本のあるものが注目されています。それはコスメブランド各社がこぞって打ち出す「クリスマスコフレ」。

すでに中国のSNSメディアでは、日本の化粧品ブランド「SK-Ⅱ」や「コスメデコルテ」の2018年クリスマス限定商品情報が紹介されていますが、その多くが「日本国内限定」であることには注意が必要です。

そもそも「限定商品」に目がない中国消費者。特に自身の個性を強調する若者たちは、ほかの人が持ってないモノを手に入れると優越感を覚え、それを中国のSNS上でシェア、というよりむしろ自慢していきます。

もちろん男性も、こうした限定版をゲットし彼女や奥さんにプレゼントすることは、自分の存在意義を高めることにつながります。

このようにして中国の若者たちの消費を刺激するかのように、WeiboやWechat、REDでは鮮やかなクリスマス限定商品を紹介していくのです。

なかには日本のファッション誌に掲載されている日本国内のクリスマスコフレ特集をアップしているアカウントも存在し、日本のクリスマスコフレへの期待の度合いを確認できます。

<Weiboでのクリスマス限定品BOOK 2018特集紹介>

「聖誕限定(クリスマス限定)」の四文字が持つ殺傷力は大きすぎ!「クリスマス」と「限定」を分けたとしても(威力は)微塵も減らない…。クリスマスは本当にニクイやつ、でも本当にクリスマスが大好きなのよ~」という書き込み

「財布がまた空っぽに…今年のクリスマス限定コレクションは本当に全て美しい。ブランド一つ一つが心を込めて作っているのを感じた」と嘆きと感嘆を同時に表す消費者も

手を切り落としてでも手に入れたい!

さて、そんなクリスマスコフレ商戦。どのメーカーも人気商品を特別なパッケージで売り出します。それはまさに「一期一会」。中国の女性たちの心を見事なまでに奪い、購入へと走らせます。

 

中国のインターネット用語に、「剁手」という言葉があります。

これは直訳すれば「手を切り落とす」となりますが、インターネット上の意味は「ネットショッピングにハマり過ぎて、知らない間に大金を使いこんでしまったため、もう二度と買い物をしないように手首を切り落とす」になります(ちなみにダブルイレブンも別名「剁手節」などとも呼ばれています)。

しかしそれは、欲しいものを手に入れるためなら、「手を切り落とす痛みなど何のその」という意思の表れのようです。

Weibo上でも、

「やはりどのブランドもクリスマスを逃がさない」

「これ以上クリスマス限定コフレを見せないで!もうお金がないのよ!」

「年を取ったせいか、こういう日には自分にプレゼントを買ってあげたくなった。来月(12月)いろんなクリスマス限定商品が。ワクワクする」

 

と、喜びと悲鳴が入り混じったクチコミが溢れています。

また、日本を中心に活躍しているソーシャルバイヤーも大忙し。日本でしか手に入らないコフレも非常に多く、その情報を中国に向けて発信し提案しています。

「一年一度のチャンス、逃してしまったら太ももを叩いても(悔やむという意味)しょうがないよ」といった言葉や、品切れ写真を載せることで消費者を刺激するソーシャルバイヤーなどもいるようです。

ここまで中国で人気となっている日本のクリスマスコフレですが、日本では主に日本国内消費者をターゲットとしてクリスマスコフレキャンペーンを展開しているのがほとんどです。

しかし、このように海外でも「日本製クリスマスコフレ」を欲しがる消費者が非常に多いのです。

越境ECなど中国向けの販売チャネルも充実し、法整備も進んでいる現在。海外のファンを取り込む意味でも、この商戦を活用してみるのは効果的なマーケティングのひとつなのかもしれません。