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【中国人気振り返り】さらなる拡大が期待される中国ベビー市場 日系は2強がけん引

「一人っ子政策」の緩和により、さらなる拡大が見込まれる中国のベビー市場。現在、目立った人口増加は起こっていませんが、来るべき増加による競争の激化を予想して、中国の親たちは子供たちへの投資を積極的に行っている様子。

今回は「2018年中国SNSクチコミ振り返りレポート」からベビーグッズ市場の状況を振り返ってみましょう。

■データ
トレンドViewer「買った」クチコミランキングから

  • 2018年1月3日~10月30日
  • 2017年1月4日~10月31日

までのクチコミ件数を収集、整理し作成。


クチコミ件数伸び率TOP。日本製ベビーグッズに一層の関心が

2018年1月から10月31日までに、中国のSNS上で「日本の『ベビー・キッズ』商品を買った」というクチコミ件数は41万7,000件で、クチコミ総数の約6%を占めるにとどまっています。しかしながら、今回の『2018年中国SNSクチコミ振り返りレポート』の調査対象となったすべてのセグメントの中で最もクチコミ件数の伸び率が高かったのが「ベビー・キッズ」でした。

40年近く続いた一人っ子政策が終わり、二人目の出産が解禁となってから約2年が経過した中国では、2018年に入り地方政府による二人目出産を奨励する動きも出てくるなど、「ベビー・キッズ」は今後、ニーズの高まりが非常に期待されるセグメントの一つといえます。

【グラフ】 2018年クチコミ件数のセグメント構成比

 

【グラフ】 2018年のセグメント別のクチコミ件数と増加率

2018年のクチコミ件数TOP20の1位は、総合ランキングの1位でもある『ピジョン 薬用ローション(ももの葉)』。これに2017年1位の『moony』、同9位の『シッカロールキュア』が続きました。

新たにランキング入りしたのは11位『ピジョン ベビーおふろでローション フローラルパウダーの香り』、13位『ストローボトル トール』、17位『ミルふわ ベビージェルローション』、19位『ミルふわ ベビーUVケア』の計4商品です。

このうち、19位『ミルふわ ベビーUVケア』は2018年になって初めてクチコミされた商品です。

子供用品はピジョンが圧倒的。中国ベビー市場、日系は2強時代に。

本セグメントで特筆すべきは、「ピジョン」の商品がTOP20内に9つも入るなど、圧倒的な存在感を見せている点です。

同社では、中国上海市に販売会社や工場を設け、中国産の商品を販売しています。これらは高級店のみならず、ローエンド・ミドルエンドのローカルショップでも容易に入れることができ、小さな子どもがいる家庭では特に身近なブランドとなっています。

次いで、「和光堂」は“粉ミルク”や“離乳食”、“ボディケア”等5つの商品がランクインしています。TOP20内で2大メーカーの商品が14点も占めるというのは、「ベビー・キッズ」セグメントだけでみられた特徴です。

【表】 2018年クチコミ件数が多かった「ベビー」商品TOP20

順位 前年比 2018年 2017年
1位 ピジョン 薬用ローション(ももの葉)(ピジョン) moony
2位 Moony(ユニ・チャーム) ピジョン 薬用ローション(ももの葉)
3位 シッカロールキュア(和光堂) ベビーバーユマドンナ
4位 メリーズ(花王) メリーズ
5位 ベビーバーユマドンナ(マドンナ) おやつがいっぱい
6 ポッピンクッキン なりきってシリーズ たのしいおすしやさん(クラシエホールディングス) 明治ステップ
7位 明治ステップ(明治) 虫くるりん つり下げタイプ
8位 虫くるりん つり下げタイプ(ピジョン) ミキハウス 子供用靴
9 ピジョン ぷちストローボトル(ピジョン) シッカロールキュア
10位 おやつがいっぱい(和光堂) ピジョン ぷちストローボトル
11 ピジョン ベビーおふろでローション フローラルパウダーの香り(ピジョン) ポッピンクッキン なりきってシリーズ たのしいおすしやさん
12 パパーゼリー5(大木製薬) シッカロールナチュラル
13 ストローボトル トール(ピジョン) パパゼリー5
14 ピジョン 赤ちゃんの漂白剤 ベビーホワイト(ピジョン) コンディショニング 泡シャンプー
15 ピジョン 薬用固形パウダー(ピジョン) ピジョン 赤ちゃんの漂白剤 ベビーホワイト
16位 コンディショニング 泡シャンプー(ピジョン) ピジョン 薬用固形パウダー
17 ミルふわ ベビージェルローション(和光堂) グーグーキッチン ツナときのこのリゾット
18位 グーグーキッチン ツナときのこのリゾット(和光堂) ピジョン 調理セット
19 ミルふわ ベビーUVケア(和光堂) GOO.N
20位 ピジョン 調理セット(ピジョン) ピジョン ベビー石けん

「ベビー・キッズ」セグメントからは、2018年のクチコミ件数1位『ピジョン 薬用ローション(ももの葉)』と2位の『moony』が、2018年総合TOP20において1位、5位にランクインしています。

中国ではやはり日本の“おむつ”の人気が高く、ECサイトやリアル店舗でも日本産のものが多く売られています。「日本産のものはやはり肌触りがよく、吸収がよい、漏れにくいなどを体感できる」といったクチコミも見られます。

ブランドは固定ながらも、人気商品には入れ替わりも

それでは口コミ件数を見ていきましょう。

クチコミ件数の増加率が最も高かったのは、2018年に初めてクチコミされた19位『ミルふわ ベビーUVケア』でした。増加率2位~4位もすべて2017年TOP20 圏外からジャンプアップした商品が入りました。

【グラフ】 2018年「ベビー・キッズ」TOP20商品のクチコミ件数

これらに続き伸び率5位になったのが“知育菓子”の『ポッピンクッキン なりきってシリーズ たのしいおすしやさん』です。

中国にはこうしたお菓子がスーパーに並んでいることはほとんどなく、中国の消費者にとっては非常に珍しい商品といえます。簡単に子供と一緒にお菓子作りを楽しむことができるだけでなく、作製の過程や完成品はまさにSNS映えするアイテムでもあるため、こうした点が人気に火を付けたのではと推察できます。

増加率がマイナスだったのは、10位『おやつがいっぱい』と5位『ベビーバーユマドンナ』の2商品です。しかしながら、両者はいずれも10%未満のマイナスであり、かつクチコミ件数も2万件前後をキープしていることから、その人気に陰りがでてきたというよりはむしろ、定番化しつつあるとみることができるかもしれません。

【グラフ】 2018年「ベビー・キッズ」TOP20商品のクチコミ件数増加率

ベビーグッズは人気も、出遅れた市場も存在

こうしてみると、ベビーグッズ、特に赤ちゃんの肌に触れるものや口に入れるものに関しては相変わらず高い人気、信頼を得ています。

しかし、子どもに与える「玩具」という点に関しては、実は進出が遅れています。実際にTOPにおいては6位の「ポッピンクッキン なりきってシリーズ たのしいおすしやさん(クラシエホールディングス)」が入っていますが、実際は食玩と呼ばれる分野であり、純粋な玩具ではありません。

日本でも数多くの乳幼児向け玩具が売られていますが、なぜかクチコミ上ではあまり登場しません。

実は中国において乳幼児の玩具に対してやや特殊なニーズがあるのです。

それは「知育」。

中国の学歴社会ぶりはすでに日本でも広く知られていますが、親たちはその大学受験に向けて、子どもが生まれる前、すなわち妊娠中から準備を始めています。

そして子供が生まれると「脳を活性化させる」食べ物やサプリメントなどを与えるのと同時に、「勉強になる」玩具をたくさん与えていくのです。つまり、中国の子供は生まれた瞬間から競争の場に立たされているのです(まだハイハイの段階で、立ってはいませんが)。

「中国のベビー消費は大きい!」と多くのグッズを売り込みますが、継続的な消費を考えると、実は子供の「知育」や「教育補助」のほうがはるかに規模が大きいのです。

残念ながら中国における知育玩具では欧米系のものが広く知られており、日本のブランドはほぼ知られていません。

今後はこうした市場の開拓も視野に入れていく必要があるでしょう。