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【中国消費動向】中国で水餃子の危機!豚コレラで高まる「食の安全」

日本で知名度No.1の中華料理と言えばラーメンと餃子。その餃子は中国の主に北方地方の主食でありソウルフード。以前は家庭で生地から作っていたものですが、最近は忙しくてなかなか時間が取れない家庭が増えています。そこで定着したのが「冷凍水餃子」。中国では数多くの冷凍食品メーカーが水餃子を製造販売しており、家庭にとっては非常に役立つ商品となっています。

しかし、今、その冷凍水餃子に大きな危機が迫っています。それはアフリカ豚コレラ。

日本でも感染が確認されているこの病気が、中国の冷凍水餃子界を揺るがしているのです。関連報道から中国の状況を追ってみましょう。


大手冷凍食品企業の水餃子からの「検出」

事の発端は2月10日、中国冷凍食品の大手「三全食品」生産の水餃子に使われている豚肉からアフリカ豚コレラウイルスが検出されたことでした。商品はすぐに出荷が止められ、関連当局が厳しい検査を展開、工場の消毒をはじめ、原材料として使われている豚肉の仕入れ状況や保存、加工状況について厳しく調べられており、現在でも流通が再開していない状況です。

 

このアフリカ豚コレラ、中国でもすでに感染が報告され、国内に注意喚起がされていましたが、大手食品企業の商品で検出されたことは、社会に大きなインパクトを与えることとなりました。

しかしそこにとどまらず、2月20日になって、冷凍食品ブランド「龍鳳」の水餃子からも、同じくアフリカ豚コレラウイルス陽性の反応が検出され、同様に出荷停止措置が取られてしまったのです。

 

さらに悪いことに、龍鳳ブランドはもともと独立した企業でしたが、2013年に三全グループが買収し、三全グループの管理で生産をしていたため、メディア、消費者ともに「また三全か!」という印象となってしまいました。

今回陽性との結果を受けた龍鳳ブランドの商品は、主に中国の西北地区への出荷用とのことでしたが、上海、杭州、成都にある龍鳳ブランドの企業を対象に、一斉調査が行われているようです。

 

これを受けてJD.comやT-Mall、蘇寧などの大手ECサイトでは三全および龍鳳ブランドの商品の販売をストップ。三全グループにとっては旧正月終了早々、大きな損害を被ることとなりました。

JD.comの龍鳳店舗。「現在取り扱っていません」という表示が見える

さらに下のグラフを見るように、中国の冷凍食品業界では全体の40%以上を冷凍餃子が占めていることから、今回の一件が長引けば同社の収益に少なからぬ影響を及ぼすことが予想されます。

【グラフ】中国冷凍食品の割合

大手上場会社の杜撰な対応が不満に拍車を

三全食品は、陳澤民が1993年に河南省鄭州市に設立した会社。中国では最初の「湯圓(タンユエン)※」を生産販売をした会社として有名になりました。

その後、湯圓だけではなく、餃子やラーメンなど、冷凍食品全般に業務を拡大し、順調に成長。2008年には深圳株式市場上場を果たし、現在は全従業員数2万人以上を抱える、中国冷凍食品業界のトップ企業のひとつとなっています。

 

ところが、これだけの規模を持つ上場企業でありながら、本件に関するメディア及び株主への対応が「杜撰だった」との指摘を受けています。

というのも、当局の検査で陽性反応が出たのが2月10日、深圳株式市場からの指摘を受けてメディア対応を行ったのが20日と、ずいぶんと時間が経っています。なおかつ、そこでの説明では「陽性反応が出ていることを本社が把握したのが15日であったため、情報公開が遅れた。証券市場や投資者への報告が20日になったのは16日と17日が週末で証券取引所も休みだったためだ」というものでした。

この発表に対して、中国メディアは証券アナリストのコメントを引きつつ「それでもつじつまが合わない。なぜ10日の検査結果が15日にならないとわからないんだ。そもそも会社の不祥事を発表するのに週末を避ける必要があるのか」と厳しい言葉を投げかけています。

ネット上も大荒れ。企業、そして行政への疑義も

さて、この事件、Weibo上でも激しい言葉が飛び交っています。

この「豚コレラ」、基本的には人には感染しない病気ではあり、また感染した食材も高熱で調理することで殺菌が可能です。

中国メディアもこうした報道で「正しい知識」を伝えているのですが、ネット上はそれに対しても厳しい反応が見えます。

日本ではTikTokの開発企業として知られるバイトダンスによるモバイルニュース「今日頭条」でも、中国の豚コレラの記事を公開していますが、その下に書きこまれたのは…。

  • (感染しなかいからいいのではなく)なぜ問題のある豚肉が食卓に運ばれるのかが問題
  • じゃあ、まずは「専門家たち」が食べてみろ
  • 餃子を高熱で20分茹でろって?
  • 企業の管理不足じゃないか
  • 人に感染しないなら専門家たちがどうぞ

など、企業だけでなく、こうした行政機関やメディアの対応にも不満の色が見て取れます。また別のニュースメディアのWeiboにも

  • 三全には(素材の)品質管理部門ってないの?何やってんの?
  • なんでまだテレビで「三全餃子~」ってCMやってんの?

などなど、三全の在り方や、そこから広告費を得ているメディアへの不審なども見えます。

 

中国中で非難の声が上がった「三鹿毒粉ミルク事件」からすでに10年。中国消費者の食品への安全意識が高まっていながら、企業側の体制はそれに追いついていない様子が見て取れます。

中国消費者の信頼、中国企業が取り戻すことができるのか、今回の事件の顛末は要注目です。

※「湯圓(タンユエン)」
元宵節(旧暦正月十五日 日本でいう小正月)に食べられる、もち米で作った団子に餡子や甘いゴマペーストなどを包んで茹でたスイーツ。