【中国消費動向】衰えを見せない『中国版大奥・宮廷劇』人気 そこから垣間見える女性の心とは?
中国経済を支えているともいえる中国の女性たち。日々仕事だけではなく、自宅にもどれば家事や育児をこなすというパワフルな女性が多いイメージですが、彼女たちもいろいろな葛藤を抱えている様子。それをうかがい知ることができるのが近年中国国内で広がっている「宮廷劇(後宮劇)」人気。
今回は中国の「宮廷劇」とは何ぞや?といった基礎から、中国女性消費者の心の内を分析してみます。
いわゆる「宮廷劇(後宮劇)」とは?
ではまず「宮廷劇」や「後宮劇」と呼ばれるものについて簡単な紹介を。
中国でも日本同様数多くの時代劇が製作されています。
例えば『康熙微服私訪記』シリーズは、清王朝の皇帝である康熙帝が身分を隠して民間に紛れ込み、役人の不正を暴くという、日本の『暴れん坊将軍』と『水戸黄門』を合わせたような感じ。いわば、大衆娯楽時代劇。
また『雍正王朝』(清朝の雍正帝を描いた時代劇)、『漢武大帝』などの、大河ドラマ的な時代劇もあれば、『三国演義』といった古典の名作のドラマ化(日本でいうと『忠臣蔵』のような位置づけ?)といった、硬派な本格派時代劇と、名作と言える時代劇も数多く存在しています。
しかし近年流行しているのが、宮廷、特に後宮の妃たちを主題にした時代劇『宮廷劇(もしくは後宮劇)』が非常に多く制作されていることです。
その多くが歴史上の女性をテーマに、女性が皇帝の寵愛を受けながらも他の妃たちと争い、一歩一歩高みを目指して登っていく…というストーリー。
これには、実は日本のテレビドラマ『大奥』のヒットを参考にした部分が多く見受けられ、いわば中国版『大奥』として制作され始めました。
それが思いのほか中国の女性にも受け入れられ、現在はまさに大量生産時代と言える状況にもなっているのです。
ざっと人気ドラマを上げてみても、以下のようなドラマが浮かびます
『甄嬛传』
『延禧攻略』
『如懿传』
『武媚娘传奇』
『芈月传』
このうち、『甄嬛传』は中国の女優・孫儷が主人公を演じ、宮廷劇の人気を一気に高めた作品であり(『芈月传』の主演も彼女)、また中国で唯一帝位に就いた女性である武則天(日本では則天武后)を描いたドラマ『武媚娘传奇』は日本でも一躍有名になったかつてのトップ女優・ファンビンビンが主演となった作品です。
いずれも歴史上、有名な皇帝の妃が主人公となり、宮廷内や政界での敵と戦いながら、高低からの信頼を受け、後宮でその地位を高めていくというストーリーです。
こうしたドラマから推測する現代中国女性の心
こうしたドラマの特徴となっているのが、当然のことながら女性の影響力が強く出ていること。ただ同時に、どの主人公の女性も野心や夢のために必死になっている姿が描かれています。
前回述べたように、中国では女性の社会進出意識が強く、企業内におけるスキルアップ、さらには独立・起業へと進む人も少なくありません。
輝かしい未来が開けているようですが、同時に数多くの悩みを抱えながら進んでいく女性も多く、まさに宮廷劇で描かれる女性と自分を重ね合わせるケースも多いようです。
2018年、中国トレンドExpressでは女性のお悩みと題した特集を行っていますが、そのなかで女性の仕事観に関係したクチコミ調査を行っていました。
そのうち「出世」に関するクチコミ調査では以下のような結果が見えます。
【グラフ】「女性×出世」キーワードTop20
「仕事」や「会社」といったキーワードの後に「男性」という言葉が現れます。
社会進出が進んだといっても、まだまだ上層部は「男性の方が入りやすい」といった意識を中国女性は持っているように見受けられます。
またやはり「子供」や「家庭」というキーワードがTOP10内に。
当然、多くの実績を上げて会社に認められ出世をしたいものの、子どもの勉強を見てあげなければいけないし、家庭のことも気になる…という現代中国女性の心の内が透けて見えます。
『宮廷劇』の中にも、自分の子供を守るために後宮内の敵やライバルを排除し、その立場を確立させる(皇帝の後継ぎとして認めさせる)といったシーンも登場たびたびしており、単に仕事の上での出世だけではなく、同時に母として子供の成長を「勝ち取る」という姿を視聴者に伝えています。
また同時に行った女性の転職に関する調査結果も併せて見てみましょう。
【グラフ】「女性×転職」キーワードTop20
ここでは「事業」「人間関係」というキーワードが上位にランクインしています。
日本でも職場の人間関係は大きなストレス源になっていますが、それは中国でも同じ。特に世代や価値観の違いから社内での人間関係がぎくしゃくするケースも多く、そこで働く女性も悩みを抱えているようです。
こうした現実をくみ取ってか、宮廷劇でも皇帝の寵愛や家柄を背景に、主人公を追い落とそうというライバル妃が多く登場。最終的には自滅的な最期と遂げることが多かったりしますが、主人公のキャラクターによってはライバルを追い落とすために家臣や時には皇帝をも利用して権謀術数を巡らし、自発的に相手を「排除する」というケースも。
そして、そういったシーンを見て「スッキリした」と感じる女性も少なくないようです。
見ていると歴史的事実からちょっと…と思えるほど脚色されているようにも感じる中国の宮廷劇。最近は日本のDVDレンタル店でも見られるようになってきました。
中国女性消費者の心を知るためにも、じっくりと鑑賞し、研究してみてはいかがでしょう?