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【中国地方都市】中国EC作り出した街でIT化をCheck~杭州市

前回からご紹介している注目地方都市・杭州。前回はこの街の概要や消費の状況などをお伝えしましたが、今回はこの街を語る上で避けては通れない企業を紹介しましょう。その企業とは中国で「EC」という新しいビジネスをゼロから作り上げた企業。そして今、ECだけではなく中国ビジネス全域にまで影響力を広げている企業。そう「アリババ」です。

同社の拠点となり、馬雲(ジャック・マー)が裸一貫で立ち上げたアリババは、ここ杭州を拠点に展開しているのです。

そんな杭州市で、現在日本でも注目されているIT化がどこまで進んでいるのかチェックしてきました。


2018年のデータによると、杭州市の人口980.6万人、GDPは13,509億元、一人あたりのGDPは140,180元となっています。

(2008年人口796.6万人、GDPは4,781億元、一人あたりのGDPは60,414元でした。)

2018年都市部一人あたりの平均可処分所得は54,348元、前年比9.1%増加。上海と北京に次ぐ、3位まで成長してきました。

こうした急成長も、アリババの存在の影響によるものと、とも言われています。

地下鉄でもノーカード。残す課題は…。

そうしたアリババの本拠地と知られている杭州。実際に何か

 

杭州出身のJessieさん曰く、「う~ん、アリババで何か恩恵があったっていう感じはしないですね…。確かに城西(西湖区あたり)と濱江の変化(都市開発)は大きかったけど、これもアリババだからっていうわけじゃないだろうし…」と、当惑顔。

 

どうやら地元だから「アリババが特別」といった印象ではないようです。

 

上海から杭州に入る際に、上海の友人からは「杭州はアリババの拠点だからWechat Payは使えないんじゃないか? やっぱりAlipayじゃないと」などと脅かされ、「え~まさかぁ(ヤバい、Alipay持ってない…ドキドキ)」などと、市内がすべてAlipayに統一されていたらどうしようなどとちょっと不安に思っていたのですが、入ってみるとそんなこともなく、どこの売り場でもAlipayとWechat Pay両方のQRコードが置かれ、通常通り買い物ができました。

 

ただ、中国国内でも上海の友人のように「杭州=アリババの拠点」というイメージが根付いており、外から見るとアリババの街という印象で見られているようです。

西湖観光地の公衆トイレ前に、QRコードをスキャンし、無料でトイレットペーパーを貰える機械が置いてある

 

ただし、地下鉄やバスを乗る際には、「アリババ強し」感がありました。

それは「交通カードミニプログラム」。Alipayの中に備わっている機能で、公共インフラを利用する際にそこから支払いができるという物。こちらはWechat Payには備わっていない機能です。

 

日本は最近になって徐々にスマホ決済とSUICAが連動できるようになってきていますが、まだまだ多くの人が「カード派」。中国はすべてスマホのAlipay内でできてしまうため、こちらの方が一歩進んでいるように見えます。

 

ただ、中国の悩みはこうした交通カードが各都市ごとに異なること。

日本では関東のSuicaと関西のICOCA、双方のカードが利用できますが、中国の場合、都市ごと地下鉄の運営母体が異なり採用しているシステムも異なることから、都市を越えてAlipayの交通カード機能を使うためには、それぞれの都市のカードをダウンロードして使う必要があります。

 

【動画】アリペイ内の杭州交通カード(ミニプログラム)

【動画】アリペイ内各地方の交通カード(ミニプログラム)

 

これは、中国ではネット決済などITの活用は進んだものの、リアルの環境で追い付いていない部分もあるということでしょう。

すでに離れられなくなっているフードデリバリー

スマホ活用の範囲は中国全体で

「一日一回は餓了麼(E le me)とかのデリバリーサプリを使うわ。めっちゃ便利〜」とJessieの同僚のLilyさんは言います。やはりどこの都市でもデリバリーアプリは必須となっている様子。

お昼時間にデリバリーアプリ「美団」の黄色いシャツを着てオーダーを待つデリバリードライバー

このデリバリーアプリの意義について、取材中ちょっと考えさせられることがありました。

 

杭州市の取材中、いろいろ見て廻っていたら、すっかり時間が遅くなってしまいました。夜9時半。モール内のレストランに入ろうとしたら、あえなく「ラストオーダーの時間です」との回答。

外に出てみても、ほとんど食堂、レストランといったものも見つからず、仕方なくタクシーでホテルに戻るものの、部屋についても、どうしても空腹に耐えかね、デリバリーアプリを取り出し注文することにしました。

 

ちなみに泊まっているホテルは山の上で、市の中心部からかなり離れたところにあります。

「こんな夜中にここまで届けてくれる人はいるんだろうか…?」と不安になりましたが、普段の注文よりも時間がかかった10分後、ようやくオーダーを受けてくれる店が登場!

注文から届くまで45分ほどかかる様子で、「こんな遅くまで、ここまで送ってくれるから、チップ払います?」と話し、注文完了となりました。

 

45分後、デリバリースタッフからの電話を着信。デリバリースタッフはホテル中に入れないので、ホテルの外まで外へ取りに来てほしいとのこと。

ところが外に出たら、そのデリバリーアプリのユニフォームを着たスタッフが3人。どうやらデリバリーを頼んだ人はほかにもいたようで、夜中にもかかわらず大忙し、といった様子でした。

 

すでに無職で時間を持て余している人や、仕事があるけれどもアルバイトしたいという人も、デリバリースタッフとなる人が増えている様子。それだけ生活に浸透し、需要が見込まれているからのようです。

 

実際にこうしたスマホアプリサービスの活用においては、一線・二線の区別なく浸透、すでに消費者にとっては離れられなくなっているようです。