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あなたの「化粧台」見せてください!Vol.3 ~化粧品投資は日本の3倍?お金を使うポイントは?

Text:配島亜希子

直接肌に触れる化粧品には成分表までチェックして購入を決めている中国の女性たち。次に気になるのは、そこまでチェックして購入する化粧品に、いったいどのくらいのお金を使っているか?という疑問です。そこで引き続き5人の方々に、化粧品投資の状況についてお話を聴いてみました。

■今回ご協力いただいた方々
Aさん-28歳、大卒(上海)、未婚、月収11K、MICE系イベント会社勤務
Bさん-32歳、大卒(イギリス)、未婚、月収10K、コンサル会社勤務(アパレルトレンド講師)
Cさん-28歳、大卒(上海)、未婚、月収12K、リテール会社勤務
Dさん-33歳、大卒(上海)、未婚、月収13K、飲食企業勤務(デザイナー)
Eさん-36歳、大卒(日本)、既婚(子供1人)、月収11K、貿易会社勤務

エイジングケアに重点投資。メイクはリーズナブルに!

今回取材を受けていただいた方々に化粧品への毎月の出費(化粧品以外の美容費用は含まず)を聴いてみました。

すると

  • 800元(1万3000円):1名
  • 1000~1500元(1万6000円~2万4000円):2名
  •  2000元(3万2000円):2名

という結果になりました。

ちなみに同年代の日本女性では平均5,000~8,000円程度ですので、日本女性の2倍~3倍以上の金額をかけていることになります。

 

そのお金をかけるポイントはまず「保湿(ハリ・弾力)」、そして「美白(シミ・くすみ)」、さらに「リフトアップ(しわ・たるみ)」といったように、特にアンチエイジング効果が期待できるスキンケア化粧品を重視、重点的にお金をかけているようでした。

 

メイクアップにおいても大半の中国女性はファンデーションなど、肌に長時間密着する化粧品にはお金をかけ、マスカラや口紅といったメイク化粧品にはそれほどお金をかけません。

Cさんは「以前はカネボウの『ルナソル』のアイシャドー4色パレット(5000円)を使っていましたが、カラーバリエーションが物足りなく、今はLA発のメイクアップブランド『NYX』の20色パレット(2900円)を使ってます」と言います。

カラーメイクは“プチプラコスメ”で十分というのは多くの中国女性に共通した認識です。

 

また、子持ちのEさんは「独身時代の方が化粧品を買っていました。年齢とともに基礎化粧品のアイテム数は増えましたが、子供が生まれてからはメイク化粧品をそれほど買わなくなりました」と語ります。

子育てに忙しく、メイクをする余裕がないのです。

 

また、ほかの独身のみなさんも「結婚している友人を見ると、時間節約のために化粧のステップを省略しているけど、その分、ピンポイントで高額なスキンケア化粧品を使っています」とのこと。

独身時代に比べて自由になるお金が少なくなり、節約に向かうかと思いきや、アイテム数を減らして、大きな効果が期待できる高額化粧品を購入するようです。

今まで使った中で一番高い化粧品は?

お話しを聞いてきて気になったので「MAXいくらを投資しているか」についてもぶつけてみました。その結果は以下の通り。

  • 中国女性の間で“神仙水”として話題を呼んだ「SK2」の化粧水「フェイシャルトリートメントエッセンス」(2万2000円)。
  • ラグジュアリースキンケアブランドを代表する「ドゥ・ラ・メール(LA MER)」の“奇跡のクリーム”と呼ばれる「ザ・モイスチャライジングソフトクリーム」(3万6000円)。
  • 「ラ・プレリー(la prairie)」の高機能クリーム「SC ラックス クリーム」(5万円前後)

など、かなり高額なスキンケアアイテムを購入しています。

 

「とても効果があるけど出費が痛い」と言いながら、これらを日常的に使っている彼女たち。

ちなみに、彼女たちの月給は20万円足らずで、日本のアラサーと呼ばれる女性たちの給与よりかなり低いでしょう。そう考えると、化粧品の出費の割合がかなり高いことが見て取れます。

【参考】Cさんの化粧台上のグッズ

ブランド 種別 備考
アルビオン(ALBION) 日本 化粧水  
イソップ(AESOP) オーストラリア リペア美容液 ユニセックスのスキンケアブランド
ゲラン(Guerlain) フランス リペア・美白美容液  
ポーラ(POLA) 日本 美白美容液  
シャンテカイユ(Chantecaille) アメリカ アンチエイジング美容液、アンチエイジングクリーム 植物成分から作られたラグジュアリーナチュラルブランド
コスメデコルテ(DECORTE) 日本(コーセー) 保湿美容液  
リバイタル(REVITAL) 日本(資生堂) ネッククリーム  
ハーバー(HABA) 日本 化粧水  
ラ・プレリー(la prairie) スイス アイクリーム エイジングケア専門のクリニックから誕生したブランド
フィロルガ(FILORGA) フランス アイクリーム 美容医療のアンチエイジング技術を応用したドクターズコスメ

Cさんの日常使用の化粧品グッズ

アンチエイジングはアラサーだけじゃなく、“95後”にも焦り?

ファンデーションでくすみを隠し切れない、顔に立体感がない、化粧崩れしやすいなど、コスメ広告が謳っているようなメイクの悩みがボロポロと。

しかし、アラサーの彼女たちにとって何よりも深刻な悩みは「アンチエイジング」です。美白化粧品を使用しても色素沈着(クマ、くすみ)が改善されない、エイジング対策の化粧品を使うと肌荒れしてブツブツができやすいなど、やはりスキンケアに回帰します。

 

自分の年齢肌に合わせて使う化粧品は自然に変わってゆきます。日本では30代になるのをきっかけにアンチエイジングを始めようと考える人が多いです。

 

28歳のCさんはわりと早くから気にかけているようで、「25歳からアンチエイジングを考え始め、今はアンチエイジングと美白に力を入れています」とのこと。

30歳になってアンチエイジングを気にし始めたBさんは、医療美容やドクターズコスメを愛用する以外に、エステサロンへ毎週通い、シワ・シミ・美白のケアをしています。

 

このように、中国におけるエイジングケアニーズはアラサー女子だけではありません。アラサーに入る前から始めているケースが増えているのです。

都市部を中心に現在の中国では「若い頃からアンチエイジング」という考え方が浸透し、「95後(1995年以降生まれ)」と呼ばれる大学生たちは高額な化粧品をたくさん購入しています。

 

そんな高級ブランドを買うだけのお金はどこから来るのでしょうか?

答えは「学生ローン」です。

 

近年、中国では学生向けの消費者ローンが急激に拡大し、学生向けのローンサイトやローンアプリがネット上に溢れている現状です。

また、アリペイの「借唄(ジエベイ)」、WeChatPayの「微粒貸(ウェイリーダイ)」といった決済アプリ内にある小口キャッシング機能や、Alipayの「花唄(ホアベイ)」、JD.comの「白条(バイティァオ)」といった商品代金を後払いやリボ払いにできるバーチャルクレジットカード機能も利用できます。

 

話を聞いていると、やはり基礎化粧品、なかでもエイジングケア商品には普通の化粧品以上の投資をしていることがわかり、今後もその傾向が続いていることがわかります。

しかしそのジャンルには日本ブランド以外に欧米系ブランドの名前を上がっており、強力なライバルとなっていることも。

その品質の高さから信頼されている日本ブランドですが、その信頼を基にしたシェアをより拡大させていくためにも、今回名前の挙がったような欧米ブランドの動向も細かく把握していく必要があるでしょう。

 

またシェア拡大でいえば、中国のエイジングケア化粧品のユーザー範囲は日本よりも広く、若年層に広がっていることもわかります。

特にこの世代はSNS、ネット上のクチコミとともに育ってきた世代。そして流行にもっとも敏感な世代です。

エイジングケアにおいては、日本では全くターゲットになることが少ない消費者層ですが、そこにニーズが存在しているため、エイジングケア商品の訴求においても日本とは異なるツール、訴求表現に挑戦する必要に迫られることになるでしょう。

そのためにも、日本市場と同様の消費層だけではなく、幅広い消費者の情報、その「声」のこまめな収集、把握が求められています。