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中国動画マーケティング大解剖 Vol.2活用篇~最新注目動画プロモ「Vlog」で挑む!

中国では「動画プロモーション」が主流となっている。ただ、一言に動画プロモーションといっても、多種多様。それぞれに特殊があり、使い道も異なる。さらに、それぞれの動画に対する中国の消費者の印象も、大きな差異がある。それらを理解しないままでは、中国消費者に受け入れられる動画プロモーションを打つことなど不可能だ。

中国トレンドExpressでは、そんな複雑な中国市場で効果的な動画プロモーションを打つコツを紐解いていく。今回はその中から、現在中国の動画市場で注目されている方式である「Vlog」について、その活用の注意点も含めて分析してみよう。

※そもそもVlogとは?
「Video blog」の略で、いわばネット上で行ってる日常生活を伝えるブログを動画形式で行うという。YouTubeを主なプラットホームとして広がっており、欧米ではすでに10年間にわたって普及しているが、中国では先のライブやショートビデオの発展により浸透が遅れていた。

「元年」を迎え、一気に景気づくVlog市場

日本企業のマーケッターを悩ませているのは、中国の動画マーケティング市場が、この数年常に変化を続けていることだ。

 

2016年は中国で「ライブ動画」が急速発展し、かつそれがECと結合し、「ライブコマース」という新たなリテールモデルを作り上げた。

いわば「ライブ元年」だ。

 

2017年は中国でショートビデオアプリ「Douyin(TikTokの本家本元)」が一気にユーザー数を増やした。同時に「快手」も2線、3線都市の若者を中心に、ユーザーを拡大していった。特にDouyinは翌018年に中国を飛び出し、日本を含めた海外にまで発展。一躍、世界のトレンドとなった。

2017年はいわば「ショートビデオ元年」であった。

 

では、2018年は?といえば、なんと「Vlog元年」といわれているのである。

 

中国では2018年に入り、Vlogが注目を集め、現在、複数のプラットホームがVlog募集のための特別なキャンペーンを展開している。それもbilibili、Douyin、そしてWeiboといった名だたるプラットホームがVlogerのためのあらたな施策を展開している。

中国では多くのVlogerが複数のプラットホームを活用してVlogの配信を始めている

下のグラフは中国の調査会社iiMedia ResearchによるVlogユーザー数の推移予想である。すでに中国には日本の総人口とほぼ同数の1億2600万人ものユーザー(視聴者)がいると見込まれ、2021年には約4倍にまで拡大すると予測されている。

【グラフ】中国Vlogユーザー数の推移予想(単位:億人)

出所:iiMedia Research『2019中国Vlog商業模式与用戸使用行為監測報告』

【グラフ】Vlogユーザーの年齢分布

出所:iiMedia Research『2019中国Vlog商業模式与用戸使用行為監測報告』

こうした中国のVlogの広がりの中で、多くの企業が「中国市場でVlogをどのように活用すべきか?」についての研究が、今まさに進められているのである。

なぜ今、Vlogなのか

疑問に感じるのは、なぜ今Vlogが流行し始めたのかである。

 

これを理解するために覚えておかねばならないのは、中国の消費者が「広告」というものに対して日本以上に警戒心を抱いている点。

 

「企業は商品を売りたい、だからどんなものでも“いい”というに決まっている」「広告であれば、登場する芸能人もお金をもらって宣伝している。だからどんなものでも“すばらしい”というに決まっている」という心理だ。

中国では「広告」と聞けば疑ってかかる傾向が強い

特に2000年代に入っても大手企業にスキャンダルが相次いでいる。消費者とすれば「騙されまいぞ」という意識で映像を見、そして聞いているのである。

 

こうした意識の中、中国の消費者は常により真実に近い情報を求め、活用ツールを変えてきた。

かつてはWeiboが消費者の声を代表するものだったが、今では企業や業際が競って情報発信をした結果、中国消費者にとっては直接的には信じることが難しい、パブリックメディアへと変容した。

 

その次に注目されていったのが小紅書(RED)だったが、我々の取材でも「最近の小紅書(RED)も広告が多くて…」という声が、中国消費者の中から聞こえてくる。

 

もともと、小紅書が信頼されていたのは、かつてのWeiboが伝えていたような、現場の声、企業や行政とは全く関係のない、一般市民の感想や分析を、パブリック化したWeiboに代わって集められるという点であったが、その場も徐々に変わりつつあることを中国消費者は感じ取っている。

 

さらにDouyin。初期こそ素朴な一般ユーザーの投稿が多かったが、近年はアクセス数を稼ぐことを狙った動画や、日本のTikTokとは異なりECへの動線が張られていることによる広告的要素が徐々に強まっている。

簡単に言えば「アップし、バズらせるために、“作り”過ぎ」な動画が多くなった、と感じ始めているようなのである。

 

それに比してVlogでは登場人物が、飾らない、普段のままの生活を記録して公開する、いわばドキュメンタリー。

そこで映し出される物質は、すべて登場人物が日常的に使っている物である。

それゆえに見られ、影響を与える。以下のデータではそんな意識が如実に表れている。

【グラフ】ユーザーがVlogを見る理由

出所:出所:iiMedia Research『2019中国Vlog商業模式与用戸使用行為監測報告』

これを見るとVlogを見るのは、作られていない「日常生活感」、「真実性」を求めての事であり、同時に「魅力的な人物の」、普段パブリックの場では見せない「プライベートな生活を覗ける」ということが大きな理由となっていることがわかる。

 

こうした特性を理解したうえで、Vlogをプロモーションに活用しなくてはならない。

勝敗のコツは「生活を脚本にできるか」

以上のような点から再びVlogを考える。

 

繰り返しになるが、Vlogはプロモーション動画やライブ動画と異なり、「ブロガーの生活の記録」であって、「商品の機能や良さを伝える」ものではない。消費者はブロガーの「自然の生活の中」での「真実」を知りたいのである。

 

そのため生活感のある内容、そして「飾らない」、「作らない」という点、主人公(KOL、芸能人)が何かを演じるのではなく、彼ら彼女らが朝起きてから夜寝るまでの間を自然に伝えることが何よりも重要であり、崩してはならない物。

極端に言えば、登場人物が朝起きて顔を洗う、朝食をとる、出かけるための服選び、メイク…という一連の動きを、普段通りに行うことを求められている。

 

そこで、過度に商品の情報やセリフを入れて「紹介」するのではなく、自然な形で画面に現れる。「その商品のために行動する」のではなく、「行動の中に商品が現れる」動画ともいえるかもしれない。

中国の女優であり、トップブロガーである欧陽娜娜のVlogでも、ごく自然に生活を紹介している

もちろん、企業がVlogをプロモーションとして活用するためには、ブランド名の露出や商品の露出時間が気になるところであり、それらは制作サイドにも確認するべきだろう。

しかし、過度な露出、繰り返したブランド名の発信や商品の露出は避けたほうが無難。むしろ日本よりも控えめに、慎ましやかに行う方がよいだろう。

 

例えばアパレルであれば「最近、このブランドのデザインが気に入ってます」という一言、化粧品であっても「こう塗る時には、いろいろ試したらこの商品が便利でした」ぐらいの一言にとどめておいた方が、より消費者には好感を与える。

 

場合によっては競合のブランドと同時に名前などが露出する可能性も捨てきれない。それに対して企業側は心理的なハードルがあるだろう。

しかし考えてほしい。普通の消費行動で「競合ブランドを試さない」というケースは、まずないのではないか。それが「自然」であるはず。

中国の消費者が求めるのが、そうした「自然さ」なのである。

「拡散」にも多角的な思考を

このVlog戦略、Vlog動画そのものの拡散は期待できるが、企業のマーケッターであれば、どうしても「商品やブランド名露出が少ないなら、意味がないのでは?」と気になるもの。しかしブランド名や商品名を広げるのは。実はVlogの主人公である芸能人やKOLではない。

むしろ、それ以外の存在に拡大を依頼したほうが、中国の消費者が求める「自然」かつ「真実性」に富むのである。

Vlogで発信するのではなく、Vlogをスタート地点に情報が拡散する仕組みがカギ

狙うのはこうしたVlogerたちのファンや、Vlogから商品情報を得ようとするソーシャルバイヤーたちである。

つまり人気芸能人やKOLのVlogに商品が映る→それをみたファンやソーシャルバイヤーたちが「あれって何?」「見たことある」といった議論が起こる…。

という流れが理想的。

最終的には情報感覚に優れたソーシャルバイヤーが、Vlogに登場した商品を中国にいる自身のフォロワーに向けて紹介していくというが勝ちパターンと言える。

 

その際に「与〇〇“同款”(○○と同モデル!)」というコピーが商品名の前に着けば、さらに効果は見込めるだろう。

こうした流れを自然に頼るか、もしくは意図的に設計するか、という点も議論になるが、それは別の機会に掘り下げたい。

 

いずれにせよ、Vlogの情報をいかに効果的に拡散させるかには多様な手法があり、企業としても多方面からそれを検証、設定することで、よりVlogの効果を高めることができる。

もちろん、こうした手法に対し日本では賛否両論であるだろう。

しかし、プロモーションはいかにして対象消費者の望む形で商品を伝えるかである。Vlogのような形式は、おそらく現時点で中国の消費者が自然に商品の情報を受け入れる手法であると考えられる。

 

そのため、他のマーケティング手法がそうであったように、Vlogマーケティングもすぐに多くの国内外の企業が活用してくることが予想される。

その波に乗れるか否か、日本企業の判断が気になるところである。