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中国女性のホンネVol.3~保険会社勤務の呉さんの場合・前編

Text・Photo:配島亜希子

上海在住の呉琳琳さん(33歳)は、大手保険会社に勤務するワーキングマザー。結婚時にマイホームを購入し、ご主人と小学生になる1人息子の3人暮らし。月収は上海の平均水準より高めの3~3.5万元(約48~56万円)ほど。

現在、夫婦は共働きで、料理、洗濯、掃除、買い物といった家事全般は、「阿姨(アーイー)」(または「保姆(バオムー)」)と呼ばれる家政婦にまかせています。

結婚、出産、仕事、マイカーにマイホームと欲しいものをすべて手に入れ「アラサー女性」の羨望する人生を送っています。そんな「リア充」ともいえる彼女のライフスタイルを覗いてみました。

今回の取材対象者のプロフィール

氏名: 呉琳琳

年齢: 33歳

婚姻状況: 既婚、子供1人(6歳)

月収: 月収3万元(約48万元)、諸経費込み

勤務先: 中国大手保険会社

部署/職位/勤務年数: 営業部・経理(日本でいうマネージャー職)、勤続4年

学歴: 中国人民大学(修士)

家族構成: 配偶者、子供、本人の3人

生活状況: 持ち家(静安区大寧)に配偶者と子供と3人、自家用車(VOLVO ボルボ)あり

趣味: 写真、映画鑑賞、バドミントン、ヨガ

子供のために転職を決意。母親とキャリアの両街道をまっしぐら

メディア専攻でマスター(修士号)を取得し、メディア業界に9年間従事していた呉さん。出張や残業が多かったものの、仕事にやりがいを感じ、精力的に取り組む毎日でした。

 

しかし、子どもが生まれた際、相応しいベビーシッターが見つからず、また子どもの成長を見守りたいという気持ちが芽生え、呉さんは転職を決意。

育児との両立を考慮し、大手保険会社のセールスへと転身します。

 

販売成績に基づくインセンティブ制の給与で働き方はフレキシブル、時間に自由がききます。定時に出勤し、朝の定例ミーティングを終えた後は、各自で1日の業務をスケジューリングし、外出先から直帰することも可能だそう。

遠方への出張の日程も自分で組みます。今はご主人が毎朝お子さんを幼稚園へ送り、夕方に彼女が会社や外出先からお子さんを迎えに行き、そのまま一緒に帰宅しています。

 

入社4年目となる今、彼女は営業部経理という管理職に就いています。30〜40人のセールスチームを率いるチームリーダーとして、成績を上げるべく彼らを指導し、多面的にサポートすることに日々奮闘中とのこと。

 

メディア業界に10年近く携わっていたにもかかわらず、現在、全く異なる業界に身を置いていることについてどう感じているか伺うと、「自分の実力次第で昇進・昇給といったキャリアアップへのチャンスが大きく、メディア業界にいた時とは違うやりがいを感じます。インセンティブ制はプレッシャーですが、息子との時間を確保できているので満足しています」とのこと。

 

仕事も育児も両方頑張りたい彼女にとって、業界や経験にこだわらず、“ライフスタイル”を重視して転職したことが功を奏したと言えるでしょう。

スキンケアには「エスティローダー」や「DHC」、お気に入りのブランドを長く愛用

化粧品への出費が最も多い“アラサー”。化粧をする時間的余裕がないと言われがちな“子育てママ”。そのどちらにも当てはまる呉さんはどうでしょう?

 

「化粧に関しては出産前後で何も変わりません。ただ20代後半からアンチエイジングが気になり始め、スキンケアに力を入れるようになりました」。

そんな彼女のスキンケアは「エスティローダー(ESTEE LAUDER)」がメインブランド。代理販売会社に勤務する友人から勧められたのがきっかけだそうですが、「効果を実感しているので使い続けています」とのこと。

 

洗顔やクレンジング、シートマスクはコスパが良く、香りの強くない日本ブランドを愛用。とくに「DHC」の薬用クレンジングオイルは安いのにメイクがよく落ちるのでお気に入りだとか。

 

メイク化粧品では「シャネル(CHANEL)」を愛用。

 

「国産ブランドにも優れた品質で効果が期待できるものはあると思いますが、手を出しにくい感じがします。広告の影響かもしれません」と中国の国産ブランドは使わないと語ります。

 

中国ブランドの押し付けがましい広告がかえって購買意欲を低下させ、海外ブランドのイメージを刷り込むような広告は、購買意欲を高めも削ぎもしないというのが、かつてメディア業界に従事していた彼女の見解です。

 

化粧品は「ジンドン(京東)」のブランドショップでオンライン購入するか、コスメカウンターで直接BA(ビューティアドバイザー)と対峙して購入するかだそうです。

 

「新しいブランドに挑戦して失敗したくないから」と、愛用するブランドのカウンタ―で新商品や他のアイテムを試してから購入。彼女の“ブランドロイヤリティ”(ブランドに対する忠誠心)”は比較的高めのようです。

仕事の合間にエステ、合理的に時間を使って効率よく働き遊ぶ

美容といえば、呉さんは毎週エステに通っています。エステやヘアサロン、ヨガなど、現職に就いてからは平日の仕事の合間に行くそうです。平日は空いているので希望の時間に予約ができ、待ち時間もないからだと言います。

 

「サボっているわけではないんですよ。仕事も育児もプライベートも合理的に時間を使いたいだけ」。

平日の日中に働くことが必ずしもセールスの結果に繋がるわけではなく、時には、終業後や週末にクライアント獲得のための営業活動を行う必要もあります。

また、チームメンバーからの急ぎの連絡や相談にも、電話やチャットで時間を問わず対応しています。

 

仕事の合間にエステに行ったりすることを会社は把握しているのでしょうか?

「会社は各自が何をしているか管理しません。ミーティングなどのルーティンをきちんとこなし、セールスの結果を出せば細かいことは言いません。私も部下に対しては自主性に任せています」とのこと。

 

期待される成果を上げさえすれば、働き方に対しては文句は言われないそうです。

日本では「社内連絡などの雑務に追われ、本来やるべきことに手が回らない」なんていうことを耳にしますが、中国ではこのように個人の裁量に任せ、成績や実力を重視し、雑務や作業はできる限りカットするような企業は少なくありません。

WeChat」のモーメンツとグルチャが大事な情報源

呉さんの情報収集源のメインは「ウィチャット(WeChat/微信)」。

メディア業界にいた頃は仕事柄、美容やファッション、グルメ、ショッピングといったトレンド情報を、人気の情報サイトやブログ、アプリなど各種ツールを通じて常にチェックしていました。

今は必然的に育児や教育の情報収集に力が入り、とくに「ウィチャット」のモーメンツやグループチャットで情報を得たり、発信したりすることが多いそう。

「最終的には友人や知り合いからの情報やクチコミが一番という結論に達しました」と語ります。

 

彼女のスマホには【生活】、【ショッピング】、【グルメ】、【教育】、【美容】、【旅行】の5つのフォルダがあり、多用するアプリがキレイに仕分けされています。

 

例えば、【生活】にはアリババの生鮮スーパー「盒馬新鮮(HumaFresh)」や食材デリバリー「叮咚買菜(DingDong)」。

【ショッピング】には「ジンドン(京東)」やアパレル越境EC「唯品会(VIP)」

【グルメ】には中国版食べログと言われる「大衆点評」、デリバリーアプリの「餓了麽(ウーラマ)」や「美団外売」。

【教育】には最多ユーザー数を誇る「作業幇」。

【美容】には若い女性に人気のSNS型ECアプリ「小紅書(RED)」。

【旅行】には「CTrip」

といった感じで、きわめて合理的。仕事ができるのも納得です。

 

次回は彼女の私生活や今欲しいものについて聞いていきます。