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中国女性のホンネVol.5~会社設立代購業勤務の李さんの場合・前編

Text・Photo:配島亜希子

河南省出身の李琰さん(33歳)は、会社設立代行サービス会社に勤務する独身女性。月収1.8万元(約28万円)、家賃4000元(約64000円)と、標準的な上海の一人暮らしといえます。

そんな彼女、じつは現職に就く前はネイルサロンを経営していました。河南省から上海へ出てきて、どこの会社にも就職せず、自身で起業したのです。地方から上京した彼女、上海という国際都市での生活にはいろいろと考えるところがあるようです。

今回の取材対象者のプロフィール

氏名: 李琰

年齢: 33歳

婚姻状況: 独身

月収: 月収1.8万元(約28万円)

勤務先: 会社設立代行会社

部署/職位/勤務年数: 経理、銷售経理、勤続5年

学歴: 南陽師範学院(修士)

家族構成: 両親、姉、弟

生活状況: 両親は河南省在住、姉と弟は上海在住。本人は一人暮らし(閔行区、家賃4000元/約64000円)

趣味: ニュース、海外ドラマ(アメリカ、韓国)、旅行、ショッピング

【参考】上海市の所得状況と李さんの収入レベル

出所:http://salarycalculator.sinaapp.com/report/上海

毎週エステも効果が…。スキンケアには「ゲラン」を愛用

会社設立代行の業務についている李さん、残業が割と多めで、忙しい時は夜8、9時まで働くことも。

一人暮らしなので、帰宅後は何するわけでもなくスマホをいじっているとすぐに就寝時間に。週末は家でゴロゴロすることが多いですが、気が向くと友人に会ったり、ショッピングに出かけたりします。

最近は油絵がマイブームで、自己流で描いています。

 

これといったライフスタイルはありませんが、毎週欠かさずエステに通っているそう。

「太っているのでダイエットのために通っていますが、なかなか効果が…」とやや不満気な様子。

スキンケアやメイクについて伺うと、「意識は普通だと思います。すごく力を入れているわけでも、放置しているわけでもない」とのこと。

 

お気に入りのブランドは「ゲラン(GUERLAIN)」。とくに美容液の保湿効果が高くて愛用しています。

日本のブランドに関しては、10年近く前、“神仙水”(神の水)と呼ばれ話題を呼んだ「SKⅡ」の化粧水や資生堂ブランドを使っていたこともありますが、アルコールや香料がキツいとのこと。

右往左往した結果、最終的にゲランに落ち着いたそうです。

 

上海では今はナチュラルメイクが流行中?

 

李さん曰く「上海では今、ナチュラルメイクが流行っている」そう。彼女もナチュラルメイクです。

スキンケアとファンデーションでベースメイクをした後、アイブローで眉を整えて口紅を塗り、約10分で完了です。

 

口紅にはこだわりがあるという彼女、様々な高級ブランドを試しました。

日本のブランドでは、資生堂「CPB(クレ・ド・ポー ボーテ)」は使い心地が良かったとのこと。今のお気に入りは、NY発「トムフォード(TOM FORD BEAUTY)」(6000円〜)やフランスの「クリスチャンルブタン(Christian Louboutin)」(1万3000円前後)。

 

ともに「シャネル」や「ディオール」を上回るラグジュアリーブランドで、「トムフォード」は発色がよいと、中国人女性の間で密かに流行中です。

 

購入手段は代理購入かネット購入が主。フランス在住の友人や旅行社に勤める知人に頼んで現地調達してもらうことが多いそう。

「代購(ソーシャルバイヤー)」も利用しています。今年1月に施行された「電子商務法」(通称「電商法」)で、代理購入を含む個人バイヤーによる非正規ルートの越境ECが規制されるようになりましたが、彼女は信用できる知人グループの範囲内で購入しており、その影響は全くないとのこと。

情報収集は「小紅書(RED)」、海外ドラマは「人人視頻」

李さんのよく使うアプリは基本中の基本ですが「Baidu(百度)」。

ニュースをチェックするが好きで「Baidu新聞」をよく閲覧しています。

そのほか、情報収集には「Taobao(淘宝)」、「Weibo(微博)」、「WeChat(微信)」といったアプリを使用しますが、一番使い勝手が良いのは「小紅書(RED)」だと言います。

 

コスメファンが集まると若い女性に高い人気を誇る同アプリですが、「コスメやファッションだけじゃなく、旅行、グルメ、イベントなど、知りたい情報があればこれ一つでだいたい事足ります。感覚や視点が私に合っているんです」とのこと。

 

また、アメリカや韓国の海外ドラマが大好きという彼女。

「怠け者で一人暮らしなので、ヒマさえあればスマホで見てます」と、「人人視頻」などのスマホ動画アプリでドラマを楽しみます。中国の賃貸の部屋は家具付きなので、大家さんが備え付けたテレビがありますが、触ったことはないそう。彼女だけでなく、最近の若者のテレビ離れは進みます。

大学卒業後に上京、当時のトレンドNo.1のネイルサロンを開業

実は李さん、今の会社に勤務して5年になりますが、その前は起業していました。

生まれ故郷の河南省の大学を卒業するとともに、お姉さんの住む上海へと上京。アルバイトをしながら美容専門学校に通い、2013年に友人をパートナーとして、ネイルサロンを立ち上げたのです。

【参考】上海市と李さんの出身地・河南省の位置

「当時の美容業界はルールがそれほど厳しくありませんでした。競争も今ほど熾烈ではなかったし、何よりネイルブームでニーズがたくさんありました」と言います。開業には特別な資格は必要なく、ネイルのニーズが溢れ、起業するのが簡単だったからというのがネイルサロンを開業した理由です。

 

ネイリストとしてお客さんにネイルを施すより、サロンの運営を管理する立場にいました。彼女は美容を極めることよりも“サービスの提供”という意識の方が強かったそうで、自然と経営に関わる業務に注力するようになりました。

 

そんな李さんの起業背景からは、現代中国女性の仕事観が見えてきます。

その内容は恒例の「カバンの中身チェック」も含めて次回じっくりご紹介します!