中国消費者「買った」日本商品ランキング2019 ~化粧品セグメント~
日本の企業が熱い視線を注いでいる中国の美容・コスメ市場。2019年の状況を、トレンドViewer「買った」ランキングのコスメ・美容セグメントのクチコミ状況を見てみよう。
昨年比40%増。ますます加速するコスメ・美容市場
まずはクチコミ件数の推移を確認しよう。
【グラフ】コスメ・美容セグメントのクチコミ件数推移
これを見ると、コスメ・美容セグメントのクチコミ総数は2019年10月末時点で約468万件。2018年が330万件余りであったことと比較すると、40%以上の伸びを見せている。
伸長の背景には、もちろん日本コスメへの人気というものもあるが、こうした人気を背景に、多くのメーカー、日本ブランドで情報発信を強化している点が挙げられる。
近年は日本での新商品を販売する時点で中国市場を見据えたプロモーションを展開するブランドも少なくなく、中国向けの訴求が強まったことがクチコミを誘発していると予想できる。
【グラフ】2019年「コスメ・美容」クチコミにおける中分類の比率
コスメ・美容セグメント内の中分類の比率を見てみると、やはりスキンケアがトップとなっており、中国消費者にとっては「日本化粧品=スキンケア、基礎化粧品」という印象が強くことを示している。
美白や保湿から、より細かな悩みへ
では具体的な人気商品を見てみよう。
変わらず高い人気の日本化粧品ではあるが、中身を見てみると常に変化が激しくなっていることが感じられる。
【表】2017年から19年のTOP5位比較
2019年 | 2018年 | 2017年 | |
1 | TSUBAKI | 雪肌精 | スクワクレンジング |
2 | スクワクレンジング | ベイビッシュ うるおいマスク | ガム・デンタルブラシ |
3 | 毛穴撫子 お米のマスク | 馬油ナチュラルミルクローション | 薬用スキンコンディショナー エッセンシャル |
4 | カットコットン | スクワクレンジング | 雪肌粋 ホワイト洗顔 クリーム |
5 | SUQQU アイシャドウ | 雪肌粋 ホワイト洗顔 クリーム | 雪肌精 |
6 | 馬油ボディーソープ | UREA 尿素10%クリーム | パーフェクトホイップ |
7 | プレミアムプレサ ビューティーマスク コラーゲン | 無印良品 乳液・敏感肌用 | エッセンシャル エアリーモイスト トリートメント |
8 | クリアクリーン ホワイトニング | ケイト カラーシャスダイヤモンド | キッカ メスメリック リップスティック |
9 | エクサージュホワイト | いち髪 | 馬油ナチュラルミルクローション |
10 | ソフティモ ナチュサボン フェイスウォッシュ | ニベア クリーム チューブ50g | ヒロインメイク スムースリキッドアイライナー スーパーキープ |
2019年のコスメ・美容セグメントにおける人気1位は前回紹介したように「TSUBAKI」が押さえ、HABAの「スクワクレンジング」、「毛穴撫子 お米のマスク」(石澤研究所)、と続く。
興味深いのは、2017年の同セグメント1位は「スクワクレンジング」で、2位の「ガム・デンタルブラシ」(サンスター)を覗けばTOP5商品のうち4商品がスキンケア化粧品だった。
また、2018年は「雪肌精」(コーセー)が1位となり、そのほかすべてがスキンケア。
しかし、2019年においてTOP5中のスキンケア商品は「スクワクレンジング」と「毛穴撫子 お米のマスク」の2商品だけとなっており、そのほかは美容グッズの「カットコットン」(良品計画)、メイクアップの「SUQQU アイシャドウ」(エキップ)と、商品だけでなく、商品類別にも変化が生じている。
ここだけを見ると、従来の保湿や美白といったニーズよりも、毛穴やヘアケアといった、より具体的な悩み、もしくは他の商品よりも「使いやすさ」を追求した商品へとシフトしているように見える。
【グラフ】分類ごとの件数推移と伸び率
中国メーカーが狙う美容機器市場。大手家電メーカーも参入
このなかで、クチコミ件数の伸び率から「美容グッズ」に注目してみたい。
美容グッズ、特に美顔器を代表とする美容機器は、中国でも伸びしろ分野とみられている。
しかし、中国国内のこの市場はすでにYA-MAN、Clarisonic、refa、TriPollarなどの日本を含めたか外部ブランドが80%のシェアを押さえている。
拡大する美容機器市場をターゲットに中国国産ブランドが参入するも、「技術的な問題により」国産ブランドが海外ブランドの市場を奪えていないのである。
また、専門メディアは「マーケティングにおいても国産ブランドは“新鮮味のない訴求”しかできていな」と指摘する。
美白やハリといった、すでに横一線の基本機能ばかりを訴求し、多くのメーカーで差別化がされていないのである。
それに対して比較として挙げられたのが、日本のYA-MAN。
同ブランドは中国の医療クチコミサイトである『丁香医生』を活用したが、ポイントとしたのが「安全性」の訴求。
美容機器の多くは精密機器で、微弱な電流などを活用して効果を高める一方、使用時に発火などのトラブルが起こっている。
そうした事件から中国の消費者も、慎重な商品選択を余儀なくされている。YA-MAN中国消費者の心をつかんだのは、そうした消費者心理に「日本の安全性」という部分がささっからだと考えられる。
その市場に対して中国白物家電の最大手・ハイアールが参入。傘下に『零立科技』を立ち上げ、巨額投資によって美容機器商品の開発を推進している。
ただし「ハイアールって冷蔵庫とか洗濯機の家電でしょ?」というイメージを崩すため、「零立」ブランドの展開を急いでいる模様。
同社が現在市場に投入しているのは、これまでで培った冷蔵庫の技術を生かした「化粧品・ベビマタ専用収納ボックス」
温度調節機能がついており、フェイスマスクなどを温度管理をしながら収納でき、さらに上に鏡を置けば化粧台としても使えるという商品。
今後の動きは不明ながら、中国ブランドの美容機器が伸びてくれば、市場構成が変わってくる恐れもある。
その動静に注目したい。