中国トレンドExpress

編集長のつぶやき~自分はまだ中国を知らない~

毎日のように中国のニュースや中国SNSを見る。中国の人たちと中国語で話をする。そんな生活を送っているのであるが、いや、そういう生活を送っているからこそ「自分は中国のことを知らなさすぎる」と感じることがある。

今回は通常の中国トレンドExpressとは少し趣を変え、編集長のボヤキにお付き合い願いたい。


中国語で「有事没事~」という表現がある。日本語で言えば「何かにつけて(目的のあるなしにかかわらず)」といった意味になるだろうか。

 

私にとっての「小紅書(RED)で検索する」ことがそれにあたる。

これが意外に役に立つ。

例えば「東京および周辺で日本人の知らない美味しい中華」などは、やはり中国SNSで中国人コミュニティを頼りにするのが一番なのである(ただ検索で見つかったお店に電話で予約をすると中国語対応されるケースがあるため、注意が必要)。

 

それはさておき、何となく思いついたキーワードを入れて、検索してみるのであるが、最近は「日本×〇〇」というキーワードで検索すると、思わぬ発見があることが多い。

 

まさに「自分がまだ中国を知らない」ことを思い知らされるのである。

このままいくと爆買い対象レベルのクチコミ量?

先日、朝食の牛乳を飲みながら小紅書で「日本×牛奶(牛乳)」というキーワードを検索したところ、なんと3万件以上の記事がヒットする。

試しに「日本×寿司」と検索してみると、2万件以上の投稿があるらしい。和食の中でも世界的に有名な「寿司」よりも、「牛乳」のほうが投稿数が多いのである。

トレンドViewerでは主にWeiboWeChatパブリックアカウントが中心になっているが、そちらでも「牛乳」のクチコミ件数は多い。

【グラフ】トレンドViewer「食べた」ランキングの「牛乳」クチコミ推移

3年に満たない期間で78件から最新データで948件と10倍以上の成長を遂げている商品となっているのだ。

日本の牛乳の普及を目指す団体がKOLを使ってプロモーションでもしたのだろうか、と疑いたくなるような、爆買い対象になりそうな勢いの伸びである。

 

しかしそういった形跡は待ったく見えない。小紅書(RED)上の投稿の多くは「飲んでおいしかった」といった経験者の投稿か「コンビニで買うべき商品」、「日本で味わうべき飲み物」、果ては「数種類の牛乳飲み比べ」といった、宣伝とはほぼ無縁の投稿ばかり。

つまり、日本の牛乳は「本当においしい」と中国の消費者に感じられているのである。我々が日々、何気なく飲んでいる普通の牛乳が、である。

中国SNS検索から、中国酪農の世界までたどり着く

そもそも、日中間を行き来していると「確かに日本の牛乳は中国に比べておいしい」ということは感づいていたし、実際にそうした声を中国の方々からも聞いていた。

あまりに「普通の飲み物」すぎて、あまり考えたことがなかったが、上記の小紅書(RED)の3万件に上る投稿、そしてトレンドViewerのクチコミ件数の上昇っぷり…。

 

そこでまじめに考えてみることにした。「それはなぜか?」

 

実は中国でも「日本の牛乳と中国の牛乳の違いは何か!?」といったことには関心が高まっており、Baiduで検索をかけただけでも多数のウェブサイト、ネットニュース、そしてなどを見ることができる。

自動車やアニメなど、日本が得意とする科学技術、クリエイティブならまだしも、毎日食卓に上り、コンビニで何気なく買っている牛乳にここまで注目されるとは…。

 

そうした記事のうち、主流を成しているのは「殺菌法だ」というもの。「中国では低温殺菌が主力だが、日本では超高温瞬間殺菌だから(市販の9割がこの殺菌法)」、それによって味が異なるのだという説明が多い。

しかしながら、殺菌の違いによる風味の違いは日本においても異論が多いようで、中国でその論が主流になっているからと言って、にわかには全面的に肯定するわけにはいかなそうだ。

 

その中で見つけたのが2017年のある記事である。タイトルは「中国牛奶卖不出,出口没人要,中国牛奶为何不受欢迎?(売れない中国牛乳、輸出も欲しがる人もなし。中国牛乳はなぜ人気がないのか?)」

同記事では(1)たんぱく質の量が少ない、(2)小型酪農家が多く、畜産技術、飼料のレベルが低い、(3)海外の技術を導入しない、(4)2つの協会が並立しており統一化された業界改革ができない…などの原因を指摘し、「殺菌の問題よりも、これらが改善されなければ中国牛乳に勝ち目はない」と断じている。

 

 

ううむ、たかがSNS上の「牛乳」と思っていたが、産業、下手をすると国の酪農政策レベルの話になってきそうな勢いである。ただ、こうした中国の乳業に対する危機感に、日本の牛乳が寄与していることは想像に難くない。

 

不勉強ながら、「中国が牛乳に対して大いに悩んでいる」ということは伝わってきた。

ちなみに、この“調査結果”をある日本で子育てをしている中国人女性に話したところ、は私のこんな話を聞くや

「何言っているの!たしかにスーパーで売っている牛乳もおいしいけど、一番は学校給食の牛乳よ!」

なんでも娘の小学校で保護者向け「給食試食会」があり、そこで出た牛乳のおいしさに感動したのだとか。

 

そこからさらに、中国の学校給食についてのあれやこれを聞かされた、もとい、調査できたのだが、こちらではSNSのクチコミから学校給食、そして教育にまで話が広がってしまった。

改めて思う。中国SNS検索は面白い

さて、結局中国牛乳と日本牛乳の違いの原点を探ることはできなかった。話が広がりすぎるのである。

 

ただ、小紅書(RED)検索によって中国消費者の牛乳への悩みを知ることができるとは思わなんだ。

これだから中国SNSチェックはやめられないのである。

 

キーワードを入力し、検索する。

わずか数分の作業で、日本のあたりまえのことを中国ではどのようにとらえ、どう議論しているのかを知るきっかけにもなるのである。

 

テレビをつけると「日本のこんなものが海外で人気!」という番組が数多くあるが、そのほとんどが表面だけの紹介の、非常な空虚な内容で終わってしまっている。

しかし、小紅書(RED)、WeiboWeChatなどのSNS、そして直接中国の人たちと話をしてみると、テレビ番組で紹介されている以上に、「日本のありふれたもの」に対してガチ討論をしていることが多い。

 

さらにその内容は、日本人が思っていることと、ポイントが違っていたり、受け取り方・理解が異なっていたりと新発見がわんさか出てくる。

まさに「中国を知らなかった」ことを思い知らされるのである。

 

もちろん、その違いがいわゆる「インサイト」となって表れるわけで…、などというのは俗っぽすぎるから今日はやめて、もうちょっと中国SNS検索で遊んでみることにしよう。