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中国Z世代を席巻する「JK」 その背景とは?

現在、中国都市部の若者たちには日本のあるものが人気となっている。それは「JKファッション」。いわゆる日本の女子高生の制服をファッションやエンターテイメントとして愛用する中国女性が増えているのである。

今回はそんな中国の若者たちに広がる日本の「JK」ファッションについて、まじめに考えてみよう。


“ある”日本関連コスプレが騒動に

先日、中国で日本の“ある”姿に身を包んだ女性の事件がネット上で話題になった。

その姿とは「JK」、すなわち女子高生のセーラー服姿である。

 

事件といっても、国に対する感情ではなく、

「アニメイベントで女子高生姿のコスプレイヤーが卑猥なポーズで会場の風紀を乱していた」

と大きな騒ぎが起きてしまったのである。

 

会場となったのは7月に行われたCP26というコスプレ・同人イベント。

中国でもアニメのコスプレ人気は高く、こうしたイベントでは多くの愛好家がアニメやゲームの人物姿で登場し、それをコスプレ写真愛好家がカメラに収める、というのが日本、中国共通の姿だった。

 

その中で1人の女子高生コスプレをした女性がポーズを取り、また周辺に撮影家が集まっていたのだが、その際、来場者の別の女性がコスプレイヤーのやや大胆とも思えるポーズ、さらには1人の男性カメラマンがかなり低い位置からの写真撮影をしようとしたのを見とがめ、「卑猥」「下品」と抗議。さらに警備員を呼ぶ騒ぎとなった。

 

その姿はSNSで拡散され、コスプレイヤーに対する批判が高まり、またメディアも同様に伝えた。

 

そしかしコスプレイヤーは自身が「卑猥」な意図をもって行ったポーズではないが軽率であったことをWeibo上で謝罪。同時に、自分はスカート中に短いズボンを履いており、講義内容には当たらないこと、男性がそうした写真を撮っていたことは知らなかったことなどを説明した。

 

それによって、今度はコスプレ(写真)愛好家たちから現場で抗議した女性に対する批判が巻き起こる事に。議論は一部でまだ続いているようだ。

 

中国でもサブカルチャーブームは広く浸透しており、中国としてもそこに規制をかけるつもりはない様子。ただ、中国では以前、モーターショーやゲームイベントなどでコンパニオンに露出度が過度に高い衣装やコスプレさせて人を呼び込む風潮が広がり、政府が厳しく批判、監督を始めたという経緯があり、「風紀の乱れ」に関しては神経をとがらせている。

中国で広がるJKファッションが思わぬところでそんな騒動に巻き込まれてしまったわけである。

日本の「JK」が中国でのトレンドワードに

さて、このニュースを見ていて新鮮であったのが、「JK」という言葉がごく当然のように中国のニュースサイトなどに登場していたことである。

 

以前、ニュースサイトや日本紹介サイトで日本の学校生活を紹介される際、セーラー服には「水手服」という中国語が使用されていた。

「水手」とは日本語でいう「水兵」、すなわち「セーラー服」の元となった「水兵が着用している服」という翻訳であった。

 

しかし現在は前述のように「JK」という言葉が浸透している。

現在の中国の若者、特にコスプレやサブカルチャー愛好家の間では、日本のいわゆる「JK」姿がファッションとしての人気が高まっている。

 

その中核となっているのはやはり「Z世代」。

Bilibiliなどを通じて日本のアニメやドラマなどを視聴、憧れを持つ世代である。

 

中国トレンドExpressでは中国語で「学校制服」を意味する「校服」と、同時に「JK校服」の2キーワードのWeiboクチコミ件数を調査してみた。

【グラフ】学校制服とJK制服キーワード数の推移

トレンドExpress・数慧光(上海)商務諮詢有限公司調べ

これを見ると、学校制服全体では月平均3万件のクチコミが認められる。それに対してJK制服は月8000件ほど。学校制服の1/3程度ではあるが、それでも少なくはない数字だ。

 

しかも興味深いのは4月にクチコミが伸びていること。

中国では9月が学校の年度始まりであるので、本来4月には伸びないはずだが、ある上海在住の女性は「桜×JK制服で写真を撮ると日本らしくて好き」といった声が聞かれており、季節ともに日本を感じるファッションとしての存在でもあるようだ。

 

こうしたJKファッションは、主にTaobaoで購入されているらしく、Taobao上で検索をかけると数多くの商品を見ることができる。

ただ最近、こうしたJKファッション、JKコスプレの影響で注文が増えており、一部では消費者が「デポジットを支払って半年待ち」で購入するケースもあるという。

つまり日本のJKファッションが中国では産業として拡大しつつある。いわば「きわめて健全なJKビジネス」となっているといえるだろう。

なぜ日本の「JK」が中国で?

ではここまで日本のJK制服が中国で人気なのだろうか?

 

もちろんスタートはアニメやドラマで見かける日本の学校生活からであり、それを見ていて「かわいい」と感じるところから始まる。

 

そもそも、中国の高校にも制服というものは存在している。しかしデザイン性に乏しい「ジャージ」である学校が依然として多く、よりオシャレ感のある日本の学校制服に対してあこがれるという面もある。

 

またこうした映像作品に描かれる日本の学校生活は勉強だけではなく、恋愛や部活動といった「青春」をテーマに描かれることが多く、大学入試のための勉強付けになってしまう中国の学生にはまぶしく映るようである。

そして高校を卒業し、大学生、さらにはその後に社会に出た後で、コスプレという形で体験しているといえる。

 

ちなみにこうした学園もののドラマやブレザータイプの制服を着用したバラエティ番組などは中国でも徐々に増えつつあるようで、「制服」に関するクチコミキーワードを見ると、下位にそうした番組に出演する俳優の名前が挙がっている。

 

また「先輩」、「後輩」といったキーワードや、中国にはない「(制服の)ボタン」、「お兄ちゃん」など、サブカルチックな言葉も見えるのは興味深い。

【表】参考:「校服」クチコミキーワード上位30

トレンドExpress・数慧光(上海)商務諮詢有限公司調べ

どうやら中国の若者は「制服」に対して様々な、複雑な感情を持っている様である。

 

ここで注意が必要なのは、JKファッションとはいえ、メイクはがっちりとした「チャイボーグメイク」であるケースがほとんどである。小紅書などに投稿されている写真なども、大体が気合いの入ったメイクによるコスプレ写真となっている。

 

昨今中国新鋭ブランドなどに押されがちが日本のメイクアップ業界であるが、こうした学校制服とコラボで、「元祖日本」のイメージに活用するのも面白いかもしれない。

 

また、前出の女性は「日本でJKファッション写真を撮りたい」と語っていたところから、こうしたZ世代を今後のインバウンドに取り込むためのツールにもなりそうだ。

実際に若い訪日観光客では「JKファッション×自動販売機」という写真は日本でしか取れないことから、日本らしさを体験する一つのキーワードにもなりえる。

 

些細な動きかもしれないが、マーケティング目線で見るとこうしたニュースも興味深く映るものである。