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新たな爆買いスポット誕生? 中国海南島が、今、燃えている Vol.1

中国消費者の新たな爆買い聖地「海南島」で何が起こっているのか。
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中国でこの夏、新たな観光スポットへの注目が高まっている。

その場所とは「海南島(行政単位では海南省)」。

「中国のハワイ」とも呼ばれる南国の島である。ここに今、多くの中国消費者が押し寄せている。その背景にあるのはもちろん南国のビーチリゾートという楽しみもあるのだが、多くの消費者が求めるのは「免税」。

9年間続いていた「離島免税政策」が新たな局面を迎え、盛り上がる海南島。その背景や現在の様子を2回に分けてお届けする。

今回は観光地としての海南省と中国における離島免税精度の基礎についてみていこう。

中国のハワイ? 国内観光のメッカ?「海南」とは?

「海南」とは、海南省は中国の南、広東省に隣接し、南シナ海に浮かぶ島である。

陸地面積は3万5400㎢と、日本の九州(約3万6000㎢)と同じくらいの広さを有しており、その島全体が「海南省」という行政単位となっている。省内の人口は2019年末で944.72万人となっている。

省会(日本の県庁所在地)である海口市とビーチリゾートのメッカとなっている三亜市。また日本でも知られた土地としては国際フォーラムが開かれる「博鰲」(瓊海市)もまた、海南省の都市である。

【グラフ】海南省と上海市のGDP

出所:中国統計局のデータを基に作成

もともとは輸出加工区として工場が多く立ち並んでいたが、その後、その美しい南国の海をメインにした国内観光としての開発が進み、今では中国にいながら南国風景が楽しめる観光地として、主に中国国内の観光客を迎えている。

【グラフ】海南省を訪れる年間観光客数の推移(単位:万人次)

出所:海南省政府公式発表を基に作成

【グラフ】2019年海南省観光客の国内外比率

出所:海南省政府公式発表を基に作成

特に三亜市の亜龍湾などでは、海外資本の大手リゾートホテルが立ち並び、中国国内でも数少ないビーチリゾート地となっており、夏だけではなく春節シーズンにも多くの国内観光客が訪れる。

海南島でも人気の高い三亜市の「亜龍湾」ビーチ

さて、そんな海南島への観光がまた注目を集めている。

それはWeibo上のクチコミ件数からも見て取れる。

2019年8月以降の月次で「海南島×旅行」に関するクチコミ件数を収集してみると、今年6月に大きく跳ね上がっており、観光シーズンである昨年の8月、10月の国慶節を大きく上回っていることが見て取れる。

【グラフ】Weibo「海南島×旅行」の月次クチコミ件数の推移

出所:株式会社トレンドExpress・数慧光(上海)商務諮詢有限公司調べ

では、その背景を紐解いていこう。

 

売上2.4倍。拡大された「離島免税政策」とは?

まず、先のクチコミの頻出キーワードを見てみよう。

もちろん観光などに関連するキーワードが多くみられるが、注目すべきは「離島免税」、「ゼロ関税」、「免税品」といった言葉である。

【グラフ】Weibo「海南島×旅行」クチコミのキーワード

出所:株式会社トレンドExpress・数慧光(上海)商務諮詢有限公司調べ

中国では2011年、「離島免税制度」が開始された。

これは中国の離島(主に海南省)の経済発展政を目的に定められた、離島での免税販売を認める制度である。

後述するが、海南省内には世界最大級といわれる免税店があり、観光客は海南島への往復チケット(観光で来ているという証明)と身分証を提示することで、空港や海外の免税店と同様に免税ショッピングが楽しめるというものである。

 

スタート時は航空券に限られていたが、鉄道などが整備された結果、鉄道のチケットでも免税で買い物ができるようになった。

 

しかしその後、日本での爆買いに見られるように世界各地で中国人観光客のビザ緩和が行われ、海外旅行へ行きやすくなったことで、その優位性が薄れてしまっていた。

 

しかし、今年6月に入り中国政府が新たな政策を打ち出した。

7月1日からの免税対象額の引き上げである。

 

免税対象金額を、1人年間3万元に設定したものを10万元に引き上げ、また対象となる商品も38品目から45品目へと拡大。これによってスマートフォンなどの通信機器も免税対象となった。

さらに、免税の条件となっている「単価8000元まで」との規定も撤廃され、高額商品も免税対象とされた。

 

これはコロナ禍によって海外旅行のルートが絶たれていた消費者たちに歓喜の声をもって迎え入れられた。

すでに中国では厳しい健康状態管理要求はあるものの、観光に関しては規制が緩まっている。しかもすでに「高考(大学入試)」も終了しており、夏休みに突入。観光シーズン真っただ中となっているのである。

 

8月5日の報道によれば、今年7月1日から31日まで、海南省内4つの離島免税店では合計25億元をうりあげたという。昨年比240%の増加である。

また一人当たりの消費金額は5527元で、こちらも昨年比で82%の増加となっている。

 

7月1日からの1週間で購入された商品としては「化粧品」が全体の83.5%、「香水」が4.7%、そして「アクセサリー(貴金属)」が1.8%となっており、化粧品が多くの消費者の購入目標となっているようだ。

次回はそんな海南島免税の人気、およびそれを支えている免税店の状況をSNS上の書き込みなどから見ていこう。